映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ジュリアン

2019年02月07日 | 映画(さ行)

DVについて考える

* * * * * * * * * *

離婚したベッソン夫妻は、11歳の息子ジュリアン(トーマス・ジオリア)の親権をめぐり争っています。
母ミリアム(レア・ドリュッケール)は、息子を元夫アントワーヌ(ドゥニ・メノーシェ)に近づけたくないのです。
というのも、アントワーヌにはDVめいた言動が多く見られたため。
また、ジュリアン自身も父とは会いたくないと陳述書まで提出していました。

ところが家裁の出した結論は、隔週の週末ごとにジュリアンをアントワーヌに会わせるということ。
どうも無職の母よりも、しっかりした職についている父親の方を信用したらしいのです・・・。
ジュリアンは週末、渋々父に連れられて父の実家に行きます。
アントワーヌはなんとか元妻ミリアムの連絡先や引越し先を聞き出そうとしますが、
母をかばうジュリアンは必死で隠そうとします・・・。

ホラーではないのに、じわじわと怖さが忍び寄ります。
暴力で女子供を支配することでしか自分の存在を示すことができないヤツは、実際にいるものですね。
アントワーヌが白々しく息子や、居場所を突き止めた元妻を抱きしめるシーンには、思わず鳥肌が立ちました。

つい思い出してしまったのは、先ごろ、4年生の女の子が父親の虐待を受けて亡くなったという事件。
彼女は学校のいじめのアンケートに父から暴力を受けていると記していたにもかかわらず、
その内容を教育委員会が父に見せてしまったため、
余計に暴力が増幅してしまった・・・というやりきれない出来事。
家庭内のことは、実のところ外部からはわからないものなのですね。
この事件でも、本作においても、第三者が勝手な判断をすることによって、
本当に助けが必要な人が助けを得られず、余計事態がこじれてしまう・・・。



DVというのはいくら本人が反省したと言っても絶対に繰り返すもののように私には思えます。
少なくとも、女性や子供、立場の弱いものの言葉にもっと重きをおいてほしいものです。
そして周囲の気配りも必要ですよね・・・
こんな大ごとの事件になる前に、DVをもっとはっきりと「犯罪」とする認識が必要なのでは?
とつい思ってしまいます。
ついいろいろと考えさせられる作品でした・・・



<ディノスシネマズにて>
2017年/フランス/93分
監督・脚本:グザビエ・ルグラン
出演:レア・ドリュッケール、ドゥニ・メノーシェ、トーマス・ジオリア、マティルド・オネブ

DV度★★★★★
怖さ★★★★☆
満足度★★★.5



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