人から見れば、取るに足らないことなのに
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村一番の自転車修理工ラウルは、愛する妻と子供たちと平穏な日々を過ごしています。
しかし実は誰にも言えない秘密を持っていて・・・。
それは、自転車に乗れないこと。
子供の頃から何度も何度も練習したのに全くダメなのです。
しかしそのために逆に自転車に強くひかれ、ついに自転車修理を生業にし、
その腕で村民の信頼を得たのでした。
でもそうなると、ますます自転車に乗れないとは言い出せなくなってしまったのです。
そんなある日、村を写真家エルヴェが訪れます。
彼は村人の写真を撮ることで評判を得ています。
ラウルとエルヴェは気が合い、次第に親しくなって、
とうとうエルヴェは、ラウルが自転車で坂道を下る姿を撮影しようと言い出しますが・・・。
自分にとってはすごく大きな秘密の悩みなのだけれど、
実は他の人にとっては取るに足らないこと、そんなことはあるものですね。
それにしてもラウルの、秘密を人に話すくらいなら死んだ方がまし、くらいの思い込みもすごい。
彼は昔父親にそのことを打ち明けたのですが
その直後に父は雷に打たれて死亡。
その後、付き合っていた彼女に打ち明けたら雷が鳴り出し、
彼女は無事だったけれども「バカみたい」と言われて振られてしまった。
秘密を打ち明けるとよくないことが起きる・・・、
そんな抑圧もラウルの中にたまっていきます。
そのため、今の妻には未だに打ち明けられていない・・・。
いい大人が秘密を抱えて右往左往・・・そんなコミカルさが何やらもの悲しくもあります。
彼は自転車に乗れないせいで、他の子供たちと遊びにも出られず、
やむなく本ばかり読んでいて、優等生になってしまい、
するとますます友達がいない・・・と、
そういう少年・青年時代を過ごしてきていたのです。
そんな彼に初めて友人と言える存在ができた。
それが写真家のエルヴェ。
しかしラウルの秘密のおかげで、うまくいくはずのところもうまくいかなかったりする。
また、ラウルの妻はラウルの幼なじみなのですが、
実はちゃんと見るべきところを見ていた、というのがまたいいのですよねえ・・・。
素敵に味のある作品でした。
<シアターキノにて>
「今さら言えない小さな秘密」
2018年/フランス/90分
監督:ピエール・ゴドー
原作:ジャン・ジャック・サンペ
出演:ブノワ・ポールブールド、エドゥアール・ベア、スザンヌ・クレマン、グレゴリー・ガドゥボワ、バンサン・ドゥサニア
ユーモア度★★★★☆
満足度★★★★.5