映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「アンサンブル」サラ・パレツキー

2017年09月01日 | 本(ミステリ)
短編も楽し

アンサンブル 〔ハヤカワ・ミステリ文庫〕
山本やよい
早川書房


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新聞の尋ね人広告をきっかけにヴィクが亡き母親の真実を探る「追憶の譜面」、
売れっ子の女性作家との確執が思わぬ事態を招く「売名作戦」、
行方不明のカメラマン探しの裏に潜む謎を追う「フォト・フィニッシュ」など、
人気のV・I・ウォーショースキー・シリーズをはじめ、
ユーモア作品や異色サスペンスまで、
著者の多彩な才能がいかんなく発揮された全10篇を収録。
本邦初訳作品もまじえて贈る待望の日本オリジナル短篇集。

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大好きなV・I・ウォーショースキー・シリーズを含む、サラ・パレツキーの短編集。


この本、随分前に購入してあったのですが、
本棚の奥に置いたまま埋もれていました。
翻訳モノは、読めば面白いのですが、やっぱり少し苦手感があって、
つい後回しになることがあります・・・。
いっそ図書館で借りたほうがいいのかも。
イヤでもすぐに読まなければならないですもんね。
しかしまあ、出てから5年もたった本ではあっても、全然問題はありません。


本作中「V・I・ウォーショースキー最初の事件」というのがあったのが嬉しかった。
それはまだヴィクが子供の頃のこと。
よく彼女の回想に登場する父トニーと母ガブリエラが存命の幸せな時代です。
公民権運動が盛り上がりを見せている時代。
キング牧師の参加するデモの大混乱の一日。
ヴィクの親族たちも、デモについての賛否両論真っ二つ。
そんな当時のアメリカの熱がひしひしと感じられます。


この本全体を読んで感じたのですが、
女性の妊娠中絶についての賛否が大きな問題となって、
これもアメリが社会を真二つに分断している、
このことの描写がとても多いのです。
主にキリスト教の観点から、堕胎は罪で絶対に行うべきではないと、
そういう論調はかなり根強いのですね。
けれど、近年のフェミニズム的観点からは、
妊娠中絶もやむなしである、と。
少なくともサラ・パレツキーの著作では常にこれが大きな問題としてあげられています。
これ、日本ではあまり問題にならないのはどうしてなのでしょう? 
もちろん日本でも、堕胎は奨励されるようなことではありませんが、
絶対にダメという人はあまりいないのでは・・・。
やはり宗教的な問題なのでしょうね。


余談に過ぎました。
V・I・ウォーショースキー・シリーズ以外の作品もまた、
私の知っているサラ・パレツキーとは違う一面が見えて、楽しめました。
チョッピリ皮肉ぽい物言いがナイスです。

「アンサンブル」サラ・パレツキー ハヤカワ文庫
満足度★★★☆☆


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