人のことを「知る」とは?
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豊田徹也さんの長編コミック「アンダーカレント」の実写映画化です。
家業の銭湯を継いで、夫・悟(永山瑛太)と共に暮らしていた、かなえ(真木よう子)。
ところがある日突然、夫が失踪。
途方にくれながら休業していた銭湯の営業を再開。
そんなところへ、堀(井浦新)という男が現れ、住み込みで働くことになります。
またかなえは、友人に紹介されたうさんくさい探偵・山崎(リリー・フランキー)に
悟の捜索を依頼。
かなえは堀との共同生活の中で、穏やかな日常を取り戻していきますが・・・。
表題、「アンダーカレント」とは、すなわち「底流」のこと。
表面的な意識の奥底に、自分でも気づかないような何かが潜んでいる
・・・というようなことでしょうか。
実はかなえは幼いときにある特殊な体験をしているのですが、
そのことについてはすっかり記憶が失われている。
けれども、彼女はなぜかよく同じ夢を見るのです。
誰かに首を絞められながら、水底に沈んでいく・・・。
それは苦しいようでもあり、心地よいようでもあり・・・。
これこそが、彼女にとってのアンダーカレントということになりますが。
かなえは、夫が失踪したときには
「自分は彼にとっては相談相手にはならなかった」と思います。
そしてやがては、「自分は彼のことを何も知っていなかった」と思うようになります。
表面上、「人当たりがよくて、やさしくて・・・」と、
そんなことはその人のことを知ったことにはならない、と言う、山崎。
この探偵は、とぼけているくせに時々鋭いことを言うのです。
そういわれて、そもそも人のことを「知る」というのはどういうことなんだろう・・・と、
物思いに沈んでいってしまう、かなえ。
一方、かなえと堀とは幾分なじんではきたものの、堀は一向に自分のことは話そうとしない。
頼りになって、なぜか少し懐かしい感じもするのに・・・。
2人のアンダーカレントは、案外同質のものであるのかも・・・?
リリー・フランキーさん演じる探偵さんがいい感じ。
実にたよりなく、ふざけているようにさえ見えるのに、
なぜか言うことがマトを付く。
そして意外と腕がいい。
この方の存在が、物語の重苦しさをすくい上げています。
見応えのある作品でした。
<サツゲキにて>
「アンダーカレント」
2023年/日本/143分
監督:今泉力哉
原作:豊田徹也
脚本:澤井香織、今泉力哉
出演:真木よう子、井浦新、リリー・フランキー、永山瑛太、江口のりこ
ミステリアス度★★★☆☆
深層心理度★★★★☆
満足度★★★★☆
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