映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「いつかの岸辺に跳ねていく」加納朋子

2021年11月26日 | 本(その他)

ストーリーの表と裏

 

 

* * * * * * * * * * * *

俺の幼馴染・徹子は変わり者だ。
道ばたで突然見知らぬ人に抱きついたり、
俺が交通事故で入院した時、事故とは全く関係ないのに、なぜか枕元で泣いて謝ったり。
合格間違いなしの志望校に落ちても、ケロッとしている。
徹子は何かを隠してる。
俺は彼女の秘密を探ろうとするが……。
互いを思いやる二人の物語が重なった時、温かな真実が明らかになる。

* * * * * * * * * * * *

このストーリー、主人公は平石徹子と言うべきなのでしょう。
どこか変わっている女の子。
でも本作は2部構成になっていまして、
始めの「フラット」は彼女の幼なじみ、森野護(まもる)が語り手となっています。

2人は家が近所で、幼稚園から中学校までが一緒という幼なじみ。
護くんは「始めからことわっておくけれど、これは愛とか恋とか、
好きだとか惚れたとか言う話では全然ない」と言っています。

まあ、それは聞き流すくらいにしておいて、
護から見たちょっと変だけど、実はとてもイカす女の子、
徹子の様々なエピソードが語られて行きます。

 

護は体は大きくて、高校・大学と柔道部の猛者。
そして気持ちは優しく、なんとも頼りがいのある男子なのであります。
すっかりファンになってしまいます。
そして、始めに豪語したはずなのに、実はやっぱり護は徹子のことを思っていて、
なんだかいい感じになるのかも・・・?と思った矢先、
突然徹子が連絡を絶って、
「結婚するらしい」ということをウワサで聞くことになるのです。

 

え~、なんで~と思ったら第一章はそこで突然途切れて、
2部「レリーフ」では今度は徹子が語り手となります。
同じ出来事を男女が自分目線で別々に語る。
まあ、そういう小説は他にもありますよね。
しかしここで驚くのは、この徹子の事情です。
彼女はある重大な秘密を抱えていた!

前半まではごく普通の青春ストーリーと見えていたのですが、
さすが加納朋子さんのストーリー、そう一筋縄ではなかった。
SF的というかファンタジー的というか、
まあ、リアルな生活の物語からは外れてしまうわけですが、そこがまた面白い所なのです。

 

一体どうして、徹子が別の男と結婚しようと思うようになったのか、
そのナゾに向かってまっしぐらにストーリーは駆け抜けていきます。

裏と表のストーリー。
ともかく楽しめました。

 

「いつかの岸辺に跳ねていく」加納朋子 幻冬舎文庫

満足度★★★★.5

 

 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿