映画と本の『たんぽぽ館』

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「三鬼 三島屋変調百物語 四之続」宮部みゆき

2022年11月15日 | 本(その他)

どうしようもなく貧しい村で

 

 

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江戸の洒落者たちに人気の袋物屋、神田の三島屋は“
お嬢さん"のおちかが一度に一人の語り手を招き入れての変わり百物語も評判だ。
訪れる客は、村でただ一人お化けを見たという百姓の娘に、
夏場はそっくり休業する絶品の弁当屋、
山陰の小藩の元江戸家老、
心の時を十四歳で止めた老婆。
亡者、憑き神、家の守り神、とあの世やあやかしの者を通して、
せつない話、こわい話、悲しい話を語りだす。

「もう、胸を塞ぐものはない」
それぞれの客の身の処し方に感じ入る、聞き手のおちかの身にも
やがて心ゆれる出来事が……

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宮部みゆきさんの「三島屋変調百物語」シリーズの4巻目。
登場人物一人一人に親しみを感じ、この物語の世界観に浸りきったこの頃。
本巻もいい感じです。

 

表題作「三鬼」は、なんとも陰惨で切ない話。
おちかは、山陰の小藩の元江戸家老という武家・清左衛門の話を聞くことになります。
それはもう、30年ほど前の話。
ある失態が原因で、山奉行の山番士という役についた清左衛門。
とある山奥の貧しい村に在駐する役人です。
藩の政策のマズさから、その村は例えようもなく貧しく、皆生き抜くことだけで精一杯。
子供も老人もいないこの村の暮らしは、いかにも過酷なのだろうと、清左衛門は思う。
そんな中で、せめて自分の役割を全うしようと努力する清左衛門。
しかしやがて、この村の恐ろしい秘密を知ってしまうのです・・・。
人の心の奥底の、どうしようもない暗い闇は、
凝り固まって鬼になるのでしょうか・・・。
陰惨で悲惨な物語です。

 

夏場はそっくり休業するという弁当屋の話、「食客ひだる神」は
ちょっぴりユーモラスでもあり、楽しかった。

 

本作は、一話ずつの独立したストーリーでありながら、
三島屋のおちかの物語はずっと連なって進行しており、本巻ではちょっとした変化がありました。
2巻目で登場した手習い所の若先生・青野が思いがけず江戸を離れることに・・・。
おちかは切ない思いを味わうことになってしまいますが、
これとて、まだまだ続くこの物語のほんの一部。

おちかちゃん、頑張れ! 
これも成長の一段階。

 

図書館蔵書にて(単行本)

「三鬼 三島屋変調百物語 四之続」宮部みゆき 日本経済新聞出版社

満足度★★★★☆