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二次空気供給装置(番外)VTRの部品取り寄せについて

2008年05月16日 | バイク雑談
今まで何度も修理で部品取り寄せを行っているが、今回も2種類ほど部品を取り寄せた。
紹介している通りのキャブレターのインナーパーツである。
具体的には、長さの違っていたバキュームピストンのスプリング一組、それからキャブ本体と「エアクリベース皿」をつなぐボルトに使うC字型の特殊ワッシャ(タングドワッシャー)一組である。後者は1回使ってしまうと、取り外しのためボルトを緩めた時にぐにゃりと曲がってしまい使い物にならなくなる。

ところが今回ショップ(用品店)からこういう連絡があった。

「スプリングにつきましては、メーカー在庫切れになっておりまして、次回出荷予定はメーカーさんサイドで6月下旬とのことです。どうしますか?」

これは意外な返答であった。というのもこれまで頼んだ部品はいずれも必ず在庫があって、翌日には入荷していたからだ。
在庫切れという返答は初めてのことであった。これはどうしたことか。

同時に頼んだもう1種類の部品、タングドワッシャーも「メーカー倉庫に在庫なしで取り寄せ」とのことで、入荷まで4~5日程度かかるという。
この部品は昨年も頼んだことがあるのだが、その時は即日入荷であった。

少し考えて、こういう推定をした。

「もしかして、VTRが生産中止になったせいではなかろうか?」

私が直近で純正部品を取り寄せたのは昨年末のことだ。今年に入ってから注文したのは今回が初めてである。
VTRは昨年発売の2007年モデルで生産が終了となっており、そろそろ店頭の新車在庫も僅少となっている頃合ではなかろうか。
この間に、これまで現行モデル用として流通していた補修部品の在庫にも整理がされていたとしたら…。

もちろんたった2種類の部品の話であるから断定はできない。できないが、嫌な予感が脳裏をよぎる。

気になったので、仕事帰りにホンダ直営バイクショップであるホンダドリームの最寄店へ立ち寄り、スプリングの納期を確認してみた。
案の定同じ回答であった。
ドリームさんなら何か知っているかも知れないので、思い切ってここの店員さんに訊ねてみた。

「時間がかかる理由というのは、何故なんでしょうか?」

「そうですねえ、この車種は生産終了になったからと思われます」

ずばり嫌な予感が的中してしまった。

さらに質問してみた。

「ホンダさんでは、生産中止になるとすぐ部品供給が渋くなるんでしょうか?」

これに対しては店員さんもよく分からないようで曖昧な返答であった。
ただ、国が定めた排ガス規制に適応しない機種の部品供給については、メーカーとしても出しにくい事情があるのではなかろうか、というような主旨の推測を語ってくれた。
(話し相手になってくれたお礼に、このドリーム店にて前払いで部品注文をしたよ)

その推測が事実とすれば、VTRも、他の250ccクラスモデルと同様で新たな排ガス規制に適応できないのが生産中止の主たる理由のはずであるので、合理的な説明と言える。
さらには、現時点で排ガス規制への有効な対策のひとつがキャブレターの廃止ならびにフューエルインジェクションシステム(FI)の採用である。何しろスーパーカブまでFI化されてしまったのだから。
この理屈では、排ガス規制にそぐわないキャブレターの部品などというのは、「最も忌むべき部品」ということになる。よって私が欲しいスプリングなども、一番最初に供給をやめるべき部品と見做されるのだろうか。

もちろんメーカーが長期の部品保管をすることは、維持管理費がかさむばかりか、製造原価の増加にも繋がり、キャッシュ面でも財務面でもマイナスなことである。法規制以前の問題として、忌避する合理的な理由があるのは確かだ。
かといって環境対策法令にそぐわない車種、すなわちほぼ全ての絶版車に関しては、部品すら出さない方針なのだろうか。それではCS面ではむしろ明らかにマイナスであるので、各メーカーとも闇雲にこの方針で一辺倒では無いとは思う。実際のところは色々な天秤事情があるのだろう。

ナニはともあれ部品の供給というのは、絶版車オーナーにとっては死活問題である。そして私の相棒VTRがついに絶版車の仲間入りを果たしたのは事実だ。今回初めて入荷待ちを経験することになったが、これからは入手不可能な部品も出てくるに違いない…。

※ ※ ※

私はかつて旧車乗りであった。
しかし旧車ゆえの不便のため乗るのを辞めた。理由はたったひとつで、修理部品の入手の困難さのせいである。
VTRを手に入れる以前、私は最高の相棒と出会っている。それがVT250FEだ。


これ

幼い頃からの憧憬(バイクブーム時代に小学生だった私は、当時プラモデルを通じてバイクに親しんでおり、現車もよくチェックしていた)、スタイリング、ポジション、マシンの性格や位置づけ等々、全てが自分にとって最高レベルのものであった。VT250FEは本当に最高のバイクだった。
しかし2年で手放したのだ。色々と手直ししたくても、部品が出なくては叶わなかった。私はいつでもマイバイクの品質を保持していないと気がすまない性質だ。かといって部品取車を確保するほどの経済的・土地的余裕を持っていないし、血眼でヤフオクを巡回し部品を探し続けるのも苦手であった。

VTRに乗るようになった理由はたった一つで、それはVT250FEの後継機種というか現代版VTであることであった。

それもついに絶版車となったのだ。
アタマの中に一瞬「乗換え」という言葉が浮かんだ。
しかしすぐに打ち消す。
…今月、3年契約の自賠責に入ったばかりだからだ。

しかしどんなものにも終わりはある。私が死ぬ前にVTRを手放し違うバイクに乗り換える日が来る可能性は、けっこう高い。
まあその時はその時なんだけど、その時がグッと近づいた気がする。

これからもホンダさんには細々と部品供給を続けてもらえますように(-人-)。