人骨

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二次空気供給装置(1)

2008年05月12日 | メンテナンス実演(VTR250)

我々はこのキャブを知っている


これはおととい自分のVTRからサクっと外したキャブだ。慣れた作業なので摘出には30分もかからなかった。決して改造マフラーのセッティングとかに凝っているわけではなく、またVTRに不調が発生したせいだ。不調になると心がウキウキするのは何故であろうか。

症状は、またアイドリングである。当然疑わしいのは点火系そしてキャブレターということになる。
キャブといえば昨年秋にOHしたばっかりじゃないか!確かに最近は休日も家の都合で忙しく、1か月以上乗らないで放置することが何度かあった。でもたったそれだけで不具合が起きるものだろうか?
それ以上に考えられるのが、昨年のOHにミスがあったという疑いである。ミスはあったものの、下記の通り微妙な症状のため今まで気づかなかったか、あるいは外気温のせいでそもそも症状が出なかったのではないか。
今回不具合に直面し、私はすぐさま後者の線が濃厚だと考えた。

具体的な症状について説明しよう。
それは、アイドリング中にほんの一瞬ちょこっとだけアクセルを開け(スナッピング)てやった時に起きる。一瞬だけ手首をひねって「ブルッ」とやるのだ。
当然エンジン回転が上がる。上がると言ってもアクセルを開けるのは本当にちょこっとだけなので、せいぜい2000回転ちょい程度までだ。
その後回転は下がってアイドリングに戻る。ここまでは普通。
問題は、回転が下がりすぎることなのだ。アイドリング回転数よりさらに下がってしまい、一瞬エンストしそうになる。その後また回転が上がってようやくアイドリングに戻る。
信号待ちのたびに試してみたところ、何回かは本当にエンストした。
今回の症例については仮に「回転下がり過ぎ」と名づけることにした。

ひとまず、わざとオリジナル値より1/8回転ほど濃い目にしていたパイロットスクリューを元に戻し、2日間この状態で走り続けてよく症状を観察した。すると次のようなことが分かった。


◆上記症状の出現条件について(なんかゲームのイベントみたいだ)。

【1.暖機が完了していること】
始動直後はもちろん、暖まり切っていない時には、発生しない。

【2.一定時間(数十秒程度)以上アイドリング状態を続けていること】
走行状態から停止した直後には、発生しない。よって信号が青に変わる寸前によく起きる。
また症状出現直後に続けて同じことをやっても症状は現れない。再度の出現のためにはもう1回数十秒アイドリングすることを要する。

【3.ほんの一瞬で行われ、わずかな開度のスナッピングであること】
たとえばほんの一瞬でも5000回転くらいまで開けると発生しないし、アクセル開度は2000回転であっても普通の早さで開ければ発生しない。

これらの条件が揃えば、確実に「回転下がり過ぎ」が発生する。

◆症状に伴う実害

【1】【2】の条件が揃った状態で、スナップしないでそのまま発進しようすると、トルク感が薄くエンストしそうになる。
一度スナップしておけば普通に発進可能。



ここでようやくプラグを外してみた。


プラグ


相変わらず白い。元々私のマシンは最初からこうなので何ともいえないが、少なくともスローが濃いということは無さそうだ。むしろ薄めだ。いずれにせよ、トラブルの時にはまずプラグを問答無用で新品交換しよう。話はそれからだ。

話はそれからなんだけど、プラグを買いに行く前にキャブレターに手を出していた。そちらの方を疑っているせいである。
キャブレターの不具合は、すなわち混合比不良である。濃いか薄いかのどちらか。どういう場面でどういう症状が出るかによって、キャブの何が問題なのか診断できる

ということで、燃料系統に則して上記の発生条件を考察してみる。
まず【1】にあるように暖機後にのみ発生するので、可能性として混合気が濃いというチョイスも捨てきれない。
次に【2】の一定時間かかる意味は、おそらくガソリンがキャブに供給され油面が安定することと関係あるのではなかろうか?よって、フロートバルブにゴミ等が付着しオーバーフロウしかけているか、油面が狂っている可能性がある。
しかし現在の私のスキルでは【3】の意味が分からない。アクセル開度についてはアイドリング時の不調なのでスロー系統に問題があるのは間違いないのだが、何故「一瞬」でないといけないのかが分からない。
また、セオリー通りチョークレバーを少し引いてみたところ、回転が少しだけ上がったもののストールはしなかった。これは、アイドル時の混合気が薄いということなのか?またチョークレバーを引いたまま【1】【2】【3】の条件を整えたところ、やはり回転下がり過ぎの症状が出た。
薄い濃いによる原因特定は、現時点では判別不能だ。

ひとまず例のD字型ドライバーを用いてパイロットエアースクリューをいじってみた。しかし、1/2回転くらい開いても閉じても症状に変化なし。
念のため、あえてスクリューを前閉にするとエンジンが停止しそうになった。開通していないというわけではなさそうだ。
吸排気系のカスタムを施していないのならば、パイロット調整はかなりストライクゾーンが広いというのが、私の経験による実感だ。

この時点であたりをつけた仮説は次の通りだった。


◆一番怪しいのが、油面が狂っている疑い。前回自分で調整しているせいだ。2日間乗りながら「そうだ京都へ行こう」並みに「油面を見よう」という気になった。
とにかく今回は開けて油面を見てみないと落ち着かない!

◆その次が、取り付けミス等による二次エア吸入。ジェット類の詰まりは昨年OHしたこともあるので多分無いと思う。また前回仕組みが分からなかった「エアカットバルブ」に不具合は無いか。



ということで、ひとまず取り外したキャブを点検したのだが、残念なことに注目の油面は2つとも規定値に収まっていた。昨年の私の整備に手落ちは無かったのだ…。
いっぽう二次エアの可能性なのだが、これも点検したところ特に不具合はなかった。それに負圧ホース類やインシュレーターは昨年全て新品に交換している。
エアカットバルブも見てみてが、組み付けも問題なくダイヤフラムに劣化等も全く見当たらなかった。
ズバッと解決するかと思ったけどそうもいかないみたいだ。がっくし。


とりあえず原因探求も面倒なので、原因特定でグダグダする前に、せっかく外したキャブレターはバラして洗って組みつけてみようと思っている。今度は漬け置きタイプのヤマハのやつを使うことにした。
それからプラグを新品交換。
これでも治らなかったその後で、頭を抱えよう。

※ ※ ※

ところで、それより何より。
長かったけど今まで書いたのはプロローグに過ぎないのだ!
排ガス対策で00年型から装備されている「二次空気供給装置(エアインジェクション)」なのだが、自分はこいつを盲腸とみなしており、好きではない。
私は環境問題への意識が低く遵法意識もほとんど持ち合わせない中国人なみのDQNであるため、そもそも「環境」とか「エコ」とかが嫌いである。
Y型以降、それまでと法律が変わったのでそれに対応するため新たに取り付けたというこの装置は、個人的には全く不要なシロモノなのだ。
ゴタクはさておき、私がこの装置を嫌っている最大の理由は…ガソリンタンクを外すたびにホースにひっかかって邪魔だからだ。

たしかに、こいつはエアクリーナーならびに燃料コックの負圧系統と繋がっているので、何度も何度もホースを引っ掛けるうちにどこかオカシクなってしまい何か悪さをしている可能性も捨てきれない。

よって今回私はこのエアインジェクション装置を撤去し、また装置にまつわる吸気系統を全て封印し、98年型VTRと同じにすることを決意した。以後タンク下はかなりスッキリすることであろう。ならびに若干の軽量化が図れるはずだ。
引き換えに道路車両運送法違反となるのかどうかよくは知らないが、まあこんな理由で咎められることはないだろう。西暦2000年以降に製造されたマシンが背負わなくてはいけない十字架を、自分だけ勝手に降ろすことにした。確信犯である。

追って顛末を報告します。