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キャブレターの分解と洗浄4

2007年12月03日 | メンテナンス実演(VTR250)

クリーナーを吹いて放置

バケツとかにキャブ本体を置き、洗浄します。使うのは例の強烈な溶剤、キャブレタークリーナーです。自分が使ったのはベリティの泡タイプです。吹き付けるとはじめは泡になってその場にとどまり、ゆっくりと液状化していきます。作業は素手でやらざるを得ないので、まるで盟神探湯です。

クリーナーは汚れているボディ全体のほか、穴という穴に吹き付けてください。
先ほどジェット類を取り外したフロートチャンバー内は、ガソリンが溜まる場所ですので、当然ここの穴はガソリンを吸う穴です。一方でエアクリーナー側にニョキニョキ突き出してるジェット(取り外し不可)はエアーを吸う穴です。目では見えない通路内で両者がブレンドされているわけです。
バキュームチャンバー内にも何箇所かジェット類があります(取り外し不可)。
これらの穴全てにしつこくクリーナーを吹きかけます。
なおさっき取り外したジェット類については、バケツ内の溶剤が溜まったところへ置いておけば勝手にきれいになります。
ボディの外側のしつこい汚れに関しては、歯ブラシでこすり落としました。
一通り吹き付けたら、汚れとともに溶剤が流れ落ちるまでしばらく放置しておきます。放置しておくべき時間は、使用する溶剤の強さによって違う気がします。見当のつけ方としては、キャブ本体の目で見えている汚れがどれくらい経てば溶けるのかを見ておけば良いと思います(キャブの外側にこびり付いた何だか分からないガンコな黒い汚れが、みるみる溶けていきます。目に見えない箇所も同様に違いない!という理屈…)。自分のVTRのキャブは超キレイな部類ですので、1時間も放置しておけば十分そうです。

なお今回清掃して分かったのは、エアー系統は結構汚れているということです。エアー系統のジェットへクリーナーを吹き付けると、ドス黒い汚れが流れ落ちてきました。
おそらくブローバイガス還元装置のせいではないかな、と思います。VTR250にはオイルキャッチタンクが無いので、タンクがあれば結露して貯まる未燃焼ガスを全て吸気側のフレッシュエアに混ぜて戻しています。「アイドリングの微妙な乱れは、エアー系統の詰まりが原因なのでは?」という推測が頭をよぎりました。これでは先日使った「フューエルワン」(名前の通り、燃料に混ぜる添加剤)は、効きようがなかったことになります。
一方の燃料系統についてはほとんど汚れが無いようです。こちらには添加剤の効き目があったのかな?(そもそも汚れていなかったという可能性も、高いです)

放置が済んだらキャブクリーナーを洗い流します。スクーターのキャブとかなら水でジャー流してドライヤーで乾かしちゃいますが、一応大切なVTRですので、パーツクリーナーを使います。長い缶をまるまる1本奢る覚悟で洗い流します。


洗浄後のフロートチャンバー内部

ぴかぴかですね。とくにこすったりはしていませんが、こんな感じになります。よく拭き取り、あとは組み付けになります。

ここで今回取り寄せたキャブのインナーパーツを改めて紹介します。

○ガスケット、Oリングのセット。数量は、前後キャブに各1点ずつ。
○フロートバルブとバルブシートのセット。数量同上。
○ジェットニードル。前用と後ろ用で違う部品なので注意。
○メインジェットホルダー。前後に各1点ずつ(はっきり言って、要らなかったかも…)。

なお交換しなかったゴムのパーツは例のピストンバルブ(のダイヤフラム)と、エアーファンネルです。まあどちらも当面交換する必要はない部品です。両方とも台所の中性洗剤で洗いました。



新旧フロートバルブ

フロートバルブの拡大写真です。左が使用済みで、右が新品です。使用済みの方は、三角のゴム部が微妙に磨り減って段が付いているがお分かりでしょうか?
フロートバルブは、フロートの爪の所に引っ掛けて(2つ下の写真参照)、逆立ちの状態で装着します。チャンバー内にガソリンが満ちてフロートが浮き上がると、バルブが押し上げられバルブシートを塞ぎ、タンクからのガソリン流入が止まる仕組みです。これは水洗便所のタンクの水が一定の水量まで貯まると勝手に止まる仕組みと一緒です。便所のタンクの仕組みをご存知でない方は、今度うんこした時にぜひフタを開けて覗いてみてください。
また写真では隠れてしまっていますが、フロートバルブのお尻のほうには「ボタン」がついてます。押すと凹み、手を離すと勝手に戻ってきます。詳しい理由は省略しますが、バルブ先端のゴム部分の磨耗を防ぐためにこうなっていると思われます。



油面の高さを計る

ガソリンが満ちると、フロートが持ち上がり、バルブが閉じると上で書きました。この油面調整というのは「バルブが閉じるためのガソリンの高さ」を決めるもので、これもマニュアルで定められている数値を規準に、全体的なガスの濃さの様子を見ながら決定するのがキャブセッティングの極意のひとつであります。
で、写真で定規を当てている高さを測定します。6.8mmというのがマニュアル規定値です。サービスマニュアルには、「フロートを指で持ち上げ、フロートと接触するギリギリのところで押さえ、測定する」
みたいなことが書かれてますが、面倒くさいからキャブをひっくり返して写真みたいに定規を当てればOKです。フロートをそぉーっとバルブに当たるまで下ろし、あとは重力に任せておけばOK。あまり勢いよくフロートをひっくり返すと、フロートバルブの「ボタン」が押された状態になってしまい、正確な油面が測れません。
正確と言っておきながらなんですが、自分はノギスを持っていないので、写真のような単なる物差しです。まあ大体合っていれば良いんです。どうせ走行中はガタガタ揺れてますしね。ご覧のように7mmよりチョイ下に、大体で合わせておきます。なお高さを測るのは、キャブ本体とフロートチャンバーのフタとの「あわせ面」から、フロートの浮きの「一番てっぺん」までです。
ちなみにこの測定値を6.8mmより高くすると、混合気は濃いめになるか、薄めになるか、どちらでしょう?
頭の中で上下をひっくり返せば分かりますね。ここで測定する浮きの高さが高くなれば、逆さにひっくり返せば、ガソリンの量が少ない状態でバルブが閉じることになります。すなわち油面は下がります。つまり測定して6.8mmより高ければ、例えば7mmとか8mmとかならば、油面が下がって混合気は薄めになります。逆に5mmとかだと濃いめになります。
フロート測定値と油面の高さは、逆になるので気をつけてください。


油面を変えるにはこのツメを曲げる

具体的に油面の高さを変えるにはどうしたら良いのかというと、その方法は超アナログです。
写真をご覧ください。上に書いたフロートバルブをひっかける場所、つまりフロートの爪が見えますね。マルを付け忘れたので分かり難いですが、左の方のツメではありません、写真でバルブがぶら下がってるところです。このツメを「曲げる」のです。ツメを上のほうに曲げれば測定値が上がって油面は下がり、下に曲げればその逆です。曲げるために特に工具は不要です。親指でグッと押して、曲がったかどうか分からないくらい曲がれば十分です。試行錯誤で高さを合わせてください。
ちなみに今回はバルブシートを新品に換えました。バルブシートはねじこんで留める箇所ですし、また1枚柔らかいワッシャも噛んでいますので、案の定油面がズレました(調整しました)。

ここで脱線します。
以前まだVTRに乗る前のこと。友人たちとの集団ツーリング寸前に、忙しくて自分で作業をする時間が無く、超有名ショップにキャブレター不調のバイクを預けてOHをしてもらったコトがあります。ところがツーリングに出かけてみたら何か不調になってました。なんというか、加速がもたつく。後日時間が出来てから改めて自分で開けてみたら、油面がムチャクチャ高め、つまり濃い目に振られておりました。規定値に直したら今度は完調に。ショップは全国的にも有名で某添加剤の国内総代理店とかやってるくらいで、とっても信頼できそうだったのに、ちょっぴりお金返してって思ってしまいました。
また、まだ自分がバイクをいじり始めたばかりだったころ、最初にお世話になっていたバイク屋さんとキャブのメンテナンスについて相談していたところ、「旧車は油面調整で薄めに振ると調子良くなるよ」なんていうことを話していました。実際そのお店ではそういう調整をして中古販売していました。確かに薄めだとエンジンが軽く回るような錯覚を受けます。

なおVTRは、プラグの焼け色から察するに、混合気規定値はギリギリの薄めのところに設定しているのではないかなと思われます。エアクリーナーが汚れていくと段々濃くなるのでそういう設定なのかも分かりませんし、あるいは排ガス規制の影響なのかも分かりません。VT250Fはプラグ電極はいつもキツネ色でしたが、VTRは新車時からかなり白っぽい焼け方をしていました。

(つづく)