MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『傷だらけの天使 欲ぼけおやじにネムの木を』

2017-03-24 01:00:10 | goo映画レビュー

原題:『傷だらけの天使 欲ぼけおやじにネムの木を』
監督:工藤栄一
脚本:宮内婦貴子
撮影:田端金重
出演:萩原健一/水谷豊/岸田森/内田朝雄/武藤章生/下川清子/亀渕友春/根岸一正/笠井うらら
1975年/日本

「欲ぼけおやじ」の正体について

 辰巳五郎が小暮修と乾亨に依頼した仕事は辰巳から土地成金の億万長者である松本吉次郎が相続税対策のために作った架空名義の裏預金の預け先をつきとめることだったのだが、2人の息子も一人娘も吉次郎が3億円を預けた銀行も口座番号も分からない原因は、吉次郎が「恍惚の人」になってしまい戦時下のラバウルの幻影と戯れている有様で、手掛かりが全く掴めないでいたからである。
 しかし実は吉次郎はボケた振りをしていただけで、「愛光ホーム」という老人ホームに入所すると有り金を全て払って一人だけ庭付きの特別な個室にお手伝いを伴って住むことになり、他の高齢者たちが食堂で不味い料理を食べさせられる中でステーキを食べ、家族が一緒に写っている写真を焼いて家族との縁も断ってしまい、修と亨は住み込みで家政婦をしていた花枝と共になすすべがなく花枝は田舎に帰ってしまうのである。
 花枝と亨が出会ったきっかけは、バス停でバスを待っていた時に、割り込んできた男に花枝が文句を言って、何故か代わりに亨が殴られることになったことだった。その後も修と亨は吉次郎の財産を狙う男たちから何度も殴られることになる。 
 そこで気になることは修と亨が観にいった映画が『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971年)である。

 上の写真を見ても分かるように、実在する映画なのであるが、岡本喜八監督作品であるこの作品の監督名は「岡田和彦」という名前になっており、脚本を担った新藤兼人の名前は「宮野悌治」となっている。製作は「吉田新生」となっており、出演者は「小林正幸、仲田矢代、野村剛、伊東雄三、原田享、三好幸子」と何故か架空の名前になっているのである。
 穿った見方をするならば修も亨も興奮して観賞していたこの作品は「本作」よりも実際には戦況が酷かった光景が描かれていたように感じる。1975年には沖縄国際海洋博覧会が開催されている。かつて空軍のパイロットとして従軍していた松本吉次郎は天照大神を信奉しているし、彼には2人の息子と一人娘がいるのである。以上のことを勘案するならば、これは一般市民が犠牲になっても自分だけは利益を得ているという天皇(当時は皇太子)批判と捉えられてもおかしくない。これがテレビドラマとして放送されたことに驚くと共にまだ表現に自由が保障されていたことに懐かしささえ覚える。
 ようやく『傷だらけの天使』全26話を見終わったのであるが、議論に値する作品は神代辰巳によって演出された2作品と本作の3作品くらいだった。基本的にセリフが聞き取りづらいところに難がある。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ダゲレオタイプの女』 | トップ | 『誰のせいでもない』 »
最新の画像もっと見る

goo映画レビュー」カテゴリの最新記事