MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『否定と肯定』

2018-02-08 00:26:35 | goo映画レビュー

原題:『Denial』
監督:ミック・ジャクソン
脚本:デヴィッド・ヘア
撮影:ハリス・ザンバーラウコス
出演:レイチェル・ワイズ/トム・ウィルキンソン/ティモシー・スポール/アンドリュー・スコット
2016年/イギリス・アメリカ

論者自身の論争の不可能性について

 アメリカの歴史学者であるデボラ・E・リップシュタットが1993年に上梓した『ホロコーストの真実』に端を発し、ホロコースト否認論者のイギリス人のデイヴィッド・アーヴィングに名誉毀損で提訴され、1996年から2000年にかけて、いわゆる「アーヴィング対ペンギンブックス・リップシュタット事件」として知られる論争が行われる。
 どうも疑問に感じる点として提訴したアーヴィングが名誉毀損の立証責任が被告側にあるイギリスで訴訟を起こしたにも関わらず自分が有利になるはずの陪審制を選ばなかったことである。つまりアーヴィングは「商売」ではなく本気でホロコーストは存在しないと考えていたことになる。チャールズ・グレイ判事が疑問を呈したのもこの点であった。
 さらに絶望的なことは、リップシュタットとアーヴィングの論争であるにも関わらず肝心の2人が直接対峙できないということである。論者が話し合って解決できないということは、例えば「朝まで生テレビ」を見ても分かるように見慣れた光景ではあるのだが、だったら論者とは一体何のために存在するのか分からなくなってくる。
 『不都合な真実2 放置された地球』(ボニー・コーエン/ジョン・シェンク監督 2017年)同様に本作も興行的に失敗している。これはホロコーストの否定が不可能になったという明るい兆しなのか、あるいはホロコーストそのものに対する関心が薄くなってしまったのか、微妙なところではある。


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