MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『紅夜夢』

2018-02-02 00:10:20 | goo映画レビュー

原題:『紅夜夢(こうやむ)』
監督:西村昭五郎
脚本:山之上二郎
撮影:森勝
出演:親王塚貴子/小林稔侍/山本伸吾/名和宏/江崎和代/森村陽子/青山恭子
1983年/日本

西村昭五郎監督の12年後の駄作について

 『団地妻 昼下がりの情事』から12年後に本作は撮られているのだが、正直に言うならば無惨という出来である。
 主人公の高橋お伝は16歳の時に波之助を婿養子にもらうのだが、波之助が業病を患ってしまう。金貸しの田中甚三郎から借りたお金を踏み倒して3年後、2人は群馬県から横浜の本牧に居を移して暮らしている。
 夜鷹として働いていたお伝が地元を縄張りとしている女たちに暴行を受けていた時、かつては有力者の家族に生まれながら時代が明治に変わりすっかり落ちぶれてしまった御家人崩れの遊び人の小川市太郎に助けられ、2人は深い仲になっていく。
 波之助が亡くなり、お伝と市太郎は一緒に暮らすようになり、お伝は本牧で古着屋を営む後藤吉蔵を客に取るのだが、吉蔵はサディストでお伝を縄で縛ったりしたためにお伝の体は真っ赤に腫れ上がる。怒った市太郎が吉蔵に文句を言いにいくと、吉蔵は市太郎の知り合いだった。
 しかしここら辺から脚本がおかしくなる。お伝が酷い目に遭った時には3円しかもらえなかったのだが、お伝を気に入った吉蔵が市太郎にお伝を譲ってくれと頼まれても愛しているからという理由で、断りながらも一晩の関係は認めて150円も手に入れるのである。
 ある日、東京から市太郎を探しにやって来たヤクザたちに脅されて、市太郎は250円払うことを要求される。このことが原因でお伝は吉蔵を殺すことになるのだが、その前に市太郎は吉蔵に300円払うからお伝を譲ってくれと頼まれており、お伝を手放せば250円など簡単に払えるのである。
 脚本だけではなく演出もおかしく、例えば、ヤクザに暴行された市太郎をお伝が介抱するシーンにおいて、市太郎の胸には大きな傷があるのだが、お伝が布を当てただけですぐにきれいに傷が消えてしまっているのである。お伝が吉蔵の首をカミソリで切りつける時も、吉蔵の首にカミソリの刃に沿って血による赤い線がついた後に、カメラのカットが変わって血しぶきが吹き上がるというちぐはぐさで、さらに牢屋に入れられたお伝が自分の指を噛んで出た血によって書いた手紙を、間もなく出所する女に託したにも関わらず、市太郎に手紙を届けるのは警察官なのである。
 その上、私が観た回では映像がフリーズしてしまい約10分待たされるというおまけのハプニングまでついてきてしまった。今回は他の作品を観ることができなかったのだが、西村昭五郎監督の再評価にはもう少し時間がかかりそうである。


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