原題:『Renegades』
監督:スティーヴン・クォーレ
脚本:リュック・ベッソン/リチャード・ウェンク
撮影:ブライアン・ピアソン
出演:サリバン・ステイプルトン/チャーリー・ビューリー/シルヴィア・フークス/J・K・シモンズ
2017年/フランス・ドイツ
「裏切り者」としてのリュック・ベッソンについて
作品冒頭のシーンは1944年にナチスが美術館の絵画を強奪するもので、てっきりこれらの作品を1995年にアメリカのネイビーシールズのメンバーたちがボスニアのサラエヴォから奪い返すのかと思いきや、彼らが奪還を目論んだものは金塊だった。
しかしこの作品のイメージの流れを辿っていくと、最初に「絵画」が映された後に、次は水中に沈んだ「札」と「絵画」がボロボロに崩れるもので、地上ではお荷物だった金塊が水中では浮力で楽に運べる財宝となる。しかし最後は結局それは「小切手」に変わり「紙」に戻るのである。
このように説話論的に捉えるならば、本作のクライマックスは27トンもある金塊を水中から地上に持ち上げる瞬間になるはずなのであるが、肝心なシーンが丁寧に描かれていない。ここで疑問なのは彼らが使用していたヘリコプターで27トンもの重さの金塊を持ち上げられるのかということである。どうやら史上最大の貨物容積を持つ「Mi-26」と呼ばれる8枚翼のヘリコプターでさえ20トンまでしか持ち上げられずその上ロシア製である。
決してつまらない作品ではないのだが、良いところまで作り上げながらこのような些末のいい加減さや、あるいは5歳で亡くなったペトロヴィッチの息子のネタなども活かしきれずリュック・ベッソン原作作品の甘さに思えてならないのである。