原題:『THE ROVER(流浪者)』
監督:デヴィッド・ミショッド
脚本:デヴィッド・ミショッド
撮影:ナターシャ・ブレイア
出演:ガイ・ピアース/スクート・マクネイリー/ロバート・パティンソン/デヴィッド・フィールド
2014年/オーストラリア
いびつな「愛」の形について
主人公のエリックが、浮気していた妻とその相手を殺害しても警察が何の対応もせず放っておいた原因は丁度事件が起きた10年前に世界経済が崩壊したためであって、世の中は殺人事件どころではなかったのである。
ただ警察を待っていたのかもしれないエリックの前に現われたのは、3人組の強盗団で、自分たちの車を転倒させた彼らはエリックの車を奪って逃げていく。一度は彼らに追いついたものの気絶させられたエリックは、3人の内の一人のヘンリーの弟であるレイと遭遇する。レイは強盗団の一味だったのであるが、銃撃戦で死んだものとされて置いていかれたのである。ヘンリーたちの居場所を突き止めるためにエリックは腹部に深い傷を負っていたレイを女医に診せに連れていく。
2人で追跡している内にエリックとレイには奇妙な友情が生まれる。それは妻に裏切られた者と兄に裏切られた者同士だからこそ共感するものがあったのかもしれないのだが、不幸にもレイは、本心では弟を心配していたヘンリーに銃殺されてしまう。
ラストでエリックは4人の遺体をヘンリーの家の庭で焼いて雑に処分し、その後、エリックが車に積んでいた犬の遺体を丁寧に埋葬する様子が映し出される。ここには様々な歪な愛が描かれている。その愛の「献身者」とは「Lover」ではなく「Rover」ではないのだろうか?