MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『田沼旅館の奇跡』

2015-12-10 00:15:10 | goo映画レビュー

原題:『田沼旅館の奇跡』
監督:井手比左士
脚本:森ハヤシ
撮影:江森太一
出演:夏菜/遠藤久美子/角田晃広/バッファロー吾郎A/今野浩喜/長谷川忍/岩崎う大/四元奈生美
2015年/日本

映画で時間を刻む方法について

 1912年5月に開業した老舗の田沼旅館は2008年に起こった「座敷童」事件をきっかけに活気を取り戻そうと試みたものの、却って気味悪がられて客足は遠のき、2012年の5月3日に支配人の田沼茂樹は旅館を閉める決心をしていた。
 その「座敷童」の事件を取材した旅行雑誌ライターの西川奈緒はその日に6室ある部屋の一室に宿泊していたのであるが、その日別れるつもりの最後の旅行をしていた秦祐次と佐和の夫婦が銭湯に置いてあった卓球台でラリーを始めたところ止まらなくなって、8時間を超える世界記録に挑戦する場面に遭遇し、そのラリーの様子を客の一人として宿泊していたネットムービー制作会社代表の松平仁がネットで生中継し、成功させることで田沼旅館を盛り上げるラストチャンスに田沼夫妻らと共に賭けることにする。
 ラリーで生じるラケットとボールが当たる規則正しい音と、旅館にある大きな柱時計の振り子が刻む音が途切れなく聞こえてきた時には、これまでの「KATSU-do」が制作していた『Mr.マックスマン』(増田哲英監督 2015年)や『五つ星ツーリスト THE MOVIE 〜究極の京都旅、ご案内します!!〜』(島崎敏樹監督 2015年)にはなかった緊張感を感じたのだが、田沼茂樹が自分の気持ちを吐露するシーンにおいて卓球のラリーの音が消されてしまったことで、そのような視聴覚に訴えるような演出は意図してなかったことが分かりがっかりしてしまった。せめて振り子の音が最後の五カ月後のシーンまででなくても小倉五郎が逮捕されるシーンまで続いていれば映画らしい演出が見られたと思う。
 左分けの夏菜と右分けの遠藤久美子の間に分け目のない座敷童に扮した角田晃広が現れるシーンなど、もっと工夫すれば面白いシーンになったと感じる。低予算作品で同時期に公開されているハリウッド映画と対抗しようとするならば、大作では出来ない繊細な演出を試みるべきだと思う。


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