原題:『Whiplash』
監督:デミアン・チャゼル
脚本:デミアン・チャゼル
撮影:シャロン・メール
出演:マイルズ・テラー/J・K・シモンズ/オースティン・ストウェル/メリッサ・ブノワ
2014年/アメリカ
「ドラ根」物語の楽しみ方について
原題の「ホイップラッシュ(Whiplash)」とはアメリカのジャズ奏者で作曲家のハンク・レヴィ(Hank Levy)の曲のタイトルであると同時に、「鞭による痛打」という意味もある単語で、主人公のアンドリュー・ニーマンが父親のジムと観に行っていた映画、ジュールス・ダッシン監督の『Rififi』(1955年)の邦題が『男の争い』であるのと同様に(「Rififi」は俗語で「喧嘩」を意味する)、その後のアンドリューが直面する困難を暗示している。
シェイファー音楽院のテレンス・フレッチャー教授の指導は非常に厳しいものだが、よくよく考えてみるとおかしな指導で、ドラマーが数字通りのテンポを正確に刻めるようになってしまえば、指揮者が存在する意味が分からなくなってしまう。実際に、ラストにおいてフレッチャー教授は、厳しい指導をこなし完全無欠の「ドラムマシーン」と化したアンドリューにバンドリーダーの役割を奪われてしまい、そのアイロニーが効いていると思う。『巨人の星』にリアリズムを求めても仕方がないであろう。