原題:『ズタボロ』
監督:橋本一
脚本:高橋泉
撮影:葛西誉仁
出演:永瀬匡/荒井敦史/中西晶/堀井新太/成田瑛基/木村祐一/佐藤二朗/平田満/南果歩
2015年/日本
「優秀」な不良の生き様について
画面に「ドン・キホーテ」や「和民」の看板、あるいは『ホットロード』(三木孝浩監督 2014年)の映画のポスターが映っているからといって誤解をしてはいけない。例えば、主人公の板谷コーイチの母親の良子が息子に差し出す一万円札は福沢諭吉ではなく聖徳太子なのであるから1984年以前の話で、つまり本作は高橋ヒロシ原作の『クローズ』よりも、きうちかずひろ原作の『ビー・バップ・ハイスクール』に近いといえるのであるが、それでも板谷たちは大学付属の高校に通っているのだから、少なくとも「聖徳太子」を「せいとくたこ」とは読まないほどに頭は良いのである。
その頭の良さはコーイチに「獄門」にもヤクザにも属さない生き方を選ばせる。暴力描写ばかりであるが、個人的には『王妃の館』(2015年)よりも本作の方が橋本一監督作品としてよくできているように思う。つまりコメディーよりもバイオレンス作品の方が性に合っているのではないだろうか。