MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『恋する・ヴァンパイア』

2015-05-08 00:38:44 | goo映画レビュー

原題:『恋するヴァンパイア』
監督:鈴木舞
脚本:鈴木舞
撮影:梅根秀平
出演:桐谷美玲/戸塚祥太/三戸なつめ/田辺誠一/大塚寧々/柄本明
2015年/日本

「最高の素材」が全く活かされない作品について

 吸血鬼を主人公とした映画は数々観てきており、ほとんどそれなりに仕上がっており「外れ」というようなことはなかったが、吸血鬼映画でこれほど出来が悪い作品はないと思う。何が悪いのか具体的に指摘してみるならば、桐谷美玲が演じるキイラの相手役の哲を演じている戸塚祥太に問題があるように見える。ヴァンパイアのキイラが苦手としているニンニクを入れたガーリックチャーハンを作った際に、その匂いで気を失って倒れるキイラに何故か戸塚の視線が追わないという細かい話はともかく、力彦とまりあと共にキイラを救出に行った哲がヴァンパイアと格闘している時に、何故か一緒に行っていた力彦とまりあが姿を見せて助けることもなく、ラストで記憶を失くした哲のバンドがライブをしている会場にキイラが駆け付けた後に、観客を置き去りにして哲がキイラの後を追いかけてくるなど演出が荒いのである。
 しかし一番不可解なのはわざわざ韓国や台湾や香港から俳優をキャスティングしているところで、例えば『僕の彼女はサイボーグ』(クァク・ジェヨン監督 2008年)のようなものはあるが、私が想像するのは実は戸塚祥太の演技に問題があり、それをごまかすために外国人をキャスティングしたのではないだろうか。私は最初戸塚もアジアのどこかの国の俳優かと思って観ていたくらいだから。いずれにしてもヴァンパイアとして最高の素材であるはずの桐谷美玲が全く活かされていないために桐谷の無駄遣いだと思う。
 ここまで書いて以下のような文章を目にした。「今回がつか(こうへい)作品3作目(『広島に原爆を落とす日』)の主演となった戸塚祥太さんの台詞回しは見事であった。白系ロシアと日本の混血であるがゆえに不遇を強いられた主人公の悲痛な叫びを聞いているうちに、隣の母娘も、背後に座っていた男性も、そして自分自身もすすり泣いていた。」(「ブックマーク」篠田尚子 毎日新聞夕刊 2015.4.27)
 この文章を信じるならば演出に問題があったのかもしれない。


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