原題:『王妃の館』
監督:橋本一
脚本:谷口純一郎/国井桂
撮影:会田正裕
出演:水谷豊/田中麗奈/吹石一恵/緒形直人/安達祐実/石橋蓮司/安田成美/石丸幹二
2015年/日本
結局、発音の良し悪しで決まる作品の出来について
一体どのような観点から本作を観ればいいのか全く分からなかった。「王妃の館」という高級ホテルの昼と夜のダブルブッキングを巡るドタバタコメディーとして面白いとは思えず、そもそも何故パリの高級ホテルが日本の小さな旅行会社の倒産回避に協力するのかそこからしてよく分からない。
あるいは本作はルイ14世の後継を巡る斬新な解釈なのかとも思ったが、本作に登場するディアナという愛妾が実際に誰を指しているのか分からず、その息子であるプティ・ルイも誰なのか分からない。何よりも「運命や血にあらがえ」というルイ14世のプティ・ルイに対するメッセージが納得できない。運命にあらがうこと自体が運命に含まれていたとするならば、運命の思うがままではないだろうか。
それでも「現代劇」と「史劇」がリンクするのであるならばまだ楽しめる要素があったと思うが、全く交錯することもなく、結果的に本作にはパリの観光旅行ガイド以上のものを見いだせなかった。ちなみに北白川右京は最後に「シャトー・ドゥ・ラ・レーヌ(Château de la Reine)」と言っているのであるが、天才小説家と呼ばれている割には終始フランス語の発音が下手なのも気になり、そうなると右京の奇抜な衣装や日本語によるフランス史の描かれ方など全てが学芸会のように見えてくる。