先日、買い物ついでに立ち寄った所が「金刀比羅(コトヒラ)神社」だった。いかにも観光地らしからぬ雰囲気ではあったが、境内は清楚に清掃され、建物も石造物も丹精込めた心意気を感じた。
石段を登る前には金属製の灯篭があってこれもなかなかなかなか手が込んでいる。集落あげて金銭面でも投資してきたのを感じさせる。観光地でも名所旧跡でもない清貧な庶民の姿が浮かんでくる。
こじんまりした拝殿らしき建物も端然と夕陽を浴びている。しばらくその清楚なたたずまいに身を置く。神道の本当の心はこういうところにこそあるような気がする。観光化されるとどうしても世俗化が目に余る。
拝殿の扁額には「金刀比羅神社」と彫られていた。ここは浜松市浜北区だが、本宮は香川県琴平町にある。いわゆる、「こんぴらさん」として江戸中期以降爆発的な人気があった。「金刀比羅」のルーツは、インドのガンジス川に住むワニを神格化した「クンビーラ」にある。したがって、海の神・航海の安全祈願をはじめ、農業・病気平癒の神として一世を風靡した。
しかし、それが明治の廃仏毀釈で山岳仏教的な部分が排除され、「金刀比羅宮」が「神社」に変更されてしまった。それでも、全国に600社もあるほどの一大勢力を堅持している。そんな変遷に関係なくここの静謐な空気は農村地帯の伝統を保持している。まわりは、みかん・柿の一大産地にもなってオイラも利用させてもらっている。
場所的には車が通過するだけで歩いている人はなかなか見られない。まわりも店らしき建物もないし、車を止めるスペースもない。それがまた、品格を増幅させているのかもしれない。これこそ、本当の穴場なのではないかとゴミ一つない境内で満悦させていただいた。