知って得する!トリビアの泉
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 〈その昔この広い北海道は、私たちの先祖の自由の天地でありました〉。85年前に初版が出た『アイヌ神謡集』の序は、そう始まる。編訳者の知里(ちり)幸恵(ゆきえ)は自分たちを「亡(ほろ)びゆくもの」と呼び、文化の一端でも残そうと病身にむち打った。

 彼女は母語と和語を自在に操る天才少女だった。見いだし、導いたのは言語学者の金田一京助だ。南の文明に脅かされる同胞(ウタリ)が「進みゆく世と歩をならべる日」を夢に見て、幸恵は19歳で逝く。本は間に合わなかった。

 アイヌを列島北部の先住民族と認める国会決議が、きのう全会一致で採択された。〈多数のアイヌの人々が、法的には等しく国民でありながらも差別され、貧窮を余儀なくされた〉。その権利を守る政策をさらに進めるよう、政府に求めている。

 つい11年前まで、アイヌを旧土人と呼ぶ法律があった。土着の史実を認めていたも同じだ。先住民族の権利を尊ぶ国際的な流れにならえば、「歩をならべる」べきは世の中の方で、決議もその一歩となる。

 異なる文化や習慣が出会うことで、社会は厚みを増す。反対に「単一民族」の虚構は、妙な思い上がりに化けかねない。すべては多様性を認め合うことから始まる。

 〈銀の滴(しずく)降る降るまわりに、金の滴降る降るまわりに〉。フクロウの神(カムイ)は、そう歌いながら飛ぶ。「神謡集」冒頭の一編だ。神は金持ちの子らが放つ金の矢をよけ、貧しい子の木の矢にわざと射られる。大自然と折り合い、漁猟や耕作にいそしむ心優しき民。幸恵が伝えようとした、先住民族の生活や精神に学びたい。



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