健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

紅娘子

2012年10月30日 | 健康
○紅娘子(こうじょうし)

 中国南部、インド、マレーシアなどに分布するセミ科のハグロゼミ(Huechys sanguinea)の乾燥した全虫を用いる。紅娘子は神農本草経に収載されている樗鶏としばしば混同されているが、現在では樗鶏は全く別の昆虫で、ハゴロモ科のシタベニハゴロモ(Lycorma delicatula)と考えられている。

 ハグロゼミは体長1.5~2cmくらい、黒と赤の二色からなるチッチゼミに類する小型のセミである。このセミは皮膚を刺激する毒液を分泌するため、採取の時には手袋やマスクをつけて行う。成分としてはカンタリジンを含むという報告もあるが、不詳である。肢や翅を除いた後、米や小麦などと一緒に黄色くなるまで炒り、取り出してから粉末にして用いる。

 漢方では攻毒・活血化瘀の効能があり、内服で無月経や瘀血、狂犬病、腰痛などに用いる。またに外用したり、発疱薬として皮膚病に用いる。

香ジュ

2012年10月29日 | 健康
香薷(こうじゅ)

 日本をはじめアジアの温帯に広く分布するシソ科の一年草ナギナタコウジュ(Elsholtzia ciliata)の開花期の全草を用いる。

 中国では中国、朝鮮半島、ウスリー地方に分布する同属植物の海州香(E.splendens)を用いる。日本産や韓国産はおもにナギナタコウジュであるが、中国でもさまざまなシソ科の植物が香薷として流通している。江西省に多く産する良質の香薷はとくに江香薷といわれる。

 全草には精油成分としてエルショルチジオール、チモール、カルバクロールなどが含まれ、葉や茎を揉むと強い芳香がある。漢方では解暑・化湿・利水消腫の効能があり、夏の発熱や頭痛、悪寒、腹痛、嘔吐、下痢、浮腫などに用いる。

 
 香薷は夏の解肌薬として有名で、古くから「夏に香薷を用いるは、冬に麻黄を用いるがごとし」といわれている。夏の寝冷えや冷たいもののをとりすぎて起こる悪寒、発熱、頭痛、下痢などに厚朴や白扁豆と配合して用いる(香薷飲)。浮腫や尿量減少などには単独あるいは白朮と配合して用いる(薷朮丸)。

 通常、解表に用いるときは煎じる時間を短くし、発汗が多いときには用いない。利水に用いるとは長く煎じるか、丸薬として服用する。また熱服すると嘔吐しやすいので冷服するほうがいい。この他、香薷の煎液は口臭を除く含嗽薬としても用いられる。

ごう士蟆

2012年10月24日 | 健康
○唅士蟆(ごうしま)

 中国の寒い地方に生息するアカガエル科の中国林蛙(Rana chensinensis)、黒竜江林蛙(R.amurensis)の内臓を除いたものを乾燥して用いる。雌の輪卵管を乾燥したものを唅蟆油という。ちなみに唅蟆油は古代中国の八大珍味の一つとされている。

 中国林蛙や黒竜江林蛙は体長5cmくらいのトノサマガエルによく似たカエルである。唅士蟆というのは満州語であり、黒竜江林蛙は黒竜江省の松花江一体の山林に生息している、比較的寒さに強いため雪唅とも呼ばれ、食用にも用いられる。

 中国林蛙にはステロールの一種であるラノールが含まれる。漢方では止咳・滋養の効能があり、虚労咳嗽に用いる。唅士蟆の薬材は長さ2cmほど折り重なった塊で、黄白色で脂肪のような光沢がある。大部分はタンパク質で、脂肪は4%前後にすぎず、水で戻すと10~15倍に膨張する。これを民間では強壮・強精薬として病後や産後、結核、神経衰弱などに用いている。

 日本でも江戸時代から戦前まで、アカガエルの生や乾燥したもの、丸薬(赤蛙丸)にしたものを小児の疳の虫の妙薬として街中で売り歩いていた姿がみられたという。

光慈姑

2012年10月23日 | 健康
○光慈姑(こうじこ)

 本州の福島県以南、四国、九州、朝鮮半島、中国大陸に分布するユリ科の多年草アマナ(Amana edulis)の鱗茎を用いる。チューリップと近縁の野生種であり、鱗茎は古くから食用にされ、食べると甘いためアマナ(甘菜)の名がある。

 生薬名を山慈姑ともいうが、ラン科のサイハイランの鱗茎を基原とする山慈姑に対してとくに光慈姑という。鱗茎にはカタクリに類似した良質のデンプンが含まれる。

 中国では軟堅散結の効能があるとして、咽頭腫痛や瘰癧(頸部リンパ腺腫)、腫れ物などに用いる。日本の民間では煎じて焼酎に漬けたアマナ酒を滋養・強壮に用いている。また葉を腫れ物に外用する。

紅景天

2012年10月22日 | 健康
紅景天(こうけいてん)

 中国のチベット自治区、四川、青梅、甘肅、雲南省やロシアのシベリアの海抜2000~5000mの高地に分布するベンケイソウ科の多年生植物、紅景天(Rhodiola sacra)などの全草を用いる。

 ロディオラ属はヨーロッパには200種以上、中国には40種以上の多くの種類がある高山植物であり、中国では聖地紅景天(R.sacra)のほかにも、高山紅景天(R.sachalinensis)、大花紅景天(R.crenulata)玫瑰紅景天(R.rosea)なども薬草として利用されている。とくに玫瑰紅景天は、ロディオラ・ロゼアとして、ロシアや北米ではよく知られている。8世紀頃のチベット医学経典「四部医典」や「晶珠本草」の中には、紅景天の効能として滋養強壮、養肺清熱、止血解毒、滋補元気などの記述がある。

 紅景天には、配糖体のクマリン類、必須アミノ酸類、ビタミン類などの栄養成分が含まれ、抗酸化、血糖値上昇抑制、免疫力向上、抗ウイルス、強心作用などが報告され、老化防止や疲労回復、糖尿病、ウイルス感染症、肝臓病、癌などに対する効果が期待されている。

 そのほか、赤血球の酸素の取り込みを高め、高山病に効果があることでよく知られている。高山病の予防薬といわれている高原安や、紅雪冬夏などに配合されている。

高貴薬

2012年10月18日 | 健康
○高貴薬(こうきやく)

 高貴薬とは非常に高価であり、容易に手に入りにくい薬物のことである。今日、ワシントン条約で規制されている野生動物からの生薬も多く、今後は代用品の開発を検討することも必要であろう。またこれらの生薬には贋偽品がしばしば出回り、鑑定も容易ではない。

 効能に関して、科学的な根拠の乏しいものもあり、希少価値に対する過大評価もあるように考えられる。中国四大貴薬材と呼ばれている高貴薬は犀角・牛黄・羚羊角・麝香である。高貴薬として以下のようなものがある。

一角:ウニコルンの歯牙
海馬:タツノオトシゴ
牛黄:ウシの胆石
麝香:ジャコウジカの分泌腺
冬虫夏草:昆虫の幼虫に寄生した菌核
鹿茸:鹿の幼角
海狗腎:オットセイの陰茎と睾丸
海竜:ヨウジウオ
犀角:サイの角
蟾酥:シナヒキガエルの分泌物
熊胆:クマの胆嚢
羚羊角:サイガカモシカの頭角

合歓皮

2012年10月17日 | 健康
合歓皮(ごうかんひ)

 日本各地、中国、東南アジアなどに広く分布するマメ科の落葉高木ネムノキ(Albizzia julibrissin)の樹皮を用いる。花や花蕾は合歓花、合歓米という。

 かつて日本ではニシキギ科のマユミの樹皮が代用されたこともある。暗くなると眠るように葉と葉を重ねて閉じることから、日本ではネムノキ、中国では合歓樹あるいは夜合樹と呼ばれている。樹皮にはサポニンやタンニンが含まれ、サポニンのアルビトシンには子宮収縮作用の報告がある。

 漢方では疏肝・安神・止痛の効能があり、不安感やうつ状態、不眠、腫れ物、打撲傷などに用いる。不眠や心煩、動悸、めまいなどに夜交藤仙鶴草などと配合する(養血安神片)。打撲や骨折などによる腫張や疼痛に当帰・紅花などと配合する。また膿性痰の出る慢性気管支炎などに単独あるいは白蘞や十薬などと配合する。

 日本の民間療法では、腫れ物や打撲傷、関節痛に合歓皮の煎液で患部を洗ったり、浴湯料として使用する。また合歓皮の黒焼きと黄柏末とを酢で練り合わせて患部に冷湿布する方法もある。また江戸時代から伝わる「久保田の速康散」というトゲ抜きの内服薬は合歓皮とニシキギの枝を黒焼きにしたものである。なお合歓花にも安神作用があり、食欲不振や不眠症の治療に用いる(安神丸)。

蛤カイ

2012年10月16日 | 健康
蛤蚧(ごうかい)

 中国南部の広西省やベトナム、タイなどに生息する爬虫類のヤモリ科オオヤモリ(Gekko gecko)を用いる。体長は20cm余りもある大きなヤモリで、山間の岩場や樹木の穴、壁の上などに生息し、夜行性でおもに昆虫などを捕食している。オオヤモリを蛤蚧というが、雄を蛤、雌を蚧という謂れがある。

 薬材としてはオオヤモリの内臓を除き、四肢を開いた後あぶって乾燥し、二匹を対にして竹に固定したものが市場に出ている。尾の部分の薬効が優れているとされ、尾の欠けたものは劣品とされる。通常、用いるときには頭と足や鱗片を除く、あるいは尾だけを用いる。

 漢方では補気・補陽・止咳の効能があり、虚労や喘息、肺結核、インポテンツ、頻尿、糖尿病などに用いる。滋養・強壮薬として参茸丸至宝三鞭丸に蛤蚧が配合されている。また、とくに血痰のみられる肺結核の常用薬として知られ、人参・杏仁・貝母などと配合する(人参蛤蚧散)。薬酒として有名な蛤蚧酒は、新鮮な蛤蚧の内臓を除き、雄雌あわせて丸ごと蒸留酒に浸してつくったものである。

紅花

2012年10月15日 | 健康
紅花(こうか)

 エジプト原産のキク科の二年草ベニバナ(Carthamus tinctorius)の管状花の乾燥したものを用いる。薬用としては開花初期の黄色の多いときの花を、そのまま風乾したものを用いる。

 古くから南ヨーロッパ、中近東、インド、中国などで栽培され、日本には奈良時代に渡来した。古名のクレノアイの語源は呉(高麗)の国から伝わった藍ということを表し、韓呉藍(からくれない)とも呼ばれていた。古くから口紅や染料などに用いられていたために臙脂花、紅藍花などともいわれ、また黄から赤に変化した後に摘み取るので末摘花とも呼ばれた。江戸時代には最上地方で多く栽培され最上紅として有名であった。現在も山形県の尾花沢周辺で広く栽培されている。

 ベニバナには紅色色素のカルタミンと黄色色素のサフロールイエローが一緒に含まれている。赤くなった花弁を集めて水に漬けると、水溶性であるサフロールイエローが流れ出るが、この色素を除いた花弁をよく揉み、しばらく発酵させて臼で搗いて餅紅を作る。この餅紅に含まれるカルタミンをアルカリ性の灰汁で溶かし出し、酸性の梅酢で中和すると色素の結晶が得られる。現在でも食品の着色料や口紅などの原料に使用されている。またベニバナの種子からとる油はサフラワー油(ベニバナ油)と呼ばれ、塗料、石鹸をはじめサラダ油やマーガリンの原料として用いられる。

 ベニバナの成分には色素のカルタミン、サフロールイエローのほか、フラボノイドのカルタミジン、ネオカルタミンなどが含まれ、煎液には血圧降下作用や免疫賦活作用、抗炎症作用などが知られている。

 漢方では活血・通経・虚瘀・止痛の効能があり、月経異常や腹部のしこり、打撲傷、脳血管障害、瘀血による痛みなどに用いる。かつて日本漢方では大黄・甘草・黄連と配合した甘連湯を「まくり」と称して胎毒の治療に用いていた。なお蕃紅花というのはサフランのことである。

香櫞

2012年10月12日 | 健康
○香櫞(こうえん)

 インド原産のミカン科の常緑低木シトロン、すなわちマルブッシュカン(Citrus medica)の成熟果実を用いる。シトロンは直径が10cm以上の大果で、熟すと橙黄色になり、よい香りがする。

 中国ではシトロンを枸櫞というが、日本ではレモンの果皮を枸櫞皮という。またブッシュカン(仏手柑)はシトロンの変種のひとつである。市場の薬材はこの果実を厚さ2~3mm輪切りにして乾燥したものである。

 シトロンの果実にはヘスペリジンクエン酸、リンゴ酸、d-リモネンなどが含まれている。漢方では疎肝・理気・化痰の効能があり、胃痛、腹満感、咳嗽、食欲不振、嘔吐などに用いる。

 仏手柑と比較すると香りや効力はやや劣るが、化痰の作用は強い。おもにストレス(肝欝)による腹満感や胸の痞寒感、脇腹の痛み、食欲不振、嘔吐などに陳皮・香附子などと配合して用いる。また痰が絡んですっきりしない咳嗽には半夏・茯苓・生姜などと配合する。