健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

麝香

2013年03月30日 | 健康
○麝香(じゃこう)

 中国東北部からチベット、ヒマラヤにかけて生息しているシカ科の動物ジャコウジカ(Moschus moschiferus)の雄のジャコウ腺分泌物を用いる。ジャコウジカはシカを小型化したような動物で雌雄ともに角はなく、上顎の犬歯が下に伸びて牙のようになっている。岩石の多い高山地帯に生息し、夜行性で単独あるいは一対で生活する。

 オスの陰茎と臍の間に外皮と密着して袋状のポッド(麝囊)と呼ばれるは器官があり、その中に含まれる分泌物が麝香(ムスク)である。発情期の雄は雌を誘うためにこのムスクを少量ずつ排出する。

 ジャコウジカの麝という字は鹿と「鼻を突き刺す匂い」をあわせたものであるが、ムスクはそのままでは糞尿以上に強烈な悪臭が鼻を刺す。ところが、これを千分の一以下に薄めると芳香を放つ。中国では古くから薬用にしているが、ヨーロッパやアラビア人が愛好している。健在でもシャネルの5番など高級な香水の原料になっている。

 かつては捕獲したジャコウジカを殺してポッドごと摘出したいたが、絶滅の恐れがあるとして現在では生きたままポッドから分泌物のみを採取している。分泌物は新鮮なときは黒褐色の軟膏状であるが、乾燥すると黄褐色や赤紫色の粉末となる。とくに黒褐色の顆粒状のものを当門子という。

 麝香は非常に高価な薬材であり、現在、中国の四川省などでジャコウジカの人工飼育が行われている。同様の動物性の香料としてジャコウネコの霊猫香があり、同じく薬用にもされる。麝香の芳香主成分はムスコンであり、また少量のノルムスコンや男性ホルモンが含まれ、薬理的に中枢神経刺激、強心、呼吸増加、降圧、抗菌・抗炎症作用、性ホルモン作用などが報告されている。

 漢方では開竅・活血・催産の効能があり、おもに芳香開竅薬として高熱時の意識障害や脳卒中、痙攣発作、危急の症状などに用いる。そのほか狭心痛、腹痛、分娩促進、腫れ物などに用いる。

 脳卒中や高熱時の意識障害には牛黄・竜脳などと配合する(至宝丹)、興奮状態やひきつけ、高熱に伴う精神不安などには牛黄・羚羊角などと配合する(牛黄清心丸)。難産や後産が遅れたときには肉桂と粉末にして服用する(香桂散)。咽頭の腫痛や癰疔などの皮膚化膿症に牛黄・蟾酥などと配合する(六神丸)。日本でも気つけ薬として知られ、動悸や胸痛に用いる六神丸救心、小児の発熱や痙攣に用いる宇津救命丸や樋屋奇応丸などの家庭薬にも配合されている。ただし子宮に対する興奮作用があり、妊婦は服用しないほうがよい。

鷓鴣菜

2013年03月29日 | 健康
○鷓鴣菜(しゃこさい)

 温暖な地域の沿岸や河口付近に分布する海藻コノハノリ科のセイヨウアヤギヌ(Caloglossa leprieurii)の全藻を用いる。かつて鷓鴣菜を日本の駆虫薬である海人草の別名とする説もあったが、海人草は紅藻類のフジマツモ科のマクリ(Digenea simplex)のことである。ちなみに鷓鴣とは中国南部に生息する鶉に似た鳥のことである。

 アヤギヌは1~4cmくらいの紫色の偏平な海藻で岩や防波堤に付着している。鷓鴣菜は海人草と同様にカイニン酸を含み、鷓鴣菜の煎液には回虫の駆虫作用が認められる。内服による副作用はほとんどないが、とき下痢、悪心、めまいがみられることがある。

 漢方でも駆虫の効能があり、回虫や蟯虫の駆虫薬として大黄・甘草と配合して用いる(三味鷓鴣菜湯)。また南西諸島から台湾、フジマツモ科のハナヤナギ(Chondria armata)を南西諸島ではドウモイと呼んで、古くから駆虫薬として用いていた。その有効成分はドウモイ酸と呼ばれ、カイニン酸より強力といわれる。

芍薬

2013年03月28日 | 健康
○芍薬(しゃくやく)

 白芍は外皮を除いて湯通ししたもの、赤芍は中国東北部の野生種の皮を去らずに乾燥したものを使用する。現在、四川省で栽培された芍薬の皮を去らずに乾燥させたものが日本薬局方のシャクヤクに適合することから、日本で赤芍として使用されている。

 中国北部原産のボタン科の多年草シャクヤク(Paeonia lactiflora)の根を用いる。日本には、奈良時代に渡来したといわれ、室町時代には栽培の記録がある。現在では奈良県や北海道で栽培されている。シャクヤクの属名をペオニアというが、これはギリシャ神話の医神、パイオンに由来するもので、西洋でも古くから薬用植物として知られていた。

 同属植物にボタン(P.suffruticosa)がある。ボタンは落葉低木であるのに対し、シャクヤクは多年草であり、冬にはその地上部が枯れてしまう。シャクヤクは初夏に大きな花を咲かせるためよく観賞用として栽培されているが、薬用にするときには蕾を全部摘み取ってしまい、植え付けから4~5年栽培した後の肥大した根を用いる。日本の芍薬は「第13改正日本薬局方」では乾燥重量でペオニフロリン2%以上を含むものを規定されている。

 芍薬は最古の本草書「神農本草経」の中品に収載され、「シャクヤク、味苦、平、邪気腹痛を主り、血痺を除き、堅積、寒熱、疝瘕を破り、痛みを止め、小便を利し、気を益す」とあり、赤白の区別はされていなかったが、宋代の頃から区別されるようになった。今日、中国では芍薬は赤芍と白芍に区別され、通常、古くは白い花のものを白芍、赤い花のものを赤尺といっていたこともある。

 現在、日本では赤尺は日本薬局方に適合しないことが多いため、白芍のみを芍薬として用いている。また日本では皮を去って生干しした芍薬が用いられているが、中国では皮を去った後、湯通ししてから乾燥させた芍薬(真芍)が白芍として流通している。中国医学において白芍と赤尺の効能は異なり、白芍はおもに補血・止痛として、赤芍はおもに活血・清熱薬として用いる。

赤石脂

2013年03月27日 | 健康
○赤石脂(しゃくせきし)

 中国の各地で採掘される赤褐色ないしは淡紅色のケイ酸塩類の粘土状鉱物ハロイサイト(Halloysite)の一種を用いる。神農本草経には五色石脂として収載されているが、古来よりおもに赤石脂と白石脂が薬用にされてきた。

 赤石脂の主成分は含水ケイ酸アルミニウム(Al2O3・2SiO2・4H2O:カオリナイト)であるが、酸化第二鉄(Fe2O3)を多く含むため赤色を帯びている。また脂のような滑らかさや光沢があるため赤石脂の名がある。

 鉄分のほかにもマグネシウム、カルシウム、マンガンなども少量含まれている。アルミニウム類薬物は胃腸ではほとんど吸収されず、内服では胃腸の局所作用が種であるといわれる。一般に収斂・吸着作用が強いとされ、下痢や出血、潰瘍などに効果がある。

 漢方では止瀉・止血・生肌の効能があり、慢性の下痢や血便、脱肛、遺精、子宮出血、皮膚潰瘍などに用いる。遷延化した細菌性腸炎などによる下痢、粘血便、膿便、腹痛に粳米・乾姜などと配合する(桃花湯)。不性器出血や帯下などに代赭石・五霊脂などと配合する(震霊丹)。

 内蔵下垂や脱肛などには黄耆・柴胡などと配合する(提肛散)。熱病に伴う痙攣やひきつけ、半身不随、顔面神経麻痺などに竜骨・牡蠣などと配合する(風引湯)。また外傷や皮膚潰瘍にも外用する。

柿餅

2013年03月26日 | 健康
○柿餅(しへい)

 東アジアの温帯に分布するカキノキ科の常緑高木カキの果実を加工して餅状にしたものを用いる。英語でもkakiというが、奈良時代に中国から渡来したという説が有力である。

 樹のままで渋みが抜ける甘柿と自然には脱渋しない渋柿とがあり、前者はお温暖地に多く、後者は寒冷地でも栽培できる。おもに渋柿の成熟した果実の外皮をむき、1ヶ月間、日や夜露にあてて乾燥し、さらに1ヶ月は室内でムシロの中に放置すると柿餅ができる。そのうち、日干ししたものを白柿、火で薫じたものを烏柿という。

 柿の果実は糖類、ペクチン、カロテノイド、ビタミンC、タンニン、酵素類が含まれ、栄養価は高い。カキの渋みはシブオールを主成分とするタンニンのためであるが、熟していくにつれタンニン細胞が凝固、収縮して褐色班に変化し、タンニンが不溶性となって渋味がなくなる。熟した柿には止咳・止渇の効能があり、二日酔いなどの酒毒を解する作用がある。

 漢方では潤肺・止血・止瀉の効能があり、咳嗽や血痰、喀血、痔、下痢などに用いる。なま生のカキは冷やす性質が強く、食べ過ぎると腹痛や便秘の原因となる。

梓白皮

2013年03月25日 | 健康
○梓白皮(しはくし)

 ノウゼンカズラ科の落葉高木キササゲ(Caralpa ovata)の根皮や樹皮の周皮を除いたものを用いる。また果実を梓実、日本ではキササゲという。

 キササゲは中国中南部原産の落葉高木で10m以上にも達するため俗に雷の木ともいわれている。秋には葉が落ちても長さ30cmくらいの細長い果実をつけている。日本では梓をアズサというが、アズサはカバノキ科の落葉高木のことである。いずれの材も弓(梓弓)や版木に利用されたといわれる。

 日本ではおもにキササゲの果実を利用するが、中国では専ら根皮や樹皮を用いる。樹皮・根皮の成分にはフェルラ酸やイソフェルラ酸が含まれる。漢方では清熱解毒・止痒の効能があり、発熱や黄疸、皮膚掻痒症に用いる。

 湿熱による黄疸には生の梓白皮を麻黄・赤小豆などと配合して用いる(麻黄連軺赤小豆湯)。また湿疹などの皮膚疾患には湿布や浴剤など外用薬として用いる。

地膚子

2013年03月22日 | 健康
○地膚子(じふし)

 ユーラシア大陸に広く分布するアカザ科の一年草ホウキギ(Kochia scoparia)の成熟果実を用いる。ホウキギ(箒木)とは茎全体を乾燥して束ね、草ぼうきに用いたことに基づく名である。

 ハハキギとも呼ばれ、近年は園芸植物として属名のコキアという名でも呼ばれている。秋田や山形地方では農家で栽培しており、若芽や若葉、種子を食用にしている。秋に小さ目の実を集めて30分ほど煮た後に水に浸して果皮を除いたもの(種子)をトンブリと称し、大根おろしやとろろを加えて醤油をかけて食べる習慣がある。

 果実は直径2mmくらいの偏平な球形である。種子は含油量が多く、成分に強壮作用のあるサポニンが含まれているといわれている。漢方では清熱燥湿・通淋の効能があり、排尿障害や膀胱炎、帯下、湿疹などに用いる。また他の利尿薬の作用を強めるため「響導(道案内)」薬ともいわれている。

 膀胱炎や尿道炎には猪苓・瞿麦などと配合し、湿疹や皮膚掻痒症などの皮膚病には黄柏・白蘇皮などと配合して用いる。また皮膚疾患には煎液で洗う方法もある。日本の民間では利尿薬のほか強壮薬としても有名で、脚気や下痢などに用いる。

自然銅

2013年03月21日 | 健康
○自然銅(じねんどう)

 漢方生薬でいう自然銅とは硫化鉄鉱石である黄鉄鉱(Pyrite)のことである。鉱物学では自然に産する銅の単体を自然銅というが、生薬の自然銅にはほとんど銅は含まれていない。

 自然銅は比較的ありふれた鉱物であるが、真鍮色をしているため黄銅鉱や金などと間違えられやすい。黄鉄鉱は結晶しやすいが、その形はさまざまで典型的なものは立方体か五角正十二面体である。

 組成は二硫化鉄(FeS2)のほか、微量の銅、ニッケル、ヒ素、アンチモンなどを含むこともある。動物実験では骨折癒合を促進する作用が認められている。漢方では活血・止痛・接骨の効能があり、打撲傷、骨折、瘀血、疼痛、腫瘤などに用いる。

 一般に焼いて硫黄分を除いて薬用にする。打撲や骨折による腫痛には自然銅を強火で焼いた後、乳香・没薬・当帰などと配合する(自然銅散)。骨折や捻挫などの外傷には骨砕補続断などと配合する(接骨Ⅱ号方)。

柿蒂

2013年03月20日 | 健康
○柿蒂(してい)

 東アジアの温帯に分布するカキノキ科の落葉高木カキの宿存花萼を用いる。つまり成熟したカキのヘタを柿蒂という。生薬としては葉を柿葉、干し柿の表面の粉を柿霜、柿のしぶを柿漆という。

 ヘタにはオレアノール酸、ウルソール酸、ヘミセルロースが含まれる。柿蒂はしゃっくりをとめる特効薬として知られているが、成分のヘミセルロースが胃の中で固まって物理的にしゃっくりを止めるという説がある。

 漢方では降気・止嘔・止逆の効能があり、逆気を降ろす作用があるといわれ、しゃっくりや嘔吐、咳嗽などに用いる。しゃっくりには単独で、あるいは丁香や生姜などと配合して用いる(柿蒂湯・丁香柿蒂湯)。また民間では夜尿症に用いられる。

し藜子

2013年03月19日 | 健康
○蒺藜子(しつりし)

 世界各地の温帯から熱帯にかけて広く分布するハマビシ科の一年草ハマビシ(Tribulus terrestris)の果実を用いる。一般に海辺の砂浜に自生し、果実が菱の実に似ているためハマビシ(浜菱)の名がある。

 古来、蒺藜と呼ばれる生薬には蒺藜子とは別に潼蒺藜がある。潼蒺藜というのはマメ科のツルゲンゲの種子のことで、今日では沙苑子と呼ばれている。さらにアカザ科のハマアカザ(Atiplex sibirica)の果実のことを軟蒺藜というのに対し、ハマビシの果実は硬くて刺のある五角形をしているため、硬蒺藜とか刺蒺藜と呼ぶこともある。生薬には一般にハマビシの未成熟果実を用いる。

 ハマビシの果実にはケンフェロールなどのフラボノイド、種子にはハルミンなどのアルカロイドが含まれ、鎮痙作用、降圧作用、利尿作用が知られている。漢方では平肝・明目・止痒の効能があり、肝陽上亢に伴うめまいや頭暈、眼科疾患、皮膚搔痒感、腹痛などに用いる。またインドの民間では利尿薬として用いている。

 一方、ヨーロッパではハマビシ(トリビュラス)の全草が、古くから強壮薬、筋肉増強剤として利用されていた。トリビュラスに含まれているサポニンは脳下垂体から黄体ホルモンの分泌を刺激し、男性ではテストステロンの分泌を促進して精子の量や運動性を高めるとともに、性機能の低下を改善し、女性ではプロゲステロンの分泌を促進し、月経前緊張症や更年期障害などを緩和すると説明されている。テストステロンにはタンパク同化作用があり、最近でもスポーツ選手の筋肉増強に応用されている。