健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

山薬

2013年01月30日 | 健康
山薬(さんやく)

 本州以南、台湾、中国大陸に分布するヤマノイモ科のつる性多年草ヤマノイモ(Dioscorea japonica)または中国中南部原産のナガイモ(D.opposita)の根茎を用いる。

 一般に野生のものはヤマノイモまたは自然生といい、中国から渡来した栽培品種補をナガイモという。サトイモに対して自然に山に生えているのでヤマノイモ、栽培されていないので自然生という。

 ナガイモは中世に日本に伝わり、しばしば野生化している。肥大した根茎はまっすぐ棒状に地中直下に伸び、その芋の部分は担根体に相当し、茎の根の中間的な性質を持っている。また葉腋にできるムカゴは零余子という。現在、八百屋で市販されているトロロイモは一般にナガイモであり、またイチョウイモやツクネイモなど芋の形が異なる栽培品種も出回っている。

 ナガイモは古くは薯蕷といっていたが、唐の代宗の諱である預をさけて薯薬と呼ばれ、宋の英宗の諱である曙を改めて山薬といわれるようになった。また中国の河南省で産するものは集荷地の懐慶府にちなんで懐山薬または淮山薬と称されている。

 成分には多量のデンプンと粘液質のマンナンのほか、糖類やアミノ酸、コリン、アラントイン、グルコサミンが含まれる。漢方では脾胃や肺、腎を補う効能があり、下痢や咳嗽、糖尿病の治療、さらに滋養薬として胃腸虚弱や体力低下の改善に用いる。民間でもヤマノイモを焼酎に漬けた山薬酒が滋養薬として知られている。また零余子も滋養強壮薬として用いる。

山扁豆

2013年01月29日 | 健康
○山扁豆(さんへんず)

 沖縄県や世界の熱帯から亜熱帯にかけて分布するマメ科の一年草リュウキュウカワラケツメイ(Cassia mimosoides)の全草を山扁豆という。日本では日本各地に分布するマメ科のカワラケツメイ(C.nomame)の果実をつけた全草を山扁豆と称している。

 リュウキュウカワラケツメイはカワラケツメイとよく似た植物であるがね果実はカワラケツメイよりも細長い。山扁豆には清熱・解毒・利湿の効能があり、黄疸や下痢、浮腫、疳積などに用いる。外用として腫れ物やかぶれ、咬傷などに用いる。

 一方、カワラケツメイの全草を中国では水角という。この全草にはクリソファノール、エモジンなどのアントラキノン類やルテオリン、ビテキシンなどのフラボノール類が含まれ、利尿・緩下の作用がある。

 近年、カワラケツメイに含まれているポリフェノール(カシアノール)に脂肪分解酵素、膵リパーゼを阻害する作用が見出され、ダイエット効果が注目されている。日本の民間ではカワラケツメイの全草を刻んで煎じたものを弘法茶、浜茶、豆茶といい、便秘や浮腫、消化不良などに効果のある健康茶として利用している。また目ヤニや充血、疲れ目などに煎液を洗眼薬として用いる。中国では水角に明目・利水の効能があるとして、夜盲症、片頭痛、浮腫などに用いると記載されている。

山菜

2013年01月28日 | 健康
○山菜(さんな)

 インド、マレー半島原産で中国の南部に産するショウガ科の多年草バンウコン(Kaempferia galanga)の根茎を用いる。日本には江戸時代に渡来して、観賞用に栽培されている。日本のバンウコンは蕃欝金と書き、南蛮から渡来したウコン(欝金)という意味である。同じショウガ科の日本のサンナ(Hedychium spicatum)という植物があるが、これは別の植物である。

 バンウコンは東南アジアで広く栽培され、地下茎はカレー粉の原料などの香辛料、食用色素などに用いられている。また線香の薫香料としても利用されている。地下茎は塊状で芳香があり、辛味がある。

 根茎にはボルネオール、ケイアルデヒド、カンファン、ケンフェロールなどが含まれ、抗真菌作用や消炎作用が知られている。漢方では温裏・消食・止痛の効能があり、冷えによる腹痛や消化不良、歯痛の治療に用いる。

山茶花

2013年01月26日 | 健康
○山茶花(さんちゃか)

 本州、四国、九州、沖縄県、朝鮮半島や中国に分布するツバキ科の常緑高木ツバキ(Camellia japonica)などの花を用いる。一般に蕾がふくらんで花が咲こうとする直前に採取する。

 山茶花と書くと日本ではサザンかと読むが、中国語ではツバキのことであり、サザンカの漢名は茶梅と書く。また椿と書けば、中国語ではセンダン科のチャンチンのことを指す。

 ツバキの種子には35~45%の脂肪油やサポニンが含まれ、わが国特有の椿油として毛髪油、刀剣油、食用油、軟膏や軟膏基材に利用されている。花にはロイコシアニジンやタンニンのカメリインA、Bなどが含まれている。漢方では止血の効能があり、鼻血、下血、性器出血などに用いる。

酸棗仁

2013年01月25日 | 健康
○酸棗仁(さんそうにん)

 中国原産と推定されるクロウメモドキ科の落葉小高木、サネブトナツメ(Zizphus jujuba)の成熟種子を用いる。ナツメ(var.inermis)よりもすっぱいので酸棗といい、種子が大きいのでサネブトナツメという。

 サネブトナツメはナツメの母種で枝にトゲが多く、葉や果実はナツメよりも小さい。ナツメは果肉を大棗として用いるが、サネブトナツメは種子を酸棗仁として用いる。

 種子の成分にはベツリンやベツリン酸、サポニンのジュジュボシドA・Bなどが知られ、煎液には鎮静・催眠作用や鎮痛、抗痙攣作用、抗ストレス作用などが報告されている。漢方では肝を養い、心を寧んじ、精神を安定させ、汗を収斂する効能があり、古くから鎮静・安眠薬として用いている。

 酸棗仁の安眠作用は継続的な服用により次第に効果が発揮され、麻酔作用や中毒作用はない。一説によると炒して用いると不眠を治すが、生で用いると多眠を治すといわれており、吉益東洞は酸棗仁を不眠症とは逆の嗜眠症に用いて治療したという話もある。また発汗過多を抑制する作用もある。

山豆根

2013年01月24日 | 健康
○山豆根(さんずこん)

 中国南部に分布するマメ科の低木広豆根(Sophora subprostrata)の根を用いる。日本ではかつてマメ科のミヤマトベラ(Euchresta japonica)の根を山豆根として用いていたが、これは誤りである。また中国北部の地方ではツヅラフジ科のコウモノカズラ(Menispermum dauricum)の根を山豆根あるいは北豆根と呼んでいる。

 広豆根の成分にはマトリン、アナギリンなどのアルカロイド、ソフォラジンなどのフラボノイド、そのほかシトステロール、ルペオールなどが含まれている。ソフォラジンを基本として開発されたのが胃粘膜保護作用のあるソフォルコン(ソロン)である。

 漢方では清熱解毒・利咽の効能があり、咽頭の腫痛、歯肉の腫痛、黄疸、痔疾、腫れ物などに用いる。咽頭や歯肉が晴れて痛むときに単独であるいは射干・牛蒡子などと配合して用いる。梅毒などによる咽頭の腫痛には桔梗・土茯苓などと配合する(喉癬湯)。また口内炎や痔などの外用薬としても用いられる。近年、中国では抗癌薬として研究されており、肺癌・喉頭癌の初期治療に用いられている。

山椒

2013年01月23日 | 健康
○山椒(さんしょう)

 日本の北海道から九州、朝鮮半島の南部に分布するミカン科の常緑低木サンショウ(Zanthoxylum piperitum)およびアサクラザンショウ(Z.piperitum f.inerme)の果皮を用いる。種子は淑目という。中国では同属植物の果皮を花椒として用いるが、これを日本ではサンショウに代えて用いる。しかし、近年では中国産の花椒が、日本薬局方で規定されている山椒の代わりに利用されることもある。

 アサクラザンショウは兵庫県の朝倉で偶然発見されたサンショウの品種で、ほとんど刺がなく果実が大きいため日本各地で栽培されている。サンショウの木材は硬く、すりこぎに賞揚されている。サンショウは日本固有の香辛料で、春先の新芽や若い葉は「木の芽」、花は「花ざんしょう」、青い果実は「実ざんしょう」、熟した赤い果実は粉にして「粉ざんしょう」とさまざまに用いられている。

 果実は完熟すれば辛味が少なくなる。しかし未熟なときは辛味が強いが、乾燥しても種子が出ない。このため品質には採取時期が重要である。薬用には果柄や種子がよく除かれているものを用いる。また辛味成分は保存期間が長くなると減少するので注意を要する。

 果実には精油成分のリモネンやシトロネラール、辛味成分のサンショールやサンショウアミド、痙攣毒のキサントキシンなどが含まれる。キサントキシンは魚類に強い痙攣を起こすが、他の動物に対する毒性は弱い。辛味成分には殺虫作用や局所刺激作用のほか、健胃、整腸、利尿作用が認められている。山椒は一般薬にも芳香辛味性健胃薬や苦味チンキの原料として利用されている。

 漢方では温裏・止痛・駆虫の効能があり、冷えによる腹痛や下痢、回虫症などに用いる。また湿疹や掻痒症、ひび、あかぎれに煎液を外用する。漢方処方で蜀椒とあるのは中国では花椒を用いるが、日本では山椒に代えて用いている。山椒のほうが花椒よりも良質とされているが、現在では薬用や食用としてカホクザンショウ(花椒)やイヌザンショウ(Z.shinifolium)の果実が輸入されている。ちなみに打ち身や捻挫の外用薬として知られる楊柏散にはイヌザンショウの葉のついた枝を乾燥して粉末にしたものが配合されている。

山茱萸

2013年01月22日 | 健康
山茱萸(さんしゅゆ)

 中国や朝鮮半島に分布している落葉小木ミズキ科のサンシュユ(Cornus officinails)の果肉を用いる。この核には毒があるので、取り除いた果肉を用いる。

 日本には江戸時代に朝鮮から伝えられ、観賞用として庭園などに植えられている。早春に黄色い花が咲くためハルコガネバナという和名もあり、秋には真っ赤なグミに似た果実がなり、生食できる。

 成分にはイリドイド配糖体のモロニサイド、スウェロシド、ロガニン、ウルソール酸、タンニンなどが含まれ、山茱萸のエキスでは抗糖尿病作用や免疫賦活作用などが知られている。

 漢方では肝腎を補い、固精・止汗の効能があり、性機能低下などの強壮薬として、また足腰の痛みや眩暈、夜尿などの治療に用いる。民間では酒に漬けた山茱萸酒が滋養強壮の薬酒として知られている。なおミカン科の呉茱萸とは植物的には関係がない。

蚕沙

2013年01月21日 | 健康
○蚕沙(さんしゃ)

 カイコガ科のカイコ(Bombyx mori)の幼虫の糞の乾燥したものを用いる。ときに秋蚕(晩蚕)の糞が重用されたため晩蚕沙という名もある。

 2~3mmぐらいの青黒い顆粒状のもので、質は硬いが容易に溶け、砕くと青臭さがある。カイコの糞は薬用だけでなく、家畜の飼料や活性炭や樹脂、塗料、鉛筆の芯などにも応用され、かつては人口の砥石の原料としても利用された。

 糞の製粉にはヒスチジンやロイシン、リジンなどのアミノ酸、ビタミンA・B、尿酸、リン酸などが含まれている。漢方では去風湿・活血・止痛の効能があり、四肢の関節痛や麻痺、腹痛や下痢、皮膚掻痒症などに用いる。関節リウマチで関節が痛み、湿熱証の強いときには防已・薏苡仁などと配合する(宣痺湯)。また結膜炎などの炎症に外用薬として用いる。

三七

2013年01月19日 | 健康
○三七

 雲南省から広西省にかけての限られた地域に産するウコギ科の多年草サンシチニンジン(Panax notoginseng)の根を用いる。呼称にはいくつかあり、三七人参、あるいは田三七、田七などと呼ばれている。また非常に高貴な生薬なので金不換という名もある。

 田というは産地が広西省田陽、田東のためであり、三七というのは地上葉が3つの葉柄にそれぞれ7枚の葉がつくことによる。人参や竹節人参と同じウコギ課のよく類似した植物である。三七は本草綱目に初めて収載された比較的歴史の浅い生薬であるが、民間では古くから金瘡の要薬として用いられ、止血の神様ともいわれている。

 漢方では止血・化瘀・消腫・止痛の効能があり、外傷による出血や内出血、消化性潰瘍の出血や疼痛、性器出血などに用いる。用法としては煎じたり、粉末にした服用したり、患部に塗布する。近年では冠不全や急性・慢性肝炎の治療薬として注目されている。

 三七の配合された製薬としては、外傷による出血、疼痛に用いる雲南白薬、急性・慢性肝炎の治療薬として知られる片仔癀がある。ベトナム戦争時にはアメリカ兵の間でも雲南白薬が評判となり、世界中に知られるようになった。