健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

膠飴

2012年10月11日 | 健康
○膠飴(こうい)

 粳米または糯米を蒸したのち、麦芽のアミラーゼを用いてデンプンを分解し、糖化させて製した飴である。膠飴には軟らかいものと固形のものとがあり、軟らかいものは黄褐色、半透明の濃厚な水飴状であり、固形のものはこの水飴を攪拌し、空気と混和して凝固させたものである。味は甘く、特異な麦芽臭があり、一般に水飴状のものが良品とされている。

 成分にはマルトース(麦芽糖)やデキストリンなどが含まれる。麦芽糖はマルツエキスとして乳児の便秘薬に利用されている。漢方では健脾・止痛・止咳の効能があり、過労による胃腸障害、腹痛、咳嗽、吐血、口渇、咽痛、便秘などに用いる。

 とくに胃腸虚弱者によくみられる腹痛を緩和する。たとえば小建中湯、大建中湯、黄耆建中湯、当帰建中湯などの建中湯の処方に配合され、いずれも虚弱な体質を改善し、冷えなどによる腹痛を緩和する効果がある。また止咳薬として乾咳の症状に単独あるいは杏仁・百部などと併用する。

 ただし膠飴は非常に甘いため腹部膨満感をきたしやすく、多量に服用すると嘔吐することがあるので注意を要する。なお膠飴は他の生薬を煎じて滓を漉した後に溶かして服用する。

玄明粉

2012年10月10日 | 健康
○玄明粉(げんめいふん)

 芒硝を風化、乾燥させて得られる白色の粉末をいう。芒硝の主成分は含水硫酸ナトリウム(Na2SO4・10H2O)であるが、空気中で風化されると結晶水を失い無水硫酸ナトリウム(Na2So4)に変化する。これは玄明粉あるいは風化硝という。

 効能などはほとんど芒硝と同じである。華岡青洲は口内炎や咽頭の痛みに、竜脳・硼砂などと配合した氷硼散を口中剤として用いた。

拳柏

2012年10月09日 | 健康
○拳柏(けんぱく)

 日本各地および台湾、朝鮮半島、中国、インドなどに分布し、岩壁などに生えている常緑シダ植物イワヒバ科のイワヒバ(Selaginella tamariscina)の全草を用いる。岩場に生えて、針葉樹のヒバの葉に似ていることからイワヒバの名がある。

 イワヒバの茎は乾燥すると内側に巻き込み、湿度が上がるとともに戻る特徴がある。全草にはビスフラボンやオリゴサッカライドのトレハロースなどが含まれる。

 漢方では生では活血・去痰の効能があり、無月経や腹部腫瘤、打撲傷などに用いる。炒って巻柏炭とすれば止血の効能があり、吐血や下血、血尿、脱肛などに用いる。ちなみに中国では類縁植物のオニクラマゴケ(S.doederleinii)の全草を大葉菜(別名:石上柏)といい、絨毛上皮癌や咽頭癌などに対する抗癌作用の研究が行われている。

現之証拠

2012年10月08日 | 健康
○現之証拠(げんのしょうこ)

 日本各地、台湾、朝鮮半島、中国などに分布するフウロソウ科の多年草ゲンノショウコ(Geranium thunbergii)の全草を用いる。日本の代表的な民間薬であるが、中国では知られていない。

 江戸時代初期から民間で用いられ、ゲンノショウコという名は下痢にはっきりとした効果があることを意味し、イシャイラズやイシャナカセといった別名もある。かつて中国の牛扁がゲンノショウコとされたこともあるが、牛扁はキンポウゲ科の別の植物である。ちなみに津田玄仙の牛扁丸はゲンノショウコの黒焼きを原料にしたものである。

 中国の救荒本草にあるフウロソウ科のキクバフウロ(Erodium stephanianum)がゲンノショウコに似ていることから混同され、これが民間薬として利用されるきっかけになったと考えられている。中国には類似植物としてミツバフウロ(G.wilfordii)として薬草があるが、止瀉の効能はあまり知られていない。日本のゲンノショウコを中国ではネパール老鸛草と称している。

 葉には多量のタンニンが含まれ、その約2/3はゲラニインである。健胃・整腸・止瀉作用があり、あらゆる下痢に応用されるが、とくに赤痢など裏急後重を伴う下痢に効果がある。下痢止めを目的とするときは、タンニン類がよく抽出されるように半量になるまで煎じる。短く煎じると緩や下剤になり、便秘にも応用される。胃・十二指腸潰瘍などには決明子と配合する。医療用の整腸薬としてベルベリンと配合されている(フェロベリンA)。そのほか民間では強壮、保健のお茶として飲まれたり、煎じた液が腫れ物や霜やけに外用されている。

ゲンチアナ根

2012年10月06日 | 健康
き○ゲンチアナ根

 ヨーロッパ原産でスペインからトルコまでの亜高山帯に分布しているリンドウ科の多年草ゲンチアナ(Gentoana lutea)の根および根茎を用いる。

 植物学上、リンドウと同じ仲間であるが、ゲンチアナは高さ2mにも達する大型植物で、根も大きい。日本の北海道でも栽培されているが、おもにピレネー山脈やアルプスに産するゲンチアナがスペインやドイツから輸入されている。薬用にはゲンチアナの根や根茎を多少発酵させて乾燥したものを用いる。

 根には苦味配糖体のゲンチオピクロシドやスウェルチアマリン、アマロゲンチンなどが含まれ、胃液の分泌亢進や消化促進の作用などがある。ヨーロッパで古くから用いられている代表的な苦味健胃薬で、慢性胃炎や食欲不振などに用いられている。

 かつて日本ではリンドウ(生薬名:竜胆)やセンブリ、延命草などで代用されたこともある。現在も家庭薬の苦味健胃薬として(キャベジンコーワ)、またゲンチアナ・重曹散など医療用にも広く利用されている。

芫すい

2012年10月05日 | 健康
○芫荽(げんすい)

 地中海東部沿岸が原産とされるセリ科の一~二年草コエンドロ(Coriandrum sativum)の全草を用いる。現在では香料植物として東欧や東アジアなど世界各地で栽培されている。

 和名のコエンドロはポルトガル語に由来し、中国では張騫が西域から持ち帰ったため胡荽とも呼ばれている。果実は香辛料のコリアンダー(生薬名:胡荽子)として知られている。

 一方、未熟な果実や青葉にはカメムシに似た独特の臭いがある。この臭いは普通の日本人には不快な悪臭と感じられるが、葉をとった葉茎を中国では香菜(シャンツァイ)、タイではパクチーと呼ばれ、東南アジアや中南米の国々では肉や魚料理のつけあわせとして好まれている。最近では、日本でも中華料理や東南アジア料理などで全草が用いられるようになった。

 全草にはビタミンCやノニルアルデヒドなどが含まれ、不快臭の主成分はモノテルペン類のセルミン、デカナールといわれている。この臭いの成分は乾燥に弱く、生葉にしか含まれない。漢方では発汗・透疹・消食の効能があり、麻疹や消化不良などに用いる。とくに発疹の出にくい麻疹や風疹などに用い、発疹の出現を促進することによって内攻を予防し、全身症状の改善を行う。

 また発疹や丹毒に、芫荽を沸騰した湯に入れて1~2回沸騰させ、その湯気や熱湯でぬらしたタオルを皮膚に軽くあてる方法もある。近年、中国パセリ(芫荽)に体内の鉛が蓄積するのを抑制し、鉛中毒を緩和する作用があることが発表されて話題となっている。

 なお芫荽は子宮の筋肉を収縮させ、出産や堕胎を促進する民間薬として言い伝えられている。このため妊娠中は摂るべきではない。

芫青

2012年10月04日 | 健康
○芫青(げんせい)

 中国の各地に分布するツチハンミョウ科のアオハンミョウの一種である緑芫青(Lytta caraganae)の乾燥した全虫を用いる。

 緑芫青は体長1~2cmくらいの細長い昆虫で、体は緑色あるいは藍緑色で光沢がある。かつて日本薬局方に収載されていたカンタリス(L.vesicatoria)と同属の昆虫であり、中国ではカンタリスのことを洋芫青という。

 日本ではマメハンミョウ(Epicauta gorhami)をカンタリスの代用品として用いていたが、中国ではマメハンミョウの生薬名を葛上亭長という。その他、ヨコジマハンミョウ(生薬名:斑蝥)、ヒメツチハンミョウ(生薬名:地胆)などのツチハンミョウ科の昆虫もカンタリジンを含み、薬用にされる。このカンタリジンは、これらの昆虫が外的からの自己防衛のために分泌する刺激性の強い化学物質で、皮膚に付着すると水泡が生じるくらいの炎症を引き起こす。

 カンタリスは約2cmの金緑色の昆虫で、古代ヨーロッパで薬用昆虫として知られ、水腫や卒中、黄疸の治療、また毒薬として用いられたという。

 カンタリジンの薬理作用として発疱作用や抗腫瘍作用が知られている。外用では皮膚病や腫瘍の治療、発毛剤として用いる。内服すると利尿作用があり、また尿道を刺激するため催淫剤としても知られている。瘰癧(頸部リンパ腺腫や狂犬病、堕胎などに用いられた。日本では蘭学の影響で江戸時代以降に芫青を配合した発疱剤が腐食・排膿薬として皮膚化膿症の治療に用いられた。

玄参

2012年10月03日 | 健康
○玄参(げんじん)

 中国の江蘇・安徽・浙江省などに分布するゴマノハグサ科の多年草ゲンジン(Scrophularia ningpoensis)の根を用いる。日本や中国北方地区では近縁植物のゴマノハグサ(S.buergeriana)の根を用いることもある。ゴマノハグサとは葉の形がゴマの葉に似ていることに由来し、玄参とは黒い人参という意味である。

 ゲンジンの根にはハルパガイド、スタキオースなどが含まれ、降圧作用や解熱・抗菌作用などが報告されている。漢方では滋陰・清熱・除煩・解毒の効能があり、熱病による口渇や煩躁、発斑、結核などによる発熱、瘰癧(頸部リンパ腺腫)、咽頭腫痛、不眠症、自汗、盗汗、鼻血、吐血、便秘、腫れ物などに用いる。

 漢方理論では滋陰・降火の代表的な薬物であり、熱病(実熱)にみられる脱水症状や陰虚による熱症状(虚熱)のいずれにも用いることができる。また陰虚による咽頭や口舌部の疼痛に玄参は重要である。咽頭痛には煎液でうがいする方法もある。また生の根をつき砕いたものを腫れ物などに外用する。

拳参

2012年10月02日 | 健康
○拳参(けんじん)

 日本各地をはじめ広く北半球に分布するタデ科の多年草イブキトラノオ(Polygonum bistorta)などの根茎を用いる。イブキトラノオの名は滋賀県の伊吹山に多く産し、花穂がトラの尾に似ていることによる。

 中国ではこの生薬名を慣例的に草河車とか蚤休などと呼ぶこともある。ただし蚤休は本来、ユリ科の植物である重桜や七葉一枝花を基原とする生薬の異名であるので注意を要する。

 根茎にはタンニンが多く含まれ、止血作用や抗菌作用が報告されている。漢方では清熱解毒・止痙・止血・消種の効能があり、熱病による痙攣や細菌性下痢、気管支炎、肝炎、痔出血、性器出血などに用いる。また口腔内の炎症にこの煎液でうがいをしたり、痔や腫れ物に外用する。欧米では収斂薬として下痢や痔などに用いるほか、ヨーロッパ北部では昔から葉を煮て食用にしている。

ケンジツ

2012年10月01日 | 健康
芡実(けんじつ)

 日本各地、台湾、中国、インドなどに分布するスイレン科の一年草オニバス(Euryale ferox)の成熟した種子の仁を用いる。池や城の堀などで直径1m以上にもなる大きな葉を広げ、葉や葉柄に刺が密生してフキに似ているためミズブキとも呼ばれる。

 種子は球形で黒いが、種皮を除いた薬材は直径6mmくらいで赤褐色をしている。種子にはデンプンを多く含むため、芡実米とか鶏頭米などと呼ばれ食用にされる。粉にしたものは芡粉といって片栗粉と同様にあんかけ料理に用いる。

 成分にはデンプン、タンパク質、カルシウム、鉄分、ビタミンB1・B2などが含まれる。漢方では健脾・止瀉・補腎・固精の効能があり、遣清、頻尿、夜尿、尿失禁、帯下、下痢などに用いる。

 ハスの果実である蓮肉と同じく滋養・強壮作用にすぐれ、虚弱者や高齢者などの腎虚状態に用いる。腎虚による遣精や夜尿、頻尿には竜骨・牡蠣・蓮肉などを配合する(金鎖固精丸)。また遣精や帯下には金桜子と配合する(水陸二仙丹)。小児の胃腸虚弱による下痢には人参・茯苓・白朮などと配合する。婦人の帯下には黄柏・車前子などと配合する。ただし芡実の効果の発現は緩慢であり、1ヶ月以上服用する必要がある。