健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

一角

2012年01月31日 | 健康
○一角

 北極海に生息するイッカク科の哺乳類イッカク(Monodon monoceros)の牙を用いる。イッカクはイルカの近縁動物で、体調は約5mで、雄の上顎に1対ある歯牙のひとつの門歯が長くなり、細長く2m以上に伸びるため、イッカクあるいはウニコルン(ユニコーン Unicorn)と呼ばれている。牙は象牙質で螺旋形になっている。

 イッカクの角は中世ヨーロッパにおいて神秘的な解毒薬として珍重されていた。日本にはオランダ医学とともに江戸時代に伝えられた。漢方薬ではないが、サイカク(犀角)と同様の解熱・鎮静の効能があるといわれ、粉末にして服用する。和田東郭は精神病の激しい症状に対して大承気湯に配合して用いている(治狂一方)。

一位葉

2012年01月30日 | 健康
○一位葉(いちいよう)

 日本の各地、朝鮮半島、中国に分布するイチイ科の常緑針葉高木イチイの葉を用いる。日本では特に中部地方以北の深山に多く自生し、アララギやオンコなどの呼び名もある。中国ではイチイの枝や葉を紫杉の菜で生薬として用いている。

 かつて高官の笏(しゃく)に用いていたため一位という名があり、建築材や家具材、彫刻材、鉛筆材として知られている。今日でも飛騨高山の一位細工は有名である。また心材は紅褐色であり、浸出液は蘇芳色の染料としても利用されている。

 赤く熟した仮種皮は甘く食べられるが、種子には毒性がある。葉や枝にはアルカロイドのタキシン、タキシニンなどが含まれ、血糖降下作用や中枢神経抑制作用が報告されている。民間では葉や小枝を通経、利尿薬として用いている。また糖尿病にも効果があるといわれ、糖尿病用剤として知られる家庭薬にも配合されている。ただし毒性があるので過量にならないようにする。

 近年、アメリカ北西部に自生するタイヘイヨウイチイ(T.brevifolia)の樹皮から、パクリタキセル(タキソール)という抗癌活性のある成分が分離され、さまざのな癌の治療に用いられている。パクリタキセルは中国産の紅豆杉や日本産のイチイなどにも含まれているが、工業的にはセイヨウイチイ(T.caccata)の葉から抽出したバッカチンという成分が合成されている。

 現在、欧米では西洋イチイはユー(Yew)と呼ばれ、免疫力を高めるサプリメントとして販売されている。ちなみにイチイの同属植物である雲南紅豆杉の材部を原料にした紅豆杉茶が健康食品として輸入され、花粉症などに効果があると紹介されている。

伊豆縮砂

2012年01月28日 | 健康
○伊豆縮砂(いずしゅくしゃ)

 関東地方以西、四国、九州、台湾、中国に分布するショウガ科の多年草ハナミョウガ(Alpinia japonica)の種子を用いる。中国の生薬名ではハナミョウガの種子を土砂仁、全草を山姜という。葉がミョウガに似て、花が目立つことからハナミョウガの名がある。

 日本では熱帯アジアに産するショウガ科の植物の種子、縮砂の代用品として江戸時代から利用されている。さらに伊豆縮砂の代用品として同じくショウガ科のアオノクマタケラン(A.intermedia)の種子(黒手)やゲットウ(A.speciosa)の種子(白手)が用いられた。この黒手と白手では黒手のほうが品質がよいといわれている。いずれも西南日本、得に沖縄県などに自生しているが、南方より帰化したものともいわれている。

 ゲットウ(月桃)という名は台湾の呼称であり、沖縄の方言ではサンニン、つまり砂仁(縮砂の異名)とも呼ばれている。ちなみに台湾産の縮砂はゲットウの種子である。

 ハナミョウガの種子には精油のシネオール、β-ピネンのほか、フラボノイドのイザルピニンなどが含まれる。種子はソースなどの香辛料や芳香健胃の家庭薬の原料として用いられている。漢方では健胃・理気の効能があり、縮砂の代用として腹痛や嘔吐、下痢、生理痛の治療に用いる。

郁李仁

2012年01月27日 | 健康
○郁李仁(いくりにん)

 中国北部原産のバラ科の落葉低木ニワウメ(Prunus japonica)やコニワザクラ(P.humilis)などの種子を用いる。根も郁李根として用いる。現在、郁李仁の市場品には大李仁と小李仁の2種類がある。ただし、大李仁は主にバラ科のユスラウメ(P.tomentosa)の種子であり、薬用には小李仁を正品とする。

 ニワウメは江戸時代に渡来し、花が美しいため観賞用として栽培されている。果実はサクランボ状で食べられる。熟したニワウメの果実を摘みとり、果肉を除去し、核の殻を割って、種子を取り出す。この種子、郁李仁は6×4mmくらいの小さなアーモンドの形をしている。種子の成分には青酸配糖体のアミグダリンのほか、サポニン、フィトステロール、ビタミンB1などが含まれる。

 漢方では潤腸・利水消腫の効能があり、便秘や排尿減少、浮腫に用いる。郁李仁は麻子仁よりもやや強い潤下作用があり、高齢者や産後の慢性の便秘に柏子仁・桃仁などと配合する(五仁丸)、顔面及び手足の浮腫に防已・青皮などと配合する(郁李仁湯)、また脚気の浮腫にはヨクイニン・杏仁などと配合して用いる(三仁丸)。なお郁李根は歯の治療薬としてよく知られ、歯痛や歯肉炎には煎じた液でうがいする。

硫黄

2012年01月26日 | 健康
○硫黄

 天然に産する硫黄の単体、硫黄鉱(サルファSulphur)を加熱、加工したものを用いる。火山国の日本で盛んに採掘され、海外へ輸出していたこともある。現在、硫黄は石油精製過程で得られるため、日本の硫黄鉱山はほとんど閉山となっている。また金属硫化物や硫黄塩として地球上に広く分布し、生物体内にもタンパク質および有機化合物の成分として含まれている。

 古くから燃える不思議な物質として知られ、西洋の錬金術でも、中国の錬丹術でも重要な原料であった。単体のままマッチや黒色火薬の原料にされるが、精製硫黄はパルプ製造用の亜硫酸や二硫化炭素の原料になる。薬材の硫黄は表面がざらざらした軽い黄色の塊で、質はもろく砕けやすい。特異な臭いがあり、燃やすと炎を出し刺激性のある二酸化硫黄(亜硫酸ガス)の臭気を発する。粗製硫黄を昇華させて固定したものは硫黄華といい、無味無臭の黄色い粉末である。

 硫黄イオンは細胞膜を通過しないため薬理的作用はないとされているが、服用すると腸内細菌により還元され、硫化物や硫化水素となって腸壁を刺激し、また水が腸内に滲出して下痢をおこす。また硫黄を皮膚に外用するとSH基をS-Sに変えて角化した皮膚を軟化させ、また硫化水素やペンタチオン酸となって抗菌作用が発現する。かつては痤瘡の治療にクンメルフェルド液、湿疹や疥癬の治療に硫黄軟膏などがよく使用された。

 漢方では止痒・補陽の効能があり、湿疹や疥癬、痤瘡などの外用薬として用いるほか、インポテンツや慢性の下痢、老人性便秘などに用いる。小児の寄生虫症で腹痛、夜泣きするときには平胃散に硫黄を加える。老人性の虚寒の便秘に半夏と配合する(半硫丸)、老婦人の腰冷えや帯下に竜骨と配合する(竜硫丸)。近年、北米原産のテーダ松から抽出された有機硫黄成分MSM(メチルスルフォニルメタン)に鎮痛作用や抗炎症作用、抗アレルギー作用があり、関節炎や筋肉痛の緩和、アレルギー性鼻炎の改善、髪や爪の成長促進などに効果があるとして注目されている。

安息香

2012年01月25日 | 健康
○安息香(あんそくこう)

 エゴノキ科の高木で、インドネシアに分布するアンソクコウノキ(Styrax benzoin)、タイや東南アジアや中国南部に分布するシャムアンソクコウノキ(S.tonkinensis)の樹脂を用いる。樹幹に傷つけると黄色の樹液と白色の樹脂が徐々に分泌されるが、この樹脂を採取し乾燥させたものを薬材とする。薬材の表面は黄褐色ないし赤褐色、内部は乳白色の硬くてもろい不定形の塊で、芳香があり、過熱するとすぐに軟化する。

 インドネシア産のものはスマトラ安息香、タイを主産地とするものはシャム安息香といい、世界市場の90%はスマトラ安息香である。日本に輸入される安息香もほとんどはスマトラ安息香であるが、シャム安息香のほうが高級とされる。

 スマトラ安息香の成分には芳香族化合物の安息香酸、ケイヒ酸、バニリンなどが含まれる。一方、シャム系には安息香酸やバニリンが多く含まれるが、ケイヒ酸は含まれない。安息香酸には中枢神経興奮作用殺菌作用があり、安息香酸ナトリウムは抗カビ、防腐剤として利用されている。また安息香チンキは呼吸器の局所粘膜を刺激して分泌物を増加させる作用があるため、かつて吸入剤の去痰薬として使用されたことがある。

 一方、古代エジプト時代から香料として、また宗教儀式の薫香として使用されてきた歴史があり、現在では、主に石鹸やポマードの香料やアロマテラピーの精油(ベンゾイン)として用いられている。

 漢方では開竅・理気・活血の効能があり、意識障害、胸や腹の痛み、産後のめまい、小児のひきつけなどに用いる。失神などの意識障害や胸痛、腹痛には蘇合香・麝香・沈香などの芳香薬と配合する(蘇合香丸)。一般に内服では丸剤や散剤として用いる。そのほか白癬症などの外用薬として有名な華陀膏にも蝋梅とともに配合されている。

アロエ

2012年01月24日 | 健康
○アロエ

 アロエはアフリカの地中海沿岸部を原産とするユリ科の植物であり、アロエとは、アラビア語で苦いという意味である。中国では蘆薈薈と記し、日本に渡来して蘆薈をロカイと読み、和名となった。アロエは600種類ぐらいが知られているが、代表的なものにケープアロエ(Aloe ferox)、キダチアロエ(A.arborescen)、アロエベラ(A.barbadenisis)がある。このうちケープアロエは、日本薬局方に収載されており、医薬品以外の食品や化粧品への使用は禁止されている。

 ケープアロエに含まれるアントロン配糖体の苦味成分、アロインには瀉下作用があり、大腸性下剤として常習性便秘に用いられる。またアントラキノン類のアロエエモジンも苦味成分で胃液の分泌促進、緩下作用がある。健康食品として日本では主にキダチアロエ(木立蘆薈)が利用されており、ヨーグルトなどに入っているアロエはアロエベラの葉肉である。日本の家庭で栽培されているアロエは一般的にキダチアロエであり、アロエベラは日本では沖縄でしか栽培されていない。ちなみに欧米でアロエといえば、アロエベラのことである。

 キダチアロエにはアントラキノン類があまり含まれておらず、下剤の効果が期待できないが、葉全体を食品として利用できるのに対し、アロエベラには薬局方成分のアロインが多く含まれているため表皮を除いた葉肉のみが利用されている。

アルカロイド

2012年01月23日 | 健康
○アルカロイド

 植物の中には分子内に窒素を含み塩基性を示す成分があり、これらをアルカリのようなものということからアルカロイドと総称する。アミノ酸から生合成され、ヒトの生理活性アミンと類似の構造を持つため、強い生物活性を持つ。植物毒の多くはアルカロイドであり、薬用植物の主成分もアルカロイドであることが多い。

 代表的なアルカロイドとして麻黄のエフェドリンや附子のアコニチンがある。一般にアルカロイドは、湯液の酸性度が高い場合や酒で煎じた場合には成分の抽出量が増加する。また、長時間加熱することで分解され、活性が低下する。一方、アルカロイドの吸収にも、pHが関与し、胃酸によってイオン化するため、胃での吸収が低下する。食後や多量の湯と一緒に摂取すれば、胃酸は薄まり、アルカロイドの吸収量は増える。アルカロイドの抽出量や吸収量が増加すれば、作用は強くなるが、副作用(中毒)が出現する危険性も増大する。このため、麻黄や附子を煎じたり、服用する場合には、専門家の指示に随うことが必要である。現在までに数千種のアルカロイドが知られており、アルカロイドを含有する植物として、キンポウゲ科、ケシ科、ナス科、ヒガンバナ科、マメ科、メギ科、ユリ科、トウダイグサ科、ウマノスズクサ科などがある。

あり

2012年01月21日 | 健康
○あり(蟻)

 中国南部の広西省、雲南省に分布するアリ(Polyrhachis vicina)を用いる。アリは南極と北極を除いて世界中に分布し、現在約8800種が知られており、日本でも277種のアリが報告されている。

 中国南部や東南アジアではツムギアリを、オーストラリアのアボリジニはミツツボアリを食用にする習慣がある。日本ではアリを薬用に用いた記録が名類聚抄(932年)にあり、中国の本草書、本草綱目(1578)にも記載されている。中薬大辞典には、四川中薬誌を出典として黒蟻(Formica fusca)を黒螞蟻として収載されている。擬黒多刺蟻は、中国政府衛生部が唯一、食用と薬用に認定している種類といわれている。

 アリには、タンパク質と脂肪、ビタミンB1・B2・B12、Eなどのビタミン類、蟻酸、クエン酸、酢酸などの有機酸のほか、亜鉛、カルシウム、鉄、マンガン、セレンなどのミネラルのほか、昆虫脱皮ホルモンのエクジステロンなどが含まれている。

 中国では補腎、扶正、止痛、安神などの効能があるとして、滋養強壮、免疫機能の改善、抗炎症、老化防止などの目的で用いられている。臨床的には、リウマチ、関節痛、神経痛、生活習慣病、慢性肝炎、性機能減退などに効果があると謳われている。中薬大辞典では黒螞蟻を蛇咬傷や腫れ物の外用薬として紹介している。

あまにん

2012年01月20日 | 健康
○あまにん(亜麻仁)

 中央アジア原産のアマ科の一年草アマ(Linum usitatissimum)の種子を用いる。アマは茎に強い繊維があり古くからリンネル(リネン)として用いられ、また種子からはアマニ油(亜麻仁油)という良質の乾性油が採れる。亜麻の品種は繊維用と油用とで異なり、繊維用は旧ソ連、ベルギー、採油用はアメリカ、カナダなどと世界各地で栽培されている。日本には17世紀に薬用として亜麻仁油をとるのが目的で中国から伝わったが、明治初期になって繊維用が北海道に導入された。リンネルとは亜麻布のことで、夏用の服地、肌着、シーツ、キャンバスなどに利用されている。アマニ油はペンキや油絵具、印刷インキなどの工業用としても重要である。日本は生薬名を亜麻仁というが、中国では一般に亜麻子とか胡麻子と称しているため、胡麻と混同しやすいので注意が必要である。

 亜麻油には、他の植物性油にあまり含まれていない必須脂肪酸のα-リノレン酸が多く含まれている。亜麻リグナンは、腸内細菌によって代謝され、女性ホルモン様の作用があるとして注目されている。このため更年期障害の改善や乳癌、結腸癌などの予防に効果があると期待されている。その他、亜麻仁には緩下作用や刺激緩和作用があり、便秘や咽頭の痛みなどにも用いられている。

 漢方では潤腸・止痒の効能があり、便秘や湿疹、脱毛などの治療に用いる。また、かつてハンセン病や肺結核の治療にも用いられた。民間療法では皮膚の痒みに種子をすりつぶして外用する。健康食品ではオメガ3系脂肪酸であるα-リノレン酸の補給として亜麻仁油(フラックスシードオイル)が、亜麻リグナンや食物繊維の摂取には亜麻仁(フラックスシード)が薦められている。ただし亜麻仁油には微量の青酸配糖体が含まれており、過量に使用しないほうがいい。また亜麻仁油は酸化されやすいため、なるべく新しいものを摂取する。