健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

カミツレ

2012年05月30日 | 健康
○カミツレ

 ヨーロッパ原産のキク科の一年草カミツレ(Matricaria chamomilla)の花もしくは全草を用いる。日本には江戸時代にオランダから伝えられ、現在、鳥取や岐阜、岡山などで栽培されている。

 カミツレの花はノジギクに似て中央は黄色い管状花、周囲は白色の舌状花で特有の芳香がある。カミツレの花はオランダ語のカミルレがなまったもので、英語ではカモマイルという。この一年草のカミツレはジャーマンカミツレとも呼ばれ、これとは別に多年草のローマカミツレ(Anthemis nobilis)というよく似た植物がある。このローマカミツレは頭花が大きく香りも少し異なるが、一般には同じように利用されている。

 カミツレは紀元前2千年の古代バビロニアでも薬として使用されたといわれ、現在でもヨーロッパの代表的な民間療法の一つである。花の精油成分には芳香のあるビザボロールやマトシリンなどが含まれ、マトシリンは蒸留すると青色のアズレン誘導体、カマズレンに変化する。芳香性苦味健胃薬や発汗薬、消炎・抗アレルギー薬、鎮静・安眠薬、駆風薬として幅広く用いられるほか、香料としてリキュールや香水、シャンプーなどにも利用されている。

 風邪の初期や頭痛、下痢には花ひとつまみに熱湯を注ぎ、カミツレティーとして飲む。またリウマチや痔核、冷え性、心身の疲労などに花や葉茎を木綿袋に入れて浴湯料として使用する。かつてカモミールの水蒸気蒸留によってアズレンが抽出されていた。アズレンは胃炎や胃潰瘍の内服薬のほか、口内炎や扁桃炎の含嗽薬、湿布の軟膏剤などに用いられている。ちなみにローマカミツレはスペインではシェリー酒の風味付けとしても用いられている。

カマラ

2012年05月29日 | 健康
○カマラ

 中国中南部、台湾、インド、フィリピン、オーストラリアなどに分布するトウダイグサ科の常緑高木クスノハガシワ(Mallotus phillippinesis)の果実の腺毛および束毛を用いる。球形の果実は紅色の束毛や腺毛で密に覆われているが、この腺毛などを果皮から脱落させて採取する。これは暗赤褐色の色の粉末で、わずかに独特のにおいがあり、水に浮かべると水面が少し赤く染まる。子の粉末をカマラと呼び、インドでは絹や羊毛を赤く染める染料として用いている。

 赤色の主成分はロットレリンであり、駆虫作用がある。一般には犬などの家畜の条中駆除薬として用いられている。南西諸島では月経不順や皮膚疾患に用いている。近年、樹皮エキスにはコラーゲン産生促進作用があり、化粧品の成分として利用されている。

蝦蟆

2012年05月28日 | 健康
○蝦蟆(かま)

 アカガエル科のヌマガエル(Rana limnocharis)をそのまま乾燥したものを用いる。日本ではヒキガエルのことをガマともいうが、中国ではヒキガエルを蟾蜍(せんじょ)という。ヌマガエルは中国南部、日本でも本州中部以南に生息する体調5cmくらいのカエルで、環境により色彩が変化するが、一般に灰褐色又は暗褐色の地に黒褐色の斑紋がみられる。毒性はなく中国南方では食用にもされた。

 漢方では清熱解毒・消腫の効能があり、廱腫などの腫れ物、口内炎、瘰癧(頸部リンパ腺腫)、下痢、疳積などに用いる。小児の虚証の疳労で、栄養不良が著しく、発熱・盗汗・五心煩熱などの症状に人参・黄耆・別甲などと配合する(黄耆湯)。

瓜蒂

2012年05月25日 | 健康
○瓜蒂(かてい)

 西アフリカ熱帯地域を原産とするウリ科のつる性植物マクワウリ(Cucumis melo)の未熟果実のヘタを乾燥して用いる。マクワウリはアフリカ原産のメロン類が東アジアで分化したもので、インドを経て、紀元前に中国に伝わり、日本にも弥生時代に既に朝鮮から渡来したといわれている。古名をカラウリと呼んだが、岐阜県の真桑村のウリが有名だったため、マクワウリの名がある。

 マクワウリの成熟した果実には甘味と香味があり、生食に適するが、未熟化は苦味が強い。奄美は主にブドウ糖、芳香はセバシン酸エチルによる。未熟果の蒂には苦味質のメロトキシン、エラテリン、ククルビタシンB・Dなどが含まれ、メロトキシンには胃を刺激して反射的に嘔吐中枢を興奮させて嘔吐を引き起こし、同時に蠕動を興奮させて下痢を起こす作用がある。

 漢方でも催吐薬として用い、癲癇や脳卒中、喘息などで痰が詰まって呼吸困難なとき、食べすぎで胸がつかえる時、毒物を誤って食べたときなどに用いる。食べたものが下に降りずにみぞおちに痞えて苦しいときには赤小豆と混ぜて粉にし、豆鼓を煮た汁で服用する(瓜蒂散)。また単独を煎じて吐剤として用いる(一物瓜蒂湯)。粉末にしたものを鼻に入れると湿熱を除くといわれ、黄疸や頭痛、鼻閉、浮腫などに用いる方法もある。

茄蒂

2012年05月24日 | 健康
○茄蒂(かてい)

 インドを原産とし、熱帯から温帯地方で広く栽培されているナス科のナス(Solanum melongena)の宿存萼(ヘタ)を用いる。一般に一年草として栽培されているが、熱帯では多年草である。ナスの名は茄子を日本読みして変化したもので、古くに日本に渡来し、奈良時代にはナスが野菜として売買されていたといわれている。

 果実の栄養価はあまり高くないが、トリゴネリン、スタキドリン、コリン、ソラニンなど多種のアルカロイドを含む。果皮の色素はナスニンと呼ばれるアントシアニンで、加水分解されたデルフィニジンは鉄やニッケルと安定した青色の複塩を作る。このため漬け物に鉄釘やミョウバンを加えると鮮やかな青色になる。

 漢方ではあまり用いないが、本草書には下血や腫れ物、口内炎、歯痛などに用いるとある。江戸時代にナスのヘタがフグの中毒に効果があると流布されたこともある。民間ではナスのヘタの黒焼きが有名で、歯槽膿漏、歯痛、口内炎、痔、神経痛などに用いる。例えば歯槽膿漏には食塩を混ぜ、歯肉をこする。歯痛には穴に詰める。痔やあかぎれにはゴマ油で練って患部につける。そのほか腫れ物に煎じ液で湿布する療法もある。また生の下手の切り口やおろし汁をイボにつけたり、ナスの花とクズの花を煎じて二日酔いに用いるという方法もある。

蛞蝓

2012年05月23日 | 健康
○蛞蝓(かつゆ)

 軟体動物に属する陸生貝類ナメクジ(蛞蝓)の全体を用いる。ナメクジとはナメクジ科のコウラナメクジ科の総称であり、ナメクジ科は貝殻を持たないが、コウラナメクジ科は背面に薄い皿状の殻片を持っている。中国ではおもにコウラナメクジ(LIMAX)を薬用にする。

 日本全土のほかアジア大陸などに広く分布し、菜園や庭園、石の下や湿ったところに生息し、高温多湿のとき、特に夜間に活動的になる。野菜などの植物の葉や茎、果実などを食べるため被害を与える。体表は粘液で湿っており、這った後には粘液の跡が残る。塩をかけると浸透圧の関係で体が縮むが、死ぬわけではない。

 漢方での性味は鹸・寒で、止咳・解毒・消腫・通経絡の効能があり、喘息、咽頭炎、腫れ物、顔面神経麻痺、痙攣などに用いる。一般に火で炙って乾燥させて粉末にして服用する。日本の民間療法では喘息や咳嗽に生のナメクジをそのまま食べるという方法もある。

滑石

2012年05月21日 | 健康
○滑石(かっせき)

 生薬として市場には軟滑石と硬滑石の2種類の滑石がある。軟滑石は天然の含水ケイ酸アルミニウムからなる粘土鉱物、加水ハロサイトのことである。硬滑石は鉱物学上の滑石(タルク Talc)のことで、天然の含水ケイ酸マグネシウムである。

 真正の滑石は軟滑石とされ、正倉院に保管されていた滑石も軟滑石(加水ハロサイト)であることが明らかにされた。現在、中国では主としてタルク(硬滑石)を正条品として用いているが、日本では加水ハロサイトやカオリナイト(白陶土)が用いられている。とくに白くて滑らかで、水で潤すと全体が軟化して崩壊するものを唐滑石と呼んで、上品とする。ちなみに日本薬局方ではタルクを保護薬として収載している。

 漢方では利水・通淋・清熱の効能があり、排尿障害や浮腫、夏期の口渇、下痢、皮膚掻痒などに用いる。とくに膀胱の熱を瀉して排尿を促進するので膀胱炎に適し、また暑熱を解して利湿するので熱射病などによる口渇や煩躁、下痢などにも応用される。さらに外用薬として湿疹や皮膚潰瘍などに用いる。

葛根

2012年05月19日 | 健康
○葛根(かっこん)

 日本各地、東アジアに広く分布するマメ科のつる性木本クズ(Pueraria lobata)の根を用いる。クズの花を葛花、クズの根からとれるデンプンを葛粉という。根に多く含まれるデンプンは食用としても葛湯や葛餅、葛切り、葛粉などの原料として用いられている。

 葛粉の作り方はクズの根を洗って外皮を除き、つぶして水に浸して粥状にし、滓を布でこして得られた租デンプンを水槽に入れて沈殿させ、上澄み液を捨てる。このような精製の行程を繰り返し、最後に残った白色の沈殿物を乾燥させて固めたものが葛粉である。日本では奈良県の吉野葛、福岡県の秋月葛が有名である。ただし市販されている葛粉のほとんどは小麦やサツマイモなどのデンプンである。

 根にはデンプンのほかにダイジン、ダイゼイン、プエラリンなどのイソフラボン誘導体が含まれ、解熱、鎮痙、降圧、消化管運動亢進作用などが知られている。漢方では解肌・透疹・潤筋・止渇・止瀉の効能があり、頭痛や肩こりなどの感冒症状、麻疹、筋肉の緊張、口渇、下痢などに用いる。そのほか中国では高血圧の随伴症状や狭心症、片頭痛、突発性難聴などにも応用されている。民間でも葛デンプンに砂糖を加えて溶かしたものを葛湯と呼んで風邪の初期や腹痛に用いている。

かっ香

2012年05月18日 | 健康
○藿香(かっこう)

 フィリピン原産とされ、熱帯の地方、中国の広東・雲南省などで栽培されているシソ科の多年草パチョリ(パチュリー:Pogostemon cablin)の全草を用いる。また日本各地、東アジアに分布しているシソ科の多年草カワミドリ(Agastache rugosa)の全草も用いられる。現在、わが国で流通している藿香の基原はほとんどがパチョリであり、広藿香ともいう。広藿香の名は広東省の海南島てせ栽培化されたことに由来する。これに対し、カワミドリは土藿香とか川藿香(四川省産)などと呼ばれている。

 パチョリの精油成分はおもにパチョリアルコールで、オイゲノール、ケイヒアルデヒドなどが含まれる。この水蒸気蒸留したパチョリ油は香水の調合に用いられる。一方、カワミドリの主成分はメチルチャビコールである。カワミドリには抗真菌、抗スペロヘータ作用などが知られている。インドではパチョリを衣服の香料や浴湯料に用いるほか、薬用としては鎮痛・解熱薬、あるいは喘息や消化器疾患の治療に用いてきた。

 漢方では解暑・健胃・止瀉の効能があり、夏季の感冒、頭痛、嘔吐、下痢などに用いる。芳香性の強い健胃整腸薬で、とくに夏の胃腸障害や暑気あたりなどの常用薬として知られている。

葛花

2012年05月17日 | 健康
○葛花(かっか)

 マメ科のつる性木本クズ(Pueraria lobata)の花を乾燥したものを用いる。クズの根は葛根である。クズは日当たりのよい土手や山野に生え、夏から初秋のころに香りのある紫紅色の花を咲かせる。秋の七草のひとつであり、茶花としても喜ばれる。

 葛の蔓の繊維は葛布と呼ばれる織物としてふすま紙や着物などに利用されていたが、今でも掛川市などで民芸品として生産されている。またクズの葉は家畜の飼料としても利用されている。19世紀に緑化を目的として日本からアメリカにクズ(Kudzu)が移植されたが、繁殖力が旺盛なため今日では侵略的外来種として指定されている。

 葛花は花が全開する前に採り乾燥される。葛花は昔から二日酔いの妙薬といわれ、煎じたり、粉末にして服用する。葛花と小豆の花を粉末にして服用すれば酒に酔わないともいわれる。

 漢方でも酒毒を解き、胃腸をスッキリさせる目的で、二日酔いの頭痛や悪心に陳皮・縮砂などと配合する(葛花解醒湯)。最近の研究でもクズの花や根には肝のSODやカタラーゼの活性を上昇させ二日酔いを予防する効果や、アルコール摂取量を抑制する効果が報告されている。