健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

硼砂

2015年05月27日 | 健康
○硼砂(ほうしゃ)

 乾燥地帯の湖水または鹸湖に産するホウ素やホウ酸の原料鉱石である硼砂(ボラックス:Borax)を精製してできた結晶を用いる。白色で粒状あるいは土塊状の硼砂を沸騰水に溶かした中に、麻縄を垂直に降ろして漬け、析出した結晶を取り出して乾燥する。

 組成は四ホウ酸ナトリウム(Ns2B4O7・10H2ら)であり、透明または半透明で光沢があるが、風化されると不透明の白色粉末となる。ホウ砂の水溶液に硫酸を加えるとホウ酸が析出する。味は鹸いが、甘みもある。

 ホウ砂にはホウ酸と同じ弱い殺菌作用があり、口内炎の治療やうがい薬、洗眼薬に用いられる。漢方では小毒で、解毒・防腐・清熱・消痰の効能があり、口内炎や喉の腫痛、結膜炎、咳嗽や喀痰、喉の詰まりなどに用いる。

 口内炎や歯肉炎、咽頭炎などに竜脳・朱砂・玄明粉と配合する(氷硼散)。現在でも麦粒腫(ものもらい)や結膜炎に硼砂やホウ酸の水溶液で目を洗浄することが行われている。また、ホウ酸と小麦粉などを混ぜて作ったホウ酸団子がゴキブリ対策によく用いられている。

芽根

2015年05月26日 | 健康
○芽根(ぼうこん)

 日本全土をはじめアジアやアフリカなどに広く分布するイネ科の多年草チガヤ(Imperata cylindrica)の根茎を用いる。日当たりのよい土手や堤防などに群生している。

 春先の花序がまだ葉鞘内にあるときには甘みがあり、ツバナと呼ばれて食べることができる。晩春から初夏にかけては小さなススキのような花穂をつける。

 根茎にはトリテルペノイドのシリンドリン、アルンドイン、フェルネノール、シミアレノールや有機酸類が含まれ、利尿、抗菌作用のあることが知られている。

 官報では清熱・止渇・止血・利尿の効能があり、口渇、喘息、鼻血、吐血、膀胱炎などに用いる。味は甘であるが膩ではなく、性は寒であるが、胃に障らず、利尿しても陰を傷らないといわれている。このため熱症の出血や熱病で口渇が著しいとき、また黄疸や膀胱炎に用いる。

 喀血、吐血、鼻血、皮下出血などの出血には大薊・側柏葉などとともに灰にして服用する(十灰散)。近年では腎炎の浮腫に効果があると報告されている(疎風利水湯)。ただし作用が穏やかなためかなり多量に用いることが必要で、一般量の15~30gに対し、腎炎に単独で用いるときには250~300gを煎じて用いる。

望江南

2015年05月25日 | 健康
○望江南(ぼうこうなん)

 熱帯アメリカ原産のマメ科の一年草ハブソウ(Cassia occidentalis)の茎葉を用いる。日本には江戸時代に渡来し、小笠原諸島や沖縄県では野生化している。

 日本では種子も望江南というが、中国では種子を望江南子という。マムシ(ハブ)に咬まれたときに葉の汁を擦り込むとよいといわれることからハブソウという。この種子をあぶったものをハブ茶と称していたが、現在ではハブソウによく似たエビスグサ(C.obtusifolia)の種子(生薬名:決明子)がハブ茶として用いられている。

 全草にはエモジン、フイスチオン、クリソファノール、ケルセチン、種子にはエモジン、オブツシフォリン、レイン、アロエエモジンなどの成分が含まれる。薬理学的には葉には抗菌・抗真菌作用、種子には健胃・瀉下作用のあることが知られている。

 官報では葉に解毒・止咳・和胃の効能があり、皮膚化膿症や咬刺症、咳嗽、便秘、胃の痞えなどに用いる。朱には明目・通便・解毒の効能があり、結膜症や便秘、皮膚化膿症に用いる。

 虫刺されや蛇咬傷、腫れ物などには葉の汁を患部に外用する。種子をあぶって焦がしたものを便秘や高血圧、眼病などの茶剤として服用する。

望月砂

2015年05月24日 | 健康
○望月砂(ぼうげっしゃ)

 ウサギ科動物、モウコウウサギ(Lepus tolai)などの野兎の乾燥した糞を用いる。モウコ兎は中国東北部から内蒙古にかけて分布しているが、そのほか中国各地に生息している種々の野兎の糞も用いる。

 秋ごろに野草を刈った後、見つけた兎糞を集め、草や砂を除いて乾燥する。ただし家兎の糞は用いない。乾燥した糞は直径1cm前後のやや細長い灰褐色の塊で、手で揉むと崩れて草を散らした状態になる。乾燥したものは臭いはなく、味は少し苦い。

 漢方では明目・駆中・治痔の効能があり、白内障や視力の低下、疳疾、痔などに用いる。近年でも中心性網脈絡膜炎の治療に生地黄・夜明砂・黄精・石斛などと配合した処方が応用されている。

防已

2015年05月23日 | 健康
○防已(ぼうい)

 日本ではツヅラフジ科のオオツヅラフジ(Sinomenium acutum)の茎や根茎を防已あるいは漢防已といい、アオツヅラフジ(Cocculus trilobus)の茎や根茎を木防已という。

 中国産の防已(漢防已)の基原植物はツヅラフジ科のシマハスノハカズラ(Stephania terandra)やアオツヅラフジなどである。中国市場で流通している木防已としては、ウマノスズクサ科の広防已(Aristolochia fangchi)や漢防已(A.heterophylla)が主な基原植物である。ちなみに日本産の防已であるオオツヅラフジの茎を中国では青風藤として扱っている。

 しかし、近年、日本でも中国でも漢防已と木防已とはあまり区別しなくなり、今日では生薬の木防已はほとんど用いられていない。たとえば木防已湯のエキス剤でも木防已ではなく漢防已が配合されている。現在、日本に中国産の防已は輸入されておらず、日本薬局方に規定されているオオツヅラフジのみが基原植物として用いられている。

 オオツヅラフジの茎にはシノメニン、アクツミン、ツナクチン、マグノフロリンなどのアルカロイドが含まれ、シノメニンの鎮痛・抗炎症作用はよく知られている。シマハスノハカズラにはテトランドリン、フェンチノリンなどのアルカロイドが含まれ、やはり鎮痛・消炎作用が報告されているが、シノメニンには含まれていない。近年、ウマノスズクサ科の植物を基原とする防已のアリストロキア酸による腎障害が報告されている。

 漢方では防已や青風藤には去風湿・利水消腫の効能があり、浮腫や関節水腫、脚気、関節痛、腫れ物、湿疹などに用いる。ただし中国医学では青風藤(日本産の防已)は去風湿薬に、防已(中国産の粉防已)は利水薬に分類している。すなわち青風藤は粉防已よりも止痛作用が優れているが、利水作用はやや劣ると考えられる。