健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

仏手柑

2014年11月20日 | 健康
○仏手柑(ぶっしゅかん)

 インド原産のミカン科の常緑低木ブッシュカン(Citrus medica)の果実を用いる。果実は先が5~10本に指状にわかれ、その特異な形のために仏手柑と呼ばれる。

 ブッシュカンはシトロンの変種とされ、シトロンはマルブッシュカンとも呼ばれている。日本にも江戸時代に中国から沖縄県を経て伝えられ、現在でも和歌山県で観賞用として栽培されている。果汁は少なく、酸味が少ないため食用にはならないが、特有の強い香りがある。

 果実には精油のほかヘスペリジン、リメッチン、ジオスミンなどが含まれ、腸管運動の抑制や鎮痙作用がある。漢方では理気・健胃・止痛・止嘔の効能があり、胃痛、脇腹通、嘔吐、咳嗽などに用いる。芳香性の理気薬であるが、おもに疏肝和胃に用いる。

 消化不良や食欲不振、腹満感などには半夏・木香などと、側腹部張満感、腹痛などには香附子・鬱金などと配合する。

附子

2014年11月14日 | 健康
○附子(ぶし)

 北半球に広く分布するキンポウゲ科の多年草トリカブト属の子根を用いる。トリカブト属は毒草として世界的に知られ、古くから毒殺に用いられたり、アジアではアイヌ民族などで矢毒としても利用されていた。インドや中国では古代より薬用としても応用され、「ビシュ」というインドのトリカブトの呼称が「附子」の語源という説もある。

 トリカブト属は種類が多く、日本だけでもヤマトリカブト(Aconitum japonicum)、カラフトブシ(A.sachalinense)、ホソバトリカブト(A.senanense)など50種余りの種類があるといわれている。国産の野生の株から得られる生薬はおもにヤマトリカブト(オクトリカブト)が用いられている。中国の四川省などで栽培されている品種はカラトリカブト(A.carmichaeli)である。

 トリカブトという名は花の形が雅楽を演奏するときに被る鳥の形をしたかぶりものに似ていることに由来する。薬用として根を用いるが、根には附子・烏頭・天雄などに区別される。一般にトリカブトの根は、茎に続く塊根(母根)があり、その周囲に数個の新しい塊根(子根)が連生している。この根の母根を烏頭、子根を附子、また子根の生えてない細い根を特に天雄という。

 塊根の形が烏の頭に似ていることから烏頭、母根に付着した根ということから附子、子根がないのは天性の雄ということから天雄という名がある。しかし、現在では日本ではこれらを区別せずに附子といっている。また中国では減毒処理されていないものを烏頭、減毒処理したものを附子と称している。

 附子を薬用にするために古くから減毒する方法が考案されてきた。たとえは生の附子をニガリと食塩との混合液に浸した後に日干しする。これを塩附子という。一方、ニガリ液に数日間浸した後に煮沸などの加熱処理を加えたものを炮附子という。

 日本では塩水に浸した後、石灰をまぶして乾燥させたものを用いているが、これは白河附子として知られている。近年、日本では2気圧の降圧下で120℃の水蒸気による加熱処理を20~30分間行い、さらに品質や力価を一定にするために粉末として加工ブシ末が開発されている。

 トリカブトの成分には毒性の強いアコニチン、メサコニチン、ヒパコニチン、低毒性のアチシンなど数多くのアルカロイドが含まれている。アコニチンは加水分解を受けると、ベンゾイルアコニンからアコニンへと変化し、毒性は著しく減じる。薬理的にはアコニチン、メサコニチンなどの鎮痛作用、アコニチン類やヒゲナミンなどの強心作用、アコニチンの血管拡張作用などが知られている。附子の薬理作用として鎮痛作用、抗炎症作用、強心作用、血管拡張作用、新陳代謝促進作用などが報告されている。

 一方、トリカブトの中毒症状として、口舌のしびれ、嘔吐、下痢、流涎がみられ、運動麻痺、知覚麻痺、痙攣、呼吸困難、心伝道障害などが出現視、死に至ることも少なくない。漢方では大熱の性質があり、補陽・温裏・止痛の効能がある。

 一般には陽虚の状態、つまり老化や疾病により全身の機能が衰退し、脈の微弱や身体の冷えが現れたときに用いられる。また、冷えによる痛みや風寒湿による伊丹にも用いられる。たとえば下半身の冷感や倦怠感、下痢、浮腫、腹痛、腰痛、関節痛、リウマチ、ショック状態などに用いる。

 臨床的に附子中毒を予防するために、他の生薬とは別に先に煎じることが必要で、一般に60分くらい煎じる。また溶液の煎じる温度やpHによってもアルカロイドの抽出量に差があるため、附子の使用量が同じでも煎じ方や配合生薬によっても副作用の出ることがある。

 服用に関していえば、消化管内のpHが上がればアルカロイドの吸収が促進される。一般に空腹時より食後のほうが吸収されやすく、また低酸症や潰瘍治療薬を服用している人に副作用が出やすいといわれている。

茯苓

2014年11月07日 | 健康
○茯苓(ぶくりょう)

 日本、中国、北米に分布し、アカマツやクロマツなどの根に寄生するサルノコシカケ科のマツホド(Poria cocos)の菌核を用いる。菌核とは菌糸の塊で、不規則な塊状をなし、大小も様々である。中には重さ1kg以上で人の頭ぐらいの大きさのものもある。

 表面は灰褐色であるが、中は白くてチーズ状である。木材腐朽菌の一種で伐採後4~5年経ったマツなどの切り株の根に寄生する。従来、マツホドは枯死したマツの根に寄生すると考えられていたが、生きたマツやその他の植物の根にも寄生し、菌核を作ることが確認されている。

 地下20~30cmのところに隠れているため、かつて日本でも「茯苓突き」といわれる専門家が探す仕事をしていた。茯苓の名は「松の神霊の気が伏してできたもの」という「伏霊」に由来する。マツホドの中にマツの根の通っているものを特に茯神といい、その根を茯神木という。また外皮は茯苓皮、外皮に近い淡紅色の部分を赤茯苓という。茯苓は無味無臭で噛むと歯に粘りつく。

 硬くて、断面が純白できめの細かいものが良品とされ、雲南省に産する天然品が有名である。また 安徽省などではマツの材でマツホドを培養し、土の中に埋めて生産する人工栽培が行われている。かつて日本に流通していた茯苓は、日本産、韓国産、北朝鮮産の野生品であったが、近年、多量に輸入されている中国産茯苓はほとんどか栽培品である。

 茯苓にはトリテルルペノイドのエブリコ酸、パキマ酸、ツムロース酸、多糖体のパキマン、ステロールのエルゴステロールなどが含まれ、水製エキスには利尿、抗潰瘍、血糖降下、血液凝固抑制作用が、パキマンには免疫増強作用などが知られている。

 漢方では利水消腫・健脾・安神の効能があり、水腫や痰飲の治療には必ず用いられる要薬である。とくに脾胃の気虚による湿や痰飲の症状に適している。茯苓は「補にして峻ならず、利にして猛ならず」といわれるように性質は穏やかで、正虚(脾虚)と邪盛(湿盛)の両面から扶正去邪を行うとされている。また心脾を補い、情緒不安定や動悸、不眠などにも用いるが、一般に安神には茯神の方を用いる。

 茯苓皮は補益作用はないが、利水作用に優れ、皮膚の水腫に用いる。赤茯苓には清熱利湿の効能があり、熱淋や血淋といわれる膀胱炎などの排尿以上に用いる。ちなみに茯苓の粉末と米粉を混ぜて作った薄い餅に、胡麻や胡桃、松の実などの餡をはさんだ「茯苓もち(茯苓夾餅)」が北京特産の銘菓として知られている。

伏竜肝

2014年11月05日 | 健康
伏竜肝(ぶくりゅうかん)

 中国華北地方の黄土で作ったカマドを長期間使用した後、カマドの底中央にある焼けた土塊を用いる。焦げて黒くなった部分は除く。日本では素焼きの土器を焼いたものや長年使った七輪を砕いたもので代用している。金匱要略にある黄土湯の黄土は伏竜肝のことであるが、もとの土も黄土の名で小薬に用いることもある。

 成分はおもにケイ酸、酸化アルミニウム、酸化鉄からなり、そのほかに酸化マグネシウム、酸化ナトリウムなどを含む。漢方では止吐・止血の効能があり、王と、妊娠悪阻、腹痛、下痢、吐血、下血、血尿、性器出血などに用いる。

 下血や吐血、不正性器出血などの出血に地黄・阿膠などと配合する(黄土湯)。妊娠悪阻には小半夏湯に茯苓・陳皮と加味する(虎翼飲)。不正性器出血や帯下などに艾葉・赤石脂などと配合する(伏竜肝湯)。

 一般に寒証の出血、嘔吐、下痢に用い、熱証には用いない。また修治法のひとつに伏竜肝の細粉を鍋の中に生姜などの生薬と一緒に炒る土炒法というのがある。