健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

猪苓

2013年12月30日 | 健康
○猪苓(ちょれい)

 日本の北海道や東北地方、朝鮮半島、中国各地などに分布する担子菌類サルノコシカケ科のチョレイマイタケ(Polyporus umbellatus)の乾燥した菌核を用いる。

 チョレイマイタケは山林中のブナ、ミズナラ、カエデ、クヌギなどの腐食した根に寄生するキノコで、地上部は食用になる。薬用にする菌核は落葉の堆積した浅い地中に生じ、表面が黒褐色をした凹凸のある不成形の塊状で、この塊がブタ(猪)の糞に似ていることから猪苓の名がある。

 薬材は5~15cmくらいの黒褐色をした塊であり、新鮮なものは内部は白色であるが、時間が経つと褐色を帯びる。現在、日本の流通品のほとんどは中国産であり、中国では陜西省や雲南省に多く産し、とくに陜西産の品質がよいといわれる。

 猪苓にはエルゴステロール、αヒドロキシテトラコザン酸、多糖類のグルカンなどが含まれ、利尿、抗菌、抗腫瘍作用などが認められている。漢方では利水消腫・通淋の効能があり、排尿減少、浮腫、脚気、下痢などに用いる。

 猪苓の利尿作用は茯苓よりも強いとされ、また清熱の性質も若干あるため熱象(炎症)を伴う浮腫にも応用できる。癌治療の臨床研究として、猪苓は癌患者の細胞性免疫機能を向上させ、抗癌剤と併用すれば、その副作用を軽減することが報告されている。

苧麻根

2013年12月27日 | 健康
○苧麻根(ちょまこん)

 中国からマレーシアを原産とするイラクサ科の多年草ナンバンカラムシ(Boehmeria nivea)の根を用いる。また茎皮を苧麻皮、葉を苧麻葉、花を苧麻花という。

 古くから日本でも栽培され、野生化した帰化植物で、カラムシという名は韓国から渡来したことを表している。カラムシはチョマ(苧麻)ともいい、現在でも繊維用作物として各地で栽培され、茎の強い繊維を漁網や船舶用のロープなどの原料としている。弥生時代の遺跡からカラムシの布がみつかり、日本における最初の織物と考えられている。

 根にはエモジン型アントラキノンが含まれ、止血作用が知られている。漢方では清熱・通淋・止血・安胎・解毒の効能があり、膀胱炎など(五淋)の治療や妊娠時の性器出血や胎動不安、小児の丹毒などに用いる。化膿性の皮膚疾患にはつき汁や煎液で患部を洗う方法もある。

 苧麻皮や苧麻葉は肛門の腫れや痛み、泌尿器疾患、乳腺炎に、苧麻花は麻疹の治療に用いる。

猪胆

2013年12月26日 | 健康
○猪胆(ちょたん)

 イノシシ科の動物ブタ(Sus scrofa domestica)の胆嚢を猪胆といい、胆汁を猪胆汁という。ブタは主要な家畜であり、中国では紀元前2800年頃から飼育されていたという。

 ブタはイノシシを飼い慣らした家畜であり、品種はかなり多い。性質は温和で、人に慣れ、雑食性で適応力が強い。ブタはあらゆる部分が薬用にされ、皮膚(猪膚)、脂肪(猪脂)、肝臓(猪肝)、胃(猪肚)、大腸(死猪腸)などがある。

 胆汁の成分は胆汁酸、胆汁色素などが含まれ、鎮咳、消炎、抗菌作用などが知られている。漢方では清熱・止咳・解毒の効能があり、熱性疾患、黄疸、下痢、便秘、百日咳、腫れ物などに用いる。

 下痢が続いて脈がかすかなときには白通湯に猪胆汁を加える(白通加猪胆汁湯)。なお猪肚は頻尿治療薬の猪肚丸、猪腸は痔出血に用いる臓連丸に配合されている。

楮実

2013年12月24日 | 健康
○楮実(ちょじつ)

 日本の中部地方以南および中国、台湾に分布するクワ科の落葉高木カジノキ(Broussonetia papyrifera)の成熟果実を用いる。コウゾ(B.kazinoki)とともに和紙の製紙原料として栽培されている。

 果実にはサポニン、ビタミンB、脂肪酸のリノール酸などが含まれている。漢方では強壮・利尿の効能があり、インポテンツや腰や膝の萎弱、浮腫などの症状に用いる。

釣藤鉤

2013年12月20日 | 健康
○釣藤鉤(ちょうとうこう)

 中国南部、日本では関東以西の産地に自生するつる性木本、アカネ科のカギカズラ(Uncaria rhynchophylla)の鉤の付いた茎を用いる。中国にはトウカギカズラ(U.sinensis)など多種の同属植物があり、それらも使用している。

 中国ではかつては釣藤と記していたが、現在では鉤(鈎)藤と書く。鉤とはかぎのことで、つるの側枝がかぎ状に曲がり、絡みつくようになっているので鉤藤といカギカズラの名がある。古くは民間療法法として樹皮を用いていたが、経験的に鉤刺を用いるようになり、漢方薬に配合されるようになった。

 茎にはアルカロイドのリンコフィリンやヒルスチン、コリナンテインなどが含まれ、鎮静・降圧・血管拡張などの作用が認められている。漢方では平肝・止痙の効能があり、高血圧の随伴症状や精神的な興奮症状、不眠、心悸亢進などに用いる。なお長時間煎じると効力が弱くなるため、後入れ(後下)する。

 近年、釣藤鉤にアルツハイマー病の原因といわれるβアミロイドに対して凝集作用が認められ、認知症に対する臨床効果が研究されている。

丁字

2013年12月19日 | 健康
○丁字(ちょうじ)

 インドネシアやマレーシア、東アフリカなどで栽培されているフトモモ科のチョウジ(Syzygium aromaticum)の蕾を用いる。果実は母丁香といい、また古代中国では果実の形が鶏の舌に似ているとして鶏舌香とも呼ばれていた。チョウジという名前の由来は蕾の形が釘に似ているためであり、英語のクローブも仏語のクルー(釘)に由来する。

 チョウジはインドネシアのモルッカ諸島原産で、18世紀までモルッカの特産であったが、現在では東アジア(ザンジバル)の生産が90%を占めている。チョウジは香料として紀元前よりインドやヨーロッパにまで知られ、今日、スパイスとして肉料理やケーキ、プディングなどによく用いられている。かつて日本女性の使っていた「びんつけ油」の匂いも丁字であり、現在では石鹸や整髪料に広く使われている。インドネシアでは丁字入りのタバコも有名である(クレテック)。

 丁字を水蒸気蒸留して得られた精油を丁字油といい、成分としてオイゲノールやチャビコール、フムレン、カリオフェレンなどが含まれている。オイゲノールには殺菌・防腐のほか、鎮静・鎮痙作用なども認められている。またオイゲノールは口腔内殺菌や虫歯の鎮痛にも用いられている(今治水)。オイゲノールをアルカリと熱を加えて異性化させた後に酸化すると香料のバニリンが得られる。

 漢方では温裏・健胃・止嘔・補陽の効能があり、おもに芳香性健胃薬として用いる。たとえば胃腸が冷えたために生じる嘔吐、下痢、腹痛、消化不良に茯苓・半夏などと配合する(丁香茯苓湯)るまた吃逆(しゃっくり)には柿蒂などと配合する(丁香柿蒂湯)。

 中国では古くから口臭を消すために口に含む習慣があり、口中清涼剤の仁丹にも配合されている。また多くの家庭薬の薬香料としてチョウジ末やチョウジ油、オイゲノール、バニリンの名で配合されている。母丁香には芳香はないが、同じく温裏の効能があり、嘔吐、腹痛、ヘルニア、口臭などに用いる。

地楡

2013年12月16日 | 健康
地楡(ちゆ)

 日本各地およびアジアからヨーロッパにかけて分布するバラ科の多年草ワレモコウ(Sanguisorba officinalis)の根および根茎を用いる。ワレモコウは秋の野草の一つで生け花にも用いられ、また春先には若い葉をおひたしにして食べる。

 ワレモコウは「吾木香」とか「吾亦紅」と書くが、語源は明らかではない。吾木香とはジャコウソウやオケラなど芳香のある植物に付けられた名前とされているが、ワレモコウには特によい匂いはないため吾亦紅という字を当てることもある。赤い花穂は染料にも用いられている。

 成分として根にタンニンが約17%、サポニンが3~4%含まれ、サポニン成分としてサンギソルビン、チユグルコサイドなどが知られている。薬理学的に出血時間の短縮や血管収縮などの止血作用が認められているほか、抗菌作用、抗火傷作用なども知られている。

 漢方では清熱涼血・止血の効能があり、吐血、鼻血、下血、湿疹、腫れ物、外傷、火傷などに用いる。止血には地楡の外が黒くなるまで炒った地楡炭が適している。とくに慢性の血便や下痢に伴う血便、痔出血、不正性器出血など下半身の出血に適するとされている。

 たとえば痔の出血や下血には槐花・阿膠などと配合したり(清肺湯)、槐角・黄芩などと配合する(浸膏槐角丸)。また火傷や切り傷の創面に細末を油でねって軟膏にしたものや、チンキにしたものを外用する。また煎じた液も湿疹、打ち身、捻挫などに外用する。民間療法では下痢のときに煎じて服用したり、扁桃炎や口内炎ではうがいに用いる。

 近年、根から抽出したエキス、ワレモコウエキスに収斂、チロナーゼ活性阻害、抗菌・抗炎症作用などがあるとして、スキンケア製品の素材として利用されている。

茶葉

2013年12月13日 | 健康
○茶葉(ちゃよう)

 中国原産のツバキ科の常緑小高木チャ(Camellia sinensis)の葉の乾燥したものを用いる。茶の変種としてインドのアッサム地方原産のアッサム茶もある。

 中国では紀元前10世紀の周の時代に薬用とされ、紀元前3世紀ごろに嗜好品とされ始め、8世紀の唐の時代に栽培や製茶が普及した。日本には天平時代に最澄が種子を持ち帰ったとされている。さらに鎌倉時代には栄西が「喫茶養生記」を著し、喫茶の風習が広まった。ヨーロッパには16世紀に中国や日本から紹介され、喫茶が流行した。

 一般に普及している茶はその加工法で大別すると乾燥茶の緑茶、発酵茶の紅茶、半発酵茶の烏龍茶に区別される。茶の葉を摘んでそのまま放置すると葉の中の酸化酵素により黒く変化する。このため緑茶は採取した新鮮な若葉をせいろの中で高温加熱して酸化酵素の作用を止め、さらに加熱しながら揉んで乾燥させて製品化する。日本の煎茶や玉露、番茶は緑茶の種類である。

 茶葉にはポリフェノール(カテキン類)、アルカロイドのカフェイン、アミノ酸の一種のテアニン、ビタミンCやビタミンB群などが含まれ、茶の苦味はカフェイン、渋味はカテキン類、旨味はテアニンに起因する。茶ポリフェノールは、その性質からタンニンと呼ばれていた成分であるが、その茶ポリフェノールの約70%はフラボノールのカテキン類である。この茶カテキンには、エピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレートがあり、とくにエピガロカテキンガレートが一番多く含まれ、しかも生理活性が最も強いといわれている。

 茶ポリフェノールには、抗う蝕、消臭、コレステロール吸収阻害、抗菌・抗ウイルス、抗腫瘍、脂肪燃焼、腸内細菌改善、抗酸化作用などが知られている(サンフェノン)。さらに高濃度の茶カテキンを摂取することにより、脂質代謝が活発になり、脂質の燃焼が促進され、体脂肪が減少することが明らかとなり、特定保健用食品として認められている(ヘルシア緑茶)。また、カフェインには中枢神経興奮、強心利尿、胃酸分泌刺激、熱酸性量の増加、体脂肪の分解などの作用が認められている。一方、テアニンには、脳神経をリラックスさせ、イライラや過食を抑え、睡眠の質を向上させる働きがあるといわれている。

 漢方では清頭目・利尿・止瀉の効能があり、頭痛、多眠、下痢などに用いる。感冒などによる頭痛には白芷・川芎などと配合する(川芎茶調散)。細菌性下痢に濃く煎じた渋茶を服用する。民間では煎液を火傷やオムツかぶれの湿布薬として、また口内炎や咽頭炎、感冒予防などの含嗽薬としても利用している。ただし、不眠症の人の服用には注意が必要である。

 近年、摘んだ茶葉を数時間、窒素ガスの中に保存してから通常の方法でお茶を製造するとγ-アミノ酪酸(ギャバ:GABA)の含有量が通常のお茶の20~30倍に増加することが発見され、このお茶を服用することで血圧降下や精神安定などの効果があると期待されている。

知母

2013年12月12日 | 健康
○知母(ちも)

 中国東北部から北西部にかけて分布し、日本にも江戸時代に渡来し、栽培されているユリ科のハナスゲ(Anemarrhena asphodeloides)の根茎を用いる。葉がスゲに似て花がそれより美しいためその名がある。中国河北省が主産地として有名で、品質の良いことから西陵知母ともいわれている。

 知母にはステロイドサポニンのチモサポニンやキサントン配糖体のマンギフェリンなどが含まれ、抗菌・解熱・血糖降下作用などが認められている。漢方では清熱瀉火・滋陰清熱の効能があり、発熱による脱水や煩躁、肺病の咳嗽、便秘、排尿障害などに用いる。

 とくに実熱と虚熱の区別なく、高熱や微熱のいずれにも応用できる特徴がある。また滋潤作用があるため、熱病による口渇や煩熱など脱水症状のほか、陰虚による口渇やのぼせ、手足のほてり、興奮症状にも効果がある。このため知母は「上にて肺熱を清し、下にて腎を滋潤する」といわれている。

 近年、ハナスゲの根の成分サルササポゲニンに由来するポルフィリンに脂肪細胞の分化を促進し、増殖させ、脂質を蓄積させる作用が発見され塗るだけでバストアップ効果があると注目されている。

蜘蛛

2013年12月11日 | 健康
○蜘蛛(ちしゅ)

 コガネグモ科のオニグモ(Aranea ventricosa)の全虫を用いる。オニグモはダイミョウグモともいわれ、日本各地に分布する。全体が黄褐色で腹部は丸くて大きく、体長はオスが約2cm、メスが約3cmである。夕方になると大きな円い網を張り、朝にたたむ習性がある。このクモを捕獲した後、沸騰した湯につけて殺し、取り出して乾燥する。

 漢方では解毒・消腫の効能があり、陰囊ヘルニアや顔面神経麻痺、ひきつけ、腫れ物、毒虫の咬刺傷などに用いる。金匱要略では陰狐疝気(陰囊ヘルニア)のときに蜘蛛をあぶったものを桂枝と配合して用いている(蜘蛛散)。