健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

半夏

2014年06月27日 | 健康
○半夏(はんげ)

 日本各地、朝鮮半島、中国などに分布するサトイモ科の多年草カラスビャクシ(Pinellia ternata)の球茎を用いる。半夏の名は夏の半ばに花が咲く(そのころに採取する)ことに由来し、カラスビャクシの名は仏炎の形をビャクシに例えたものである。農家の主婦の小遣い稼ぎになることからヘソクリという俗名もある。もっとも塊茎から葉柄をとった中央の窪みがヘソのようであるという説もある。

 採取した球茎を水洗いしてから塩水に入れ、上皮を除去した後、塩抜きして乾燥する。生で用いると弱い毒性や刺激性があるため、中国では一般に修治した製半夏を用いる。通常、10日間ほど冷水に浸し、その後、明礬で煮て処理したものを清半夏、明礬や甘草、石灰で処理したものを法半夏、明礬と生姜で煮て処理したものを姜半夏という。生の半夏を用いるときには生姜と配合して煎じる。

 半夏を口に含むとえぐみが強く、チクチクと口腔粘膜を刺激するが、これはシュウ酸カルシウムの針晶あるいはジグリコシリックベンズアルデヒドが原因ではないかといわれている。

 半夏の成分にはホモゲンチジン酸、ジヒドロキシベンズアルデヒド、エフェドリン、コリンなどが含まれ、鎮吐、鎮咳、唾液分泌亢進、腸管内輸送促進などの薬理作用が報告されている。漢方では理気・止嘔・去痰の効能があり、悪心、嘔吐、消化不良、咳嗽、喀痰、不眠などに用いる。

 半夏の性質は温で燥湿の作用もあるため胃内停水などの痰飲や嘔吐の常用薬である。なお半夏の毒性による口腔内のしびれ感や灼熱感、嗄声などには生姜を用いるとよい。

蕃杏

2014年06月26日 | 健康
○蕃杏(ばんきょう)

 日本の海岸をはじめ、太平洋沿岸の各地の砂地に分布するツルナ科の多年草ツルナ(Tetragonia tetragonoides)の全草を用いる。ツルナの果実は海流に乗って分散するため、東南アジアやオーストラリア、南米などにも広く分布している。

 茎や葉は肉質であり、新芽や葉はホウレンソウのように食用にでき、英語ではニュージーランドスピナッチともいう。日本にもツルナ(蔓菜)はハマナ(浜菜)、ハマヂシャ(浜千舎)などと呼ばれて食用にされることもあるが、アクが強くてざらつく感じが残るためあまり利用されない。

 成分には鉄やカルシウム、ビタミンA・Bなどのほか、酵母菌属に対して抗菌作用のあるテトラゴニンなどが含まれている。一般に「浜ぢしゃ」の名で日本の民間薬として知られ、胃炎などの胃の痛みに効果がある。昭和10年代の初期に胃癌や食道癌に効果があるとしてブームになったが、とくに根拠はなさそうである。

馬蘭子

2014年06月24日 | 健康
○馬蘭子(ばりんし)

 中国の北部から東北部、朝鮮半島に分布するアヤメ科の多年草ネジアヤメ(Iris pallasii)の種子を用いる。神農本草経には蠡実、名医別録には茘実とある。根は馬蘭根、花は馬蘭花、葉は馬蘭葉といい、これらも薬用とする。花が小型のアヤメのように美しいため日本でも観賞用に植栽され、葉がねじれているためネジアヤメ(捩菖蒲)と呼ばれている。

 種子にはパラソームA・B・Cなどが含まれ、避妊作用や抗癌作用などが報告されている。漢方では清熱燥湿・止血の効能があり、黄疸型の肝炎や下痢、性器出血、鼻血、咽頭腫痛などに用いる。蛇の咬傷やキノコ中毒にも効果があるといわれている。

 馬蘭根、馬蘭花、馬蘭葉にはいずれも清熱・解毒の効能があり、おもに咽頭の炎症に用いられる。中国では古くから抗癌薬として使用されており、1996年には製剤化されている。

葉蘭

2014年06月20日 | 健康
○葉蘭(はらん)

 中国中南部の地方原産とするユリ科の常緑多年草ハラン(Aspidistra elatior)の根茎を用いる。古い時代に日本に渡来したとされているが、鹿児島県の黒島に自生地があり、ここが原産地とも考えられている。ハランはバレン、バラン、ヒトツバなどと呼ばれ、古くから関西では葉を弁当や寿司折りの間仕切りとして用いている。

 根茎にはサポニンのアスピジストリン、ジオスゲニンなどが含まれる。漢方では用いず、中国でも日本でも民間薬として利用される。民間療法では利尿、強心、去痰の効能があり、浮腫や肺結核、喘息などに用いる。止血、止痛薬として下血や腹痛、打撲痛などに用いることもある。かつては強壮薬としても用いられた。

 なお、ハランの果実は「バランの実」といい、黒焼きにしたものを煎じた肺病の薬として咳や痰に用いる。また果実を焼いて食べると小児のひきつけに効くともいわれている。

馬明退

2014年06月19日 | 健康
○馬明退(ばめいたい)

 カイコガ科のカイコ(Bombyx mori)の幼虫の脱皮した抜け殻を用いる。カイコは完全に家畜化された昆虫といわれ、人間が飼育しなければ絶滅するといわれている。カイコの祖先は桑畑の害虫であるクワコという説もあるが、はっきりしていない。

 カイコは卵から孵化した後、幼虫は4回脱皮して熟蚕となり、繭を作って中で蛹に変わる。脱皮する前に、カイコは桑を食べずに胸から上を持ち上げたまま静止する時期があり、これを眠と呼んでいる。この時期に外皮の内側に新しい外皮ができ、頭のほうから古い外皮を脱皮する。薬用にはこの抜け殻を集めて日干しにする。

 漢方では止血・退翳の効能があり、鼻血や下血、子宮出血、歯肉の腫痛、咽頭炎、目翳などに用いる。日本漢方では先天性梅毒などの胎毒の治療に紅花・大黄などと配合する(馬明湯)。ちなみに、韓国では古くから民間療法としてカイコを糖尿病に用いていたが、近年、蚕幼虫の粉末に桑葉由来のDNJが多く含まれていることから、血糖の上昇を浴精することが報告され、糖尿病予防に対する健康食品(おかいこ散)として韓国政府自ら国際特許を取得している。

浜防風

2014年06月16日 | 健康
○浜防風(はまぼうふう)

 日本各地をはじめ、オホーツク海沿岸から台湾にかけての海岸の砂地に分布するセリ科の多年草ハマボウフウ(Glehnia littoralis)の根および根茎を用いる。ハマボウフウの新茎でもやし状になったものは酢の物や刺身のつまなどとして日本料理に用いられ、八百屋防風ともいわれている。

 ただし、このハマボウフウの根の外皮を去り、湯通ししたものを中国では北沙参という。漢方生薬の防風は本来、セリ科のボウフウ(Saposhnikovia divaricata)のことであり、これは日本には自生していない。香りが似ていることから、日本では江戸時代からハマボウフウの根を防風の代用としていた。

 ハマボウフウの根にはフラノクマリン類のインペラトリン、ベルガプテンなどが含まれ、エタノールエキスには鎮痛、解熱作用がある。中国医学では北沙流参として補陰・止咳・去痰の効能があり、慢性気管支炎や肺結核などの陰虚発熱で長引く咳嗽や発熱、口渇などに用いている。

 日本漢方では解表薬の防風の代用として風邪などの発熱、頭痛、関節痛に用いている。また日本の民間では「防風ふろ」といってハマボウフウの根の煮出した液が浴湯料として用いられ、寒いときでも湯冷めしないといわれている。

馬勃

2014年06月13日 | 健康
○馬勃(ばぼつ)

 中国各地に分布するキノコの一種ホコリタケ科の植物、脱皮馬勃(Lasiosphaera fenzlii)や大頽馬勃(Calvatia gigantea)<紫頽馬勃(C.lilacina)の子実体を用いる。

 日本に産するオニフスベ(L.nipponica)のように大きなまんじゅうの形をしており、脱皮馬勃や大頽馬勃は直径15~20cmである。紫頽馬勃は直径5~12cmの紫色の洋ゴマの形をしている。そのほか日本にも産するホコリタケ(Lycoperdon perlatum)なども同様に用いられている。

 脱皮馬勃の子実体にはロイシン、チロシン、エルゴステロール、尿素などが含まれ、ホコリタケにはデヒドロアスコルビン酸、ビタミンC、ゲマンティンのグリコシドなどが含まれている。

 脱皮馬勃には抗菌・止血作用が報告されている。漢方では清熱解毒・止咳・利咽の効能があり、咽頭腫痛や嗄声、咳嗽、吐血、鼻血などに用いる。とくに口腔内の疾患に効果があり、咽頭炎などには粉末を吹きつける。また大頭瘟や丹毒、急性中耳炎、扁桃炎などに黄芩・板藍根などと配合する(普済消毒飲)。外傷や凍瘡には粉末を塗布する。 

馬宝

2014年06月12日 | 健康
○馬宝(ばほう)

 ウマ科のウマ(Equus caballus)の胃腸内にできた結石を用いる。鮓荅とか馬糞石とも呼ばれている。直径10cmぐらいの球形あるいは卵円形で、重さは重いものでは2.5kgのものもある。

 表面はやや青みがかった灰白色で光沢があり、断面も灰白色で中に同心円の渦紋がみられる。顕微鏡でみると草の繊維が認められる。臭いはなく、味は淡いが、馬宝の粉末をスズ箔にのせて下から燃焼すれば馬尿のような臭いがする。

 漢方では鎮驚・化痰・清熱・解毒の効能があり、痙攣や熱病を伴う意識障害、吐血、鼻血、腫れ物に用いる。ちなみにザリガニの胃石も薬として用いられ、喇蛄石、あるいはオクリカンキリと呼ばれていた。オクリカンキリは西洋の薬で、磨り潰して粉状にして小児のひきつけ、胃腸病、浮腫など万能薬として用いられていた。シーボルトが好んで用いたとも伝えられている。

馬鞭草

2014年06月11日 | 健康
○馬鞭草(ばべんそう)

 本州以南の日本各地、世界中の温帯から熱帯に広く分布しているクマツヅラ科の多年草クマツヅラ(Verbena officinalis)の全草を用いる。野原や道端に自生しており、開花期に採取して乾燥する。

 全草の成分としてフラン誘導体のベルベナロールとその配糖体のベルベナリンなどが知られている。漢方では活血・通経・利水の効能があり、月経不順や月経痛、腹部の腫塊などに用いる。また近年、中国では腎炎の浮腫や肝硬変の腹水、マラリアやフィラリアなどの治療に応用されている。

 日本の民間では腫れ物や種々の皮膚病に生の汁を塗布したり、煎液で洗う治療法がある。ただし煎じ液を続けて服用すると食欲が減退するといわれている。欧米ではクマツヅラを神経症や頭痛、肝胆系の治療に利用している。ちなみに古代ギリシャ・ローマ時代では神事や呪術などに用いられ、結石の妙薬とされていた。

ハーブ

2014年06月09日 | 健康
○ハーブ

 ハーブとは、ラテン語の「草」に由来する言葉で、一般にはヨーロッパで料理や治療などに用いられている有用植物をいい、独特の芳香や香味があり、香草、薬草などとも訳されている。かつて東南アジアなどから輸入されていた香辛料をスパイスと呼ぶのに対し、ヨーロッパや地中海沿岸、西南アジアなどに生育する芳香のある草花のことを指していた。

 一般家庭でもハーブはスープや肉料理などの香味料や、ポプリや香粧料などの香料として用いられ、古くからハーブティーとして愛飲されてきた。医療に用いるハーブは、メディカルハーブといい、イギリスなどではハーブ医学協会(The National Institute of Medical Herbalist:1864年設立)などで、ハーブを扱う専門家、ハーバリスト(herbalist)を養成している。

 一方、10世紀頃から、植物の葉や葉から揮発性の精油を抽出する技術が開発され、香料として利用されてきたが、20世紀になって精油を治療に利用するアロマセラピー(芳香治療:Aromatherapy)も登場する。ヨーロッパでのハーブ療法は、中国医学との交流は少なく、独自に発展してきたが、原料となる植物には類似するものも少なくない。ここでは欧米でハーブとしてよく知られる植物に関して、その英名と関連する和漢薬名を以下に紹介する。

アンゼリカ:当帰
エルダー:接骨木
エレキャンペーン:土木香
ガーデニア:山梔子
カモミール:カミツレ
カルダモン:小豆蔲
キャラウェイ:姫茴香
クローブ:丁字
ゲンチアナ:竜胆
コリアンダー:胡荽子
コリダリス:延胡索
コルツフット:款冬花
サフラワー:紅花
サフラン:番紅花
サルサパリラ:土茯苓
ジャスミン:茉莉花
シナモン:肉桂・桂枝・桂皮
ジュニパー:杜松実
ジンジャー:生姜
セージ:薬用サルビア
セントジョーンズワート:小連翹
タイム:麝香草
ターメリック:欝金
デイル:蒔羅子
ナツメグ:肉豆蔲
ハイドランジア:紫陽花
ベアベリー:コケモモ葉
ベイ:月桂樹
バーベイン:馬鞭草
バーベリー:目木
ペパーミント:薄荷
バレリアン:吉草根
フィグワート:玄参
フェヌグリーク:胡芦巴
フェンネル:茴香
マザーワート:益母草
ヤロー:蓍草
ラズベリー:覆盆子
ラベンダー:ラベンダー
ルー:芸香
ローズマリー:迷迭香
ロベリア:半辺蓮
ローズヒップ:営実
ワレリアナ:吉草根・甘松