健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

肉ジュ蓉

2014年03月31日 | 健康
肉蓯蓉(にくじゅよう)

 中央アジアからモンゴル、中国、シベリアの砂漠地帯に分布するハマウツボ科の一年草ホンオニク(Cistanche salsa)や同属植物の肉質茎を用いる。日本では本州の中部以北、北海道に分布するオニク(キムラタケ:Boschniakia rossica)を和肉蓯蓉と称して代用にしている。

 オニクという名は「御肉」と書き、肉蓯蓉を尊重した名前といわれる。これらは他の植物の根に寄生する植物で、たとえばオニクはミヤマハンノキの根に寄生する。いずれも宿根性寄生草のため葉は退化して鱗状となって茎についている。

 肉蓯蓉は別名を大芸といい、春に採取したものは砂に半分埋めて乾燥させ、これを淡大芸(甜大芸)といい、秋に採取したものは水分が多いため塩湖に数年つけてから乾燥させ、これを塩大芸(鹸大芸)という。日本には淡大芸が輸入されている。

 オニクの成分としてボシュニアキン、ボシュニアラクトンなどのモノテルペン化合物、フェニルプロパノイド配糖体のアルカロイドが含まれ、ネコに対してマタタビと同様の生理作用がある。漢方では補肝腎・補陽・潤腸の効能があり、インポテンツや遺精、不妊症、足腰の萎弱に用いられる。

 性質は温であっても乾燥させず、滋陰するが膩ではなく、おもに腎陽を補い、精血を充実させるといった補陽薬のひとつである。滋養する作用が緩慢なために「蓯蓉(従容)」という名があるといわれている。たとえば強壮薬の至宝三鞭丸ナンパオ、薬用養命酒などに配合されている。また潤腸の作用もあり、高齢者などの便秘にも用いる。

 近年、肉蓯蓉と同属植物でタクラマカン砂漠に生育するタマリクス(Tamarix ramossima)の根部に寄生する管花肉蓯蓉(C.tubulosa)が管花地精、カンカなどと呼ばれ健康食品として市販されている。管花肉蓯蓉には老化予防、痴呆改善、免疫強化、強壮などの効能が謳われている。

苦木

2014年03月28日 | 健康
○苦木(にがき)

 日本の各地、東アジアにかけて広く分布するニガキ科の落葉小高木ニガキ(Picrasma quassioides)の樹皮を除いた材を用いる。どの部分も噛むと苦いためニガキという。ニガキ(苦木)というのは和名であるが、中国でも正式な植物名を苦木と定め、生薬として樹皮を苦樹皮あるいは山熊胆という。ちなみにニガキ科の植物にカッシア木、スリナム・カッシア(Quassia amara)やジャマイカ・カッシア(P.excelsa)というのがある。

 カッシア木は古くから苦味健胃薬、寄生虫の駆除、シラミなどの殺虫薬として用いられた。イギリスではスリナム苦木は消化不良の胃腸薬としてよく知られ、またジャマイカ苦木で作ったコップで水を飲むと胃腸が丈夫になるといわれていた。本来、苦木はアッシア木の代用品として日本薬局方に収載されるようになった。

 ニガキの樹皮にはジテルペノイドのクワッシン、ニガキラクトン、ニガキヘミアセタールなどが含まれ、苦味成分のクワッシンには唾液や胆汁の分泌促進や利尿作用がある。漢方では用いないが、太田胃酸などの家庭薬の苦味健胃成分として消化不良、吐き気、下痢などに応用されている。

 ニガキの葉を煎じた液は家畜の駆虫薬や農作物の殺虫薬として、また枝の削ったものを便槽に入れてウジの駆除などに用いられる。

南蛮毛

2014年03月27日 | 健康
○南蛮毛(なんばんもう)

 熱帯アメリカ原産のイネ科の一年草トウモロコシ(Zea mays)の雌花の長い花柱、つまりトウモロコシの毛を用いる。日本市場では南蛮毛とかナンバの毛と呼ばれているが、中国では一般に玉米鬚といい、英語ではコーンシルクという。

 トウモロコシはコロンブスがヨーロッパに伝え、日本には安土・桃山時代にポルトガルの宣教師から伝えられたため、古くは南蛮黍と呼ばれていた。トウモロコシはコムギ、コメと並ぶ三大穀物の一つで、食用や飼料として世界各地で栽培され、日本でも北海道などで多く作られている。

 果実からはコーン油やデンプン(コーンスターチ)が得られ、医薬品関係ではコーン油は軟膏の基剤や注射溶剤として、コーンスターチは賦形剤として利用されている。生薬はトウモロコシの雌花の花柱をむしり取り、乾燥する。

 成分にはシトステロール、スチグマステロール、イソクエルシトリン、硝酸カリウムなどが含まれ、利尿、血圧効果、胆汁分泌促進作用などが報告されている。なおトウモロコシの未熟果実に含まれるゼアチンには細胞分裂を促進する作用がある。

 コーンシルクは欧米で古くから利尿薬として、またフランスでは胆汁分泌を促進する薬として知られていた。日本でも民間薬として単味で腎炎や妊娠時の浮腫に用いられ、利尿薬として知られる西瓜糖や千香煎にも配合されている。漢方では余り用いられないが、近年、中国でも利尿・利胆薬として脚気や腎炎、浮腫、肝炎、腎結石、胆石、高血圧、糖尿病などに応用されている。

南天実

2014年03月26日 | 健康
○南天実(なんてんじつ)

 中国やインド、日本の南部に分布しているメギ科の常緑低木ナンテン(Nandina domestica)の果実を用いる。中国では南天竹子と呼ばれている。秋から冬にかけて果実が赤く熟し、よく低木などに植栽されている。果実は赤い色が一般的であるが、ときに白色のシロナンテンがあり、市場品でも赤南天と白南天とに区別されている。

 古くから薬用にはシロナンテンの果実のほうが賞用されるが、とくに根拠はない。日本ではナンテンは「難転」に通じるとして好まれている。古くから日本の風習として赤飯などの上にナンテンの葉があしらわれている。葉の成分にはナンジニンが含まれ、熱と水分でシアン化水素が発生し、それに赤飯の腐敗を予防する作用があるという説明がなされている。

 果実にはアルカロイドのドメスチンやイソコリジンなどが含まれ、ドメスチンには知覚神経や抹消運動神経を麻痺させ、心臓の運動を抑制する作用がある。漢方では止咳の効能があり、咳嗽や喘息に用いる。しかし漢方処方としてはあまり用いられず、日本や中国の民間療法で百日咳や気管支喘息などに用いられている。近年、ナンテンの葉から研究されて開発されたトラニラストは抗アレルギー薬(リザベン)として利用されている。

南瓜子

2014年03月25日 | 健康
○南瓜子(なんかし)

 南メキシコから中米にかけてを原産とするウリ科のつる性一年草カボチャ(Cucurbita moschata)の種子を用いる。日本には16世紀、豊後の国に漂着したポルトガル船で伝えられたといわれ、カボチャの名は「カンボジアに生じたる」という誤解に由来する。

 カボチャには関東ではトウナス、関西ではナンキン、九州ではボウブラといった方言がある。トウナス(唐茄子)、ナンキン(南京)の名は中国経由で渡来したことを表し、ボウブラはアボーブラというカボチャのポルトガル語に由来する。

 江戸時代から冬至にカボチャを食べると中風や風邪を患わないという風習が広まっているが、これは長期間保存のきくカボチャで冬期のビタミン源を補うという生活の知恵である。中国ではカボチャの種子をスイカやヒマワリの種などと同じく瓜子儿と称し、歯で殻を割り、中の実をお茶受けとして食べる。

 カボチャの種子にはリノール酸やパルミチン酸などの脂肪酸やビタミンC・B1、ククルビチンが含まれ、ククルビチンには条虫を麻痺させる作用がある。漢方でも駆虫薬として知られる。

 回虫駆除には単独でも用いるが、条虫駆除には檳椰子と配合して駆虫効果を高める。南瓜子の皮を除いて粉末にしたものを、麻の起床空腹時に服用し、2時間後に檳椰子の煎液を服用し、さらに30分後に下剤を服用する。ブタやウシの寄生虫駆除に応用されている。

 そのほか産後の浮腫や母乳の不足にも用いる。近年、同属植物のペポカボチャの種子が頻尿や尿失禁などの排尿障害に効果があるとして注目されている。

2014年03月24日 | 健康
○鉛(なまり)

 は重くて柔らかい金属で展性・延性に富み、ローマ時代には水道管や浴場、食器や壺として使用されていた。おもな原鉱石は方鉛鉱(PbS)であり、そのほか白鉛鉱(PbCO3)や硫酸鉛鉱(PbSO4)などもある。

 生薬に用いる鉛には金属の黒鉛のほか、鉛の化合物として一酸化鉛(PbO)の密陀僧、四三酸化鉛(Pb3O4)の鉛丹(別名:光明丹)、酢酸鉛の鉛霜(別名:鉛糖)、塩基性炭酸鉛(2PbCO3・Pb(OH)2)の鉛粉(別名:鉛白)などがある。

 鉛中毒は急性の場合は急性胃腸炎の症状を呈するが、ほとんどが慢性であり、腹痛や口内炎、脱力感が現れ、皮膚が蒼白になり、歯茎が鉛緑といわれる灰白色に変化する。また鉛毒性痛風や鉛毒性脳炎なども知られている。

 漢方では性味は甘・寒、有毒で、鎮逆・堕痰・殺虫・解毒の効能がある。腎不納気による喘息や胸に痰が詰まった状態、気の上衝、腹が冷えて痛むときなどに用いられる黒錫丹が有名である。しかし、毒性があるので近年は用いられない。

夏皮

2014年03月22日 | 健康
○夏皮(なつかわ)

 ミカン科の常緑低木ナツミカン(Citrus natsudaidai)の成熟した果実の果皮を用いる。未熟果実はダイダイなどとともに枳実、枳殻としても用いられる。ナツミカンは18世の初め、山口県長門市青梅島の海岸に漂着した果実の種子を蒔いたものが原木とされている。ナツカン(夏柑)、ナツダイダイ(夏橙)ともいう。

 酸味が強いため、江戸時代には食酢として用いられていたが、夏に食べると美味しいことから栽培されるようになった。昭和初期にナツミカンの突然変異種で酸味の少ないアマナツが大分県の果樹園で発見され、現在では生産されているほとんどがアマナツである。

 夏皮には特異な芳香と苦味があり、d-リモネンを主成分とする精油、フラバノン配糖体のナリンギン、クマリン誘導体などが含まれている。夏皮は橙皮などの代用や芳香性健胃薬の家庭薬、芳香料として浴剤などに用いられる。

 新鮮な果皮はオレンジ油やミカン油の原料となる。またナツミカン、ダイダイなど柑橘類の果皮の油分を除いた後に末としたものは柑皮末といい、賦形剤として用いられる。

豚脂

2014年03月20日 | 健康
○豚脂(とんし)

 イノシシ科動物のブタ(Sus scrofa domestica)の脂肪を用いる。ブタは古くから家畜として飼育されていた動物で、薬用にもあらゆる臓器が利用されている。ブタの脂肪はラードともいわれ、食用や石鹸の原料のほか軟膏基剤としても重要である。

 組成は飼料や品種、採油する部位により著しく異なるが、一般に成分はオレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸、βパルミトディオレインのグリセリドなどが含まれる。豚脂は常温で無色半透明の半固体であり、融点は36~42℃と人間の体温とほぼ同じである。

 軟膏基剤として利用される利点は四季を通じて半固体で、皮膚に対する刺激が少なく、皮膚への浸透性も優れている。一方、欠点としては臭いやベトつきがある。薬用には一般に腹部の脂肪が用いられ、臭いの少ないものが良品である。

 漢方では補虚・潤燥・解毒の効能があり、皮膚の亀裂や便秘、咳嗽などに用いる。火傷や霜焼け、ひび、痔患などに胡麻油・紫根・当帰などと配合する(紫雲膏)。金匱要略の中に、黄疸で尿利の悪いときの内服薬として猪膏に血余炭と配合した猪膏髪煎が収載されている。

登呂根

2014年03月19日 | 健康
○登呂根(とろこん)

 日本各地、朝鮮半島、中国などに分布するナス科の多年草ホウズキ(Physalis alkekengi)の根を用いる。中国では根を酸漿根といい、全草を酸漿、がくを挂金灯という。日本では果実を登呂実という。

 花の後ろにがくが肥大し、果実を包みこみ、鮮やかな赤に変化する。中には赤い液果があり、中の種子を取り出してや手遊びに用いられる。がくの様子から燈籠草ともいわれ、日本の登呂根の名はそれに由来する。液果には酸味があるため、中国では酸漿と呼ばれている。

 全草には苦味成分のフィサリンやフラボノイドルテオリン、根にはチグロイルオキシトロバンが含まれている。薬理的に煎液に抗菌作用、子宮興奮作用などがあり、また果実には解熱・強心作用がみられる。

 漢方では清熱・利水の効能があり、マラリアや黄疸、浮腫に用いる。全草には活血・化痰・止痛の効能があり、咳嗽、吐血、打撲傷、腫れ物などに用いる。原南陽も咳止めの妙薬として果実の黒焼きを用いた。また生の果実は虫下し、根や全草は発熱や咳嗽、淋病、婦人病、、母乳不足などに用いる。

 かつてホウズキの青い果実を鎮静剤に、赤い果実は腹痛など胃腸病全般に用いた。いずれの部分も子宮を収縮させるため、妊娠中には用いないほうがよい。古くは堕胎薬としても知られていたが、堕胎には根を煎じて服用するだけでなく、根を子宮に入れる方法もあった。

土木香

2014年03月17日 | 健康
○土木香(どもっこう)

 ヨーロッパ、北アジア原産で北米などでも野生化しているキク科の大型多年草オオグルマ(Inula helenium)の根を用いる。日本には江戸時代に薬用として渡来し、大和や信濃などで栽培されていたと伝えられている。

 木香とはインド原産のキク科のモッコウ(Saussurea lappa)の根をいうが、木香の代用にされることから土木香の名がある。木香よりも弱いが、土木香にも芳香がある。欧米ではリキュールやベルベットの香料、菓子原料として、またドイツではスープなどにも入れられる。

 根にはアラントラクトンを主成分とする精油やイヌリンが含まれ、アラントラクトンは家畜の駆虫作用や抗菌作用などがある。本来、ヨーロッパの薬草(エレキャンペーン)であり、発汗、利尿、去痰薬として知られている。かつては結核の特効薬といわれ、今でも喘息や気管支炎などの呼吸器系の治療に用いられている。また疥癬やヘルペスなどの皮膚病の外用薬としても用いられる。

 漢方では木香と同様に健胃・理気・止痛の効能があり、脇腹部の脹満や疼痛、嘔吐、下痢、マラリアなどに用いる。江戸時代には腹痛や胃腸炎の製薬として知られた木香丸には香附子・黄柏・胡黄連とともに土木香が配合されていた。現在でも家庭薬の賦香料として用いられている。