健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

松香

2013年04月30日 | 健康
○松香(しょうこう)

 中国の中南部の各地に分布しているマツ科の常緑高木タイワンアカマツ(Pinus massoniana)やユシュウ(P.tabulaeformis)などのマツの幹からとった樹脂を用いる。枝や幹の節は松節、葉は松葉といい薬用にする。

 マツの幹を刀でV字に削り、流出した油状樹脂を採取する。この粘着性の樹脂は生松脂あるいはテレビンチナ(テレメンチナ)という。テレビンチナには皮膚刺激性があり、吸出し膏としても用いる。このテレビンチナを水蒸気で蒸留した精油がテレビン油であり、精油を除いた残りの滓を冷却して固形にしたものを松香あるいはロジン(マツヤニ)という。

 松香とロジンは成分は同じであるが、ロジンのほうがより精製されている。松香は不規則、半透明な琥珀色の塊で、常温では堅くて断面には光沢がある。成分にはアビエチン酸、ピマール酸などが含まれる。ロジンは絆創膏や硬膏の基剤として用いる。また野球の投手が滑り止めに用いている袋に入った粉末もロジンである(ロジンバック)。

 漢方では排膿・生肌・止痛の効能があり、皮膚化膿症や皮膚病、掻痒症、痔、外傷、筋肉痛、歯痛などに用いる。一般に研って粉末にしたものを外用にしたり、丸剤、散剤として服用する。

 排膿薬としてよく知られる吸出し青膏などの基剤として木蠟などとともに配合されている。またテレビン油はリウマチ、神経痛の塗布剤としても用いる。

小薊

2013年04月24日 | 健康
○小薊(しょうけい)

 九州の対馬列島、朝鮮半島、中国の東北部にかけて分布するキク科の多年草アレチアザミ(Breea segetum)の全草又は根を用いる。アレチアザミの花はアザミに似ているが、葉の形は全く異なり、アザミ属ではない。

 一方、アザミとして代表的なノアザミ(Cirsium japonicum)の全草や根は大薊と呼ばれている。また東北地方や北海道、中国東北部からシベリアにかけて分布するエゾノキツネアザミ(B.setosa)も小薊として用いる。

 詳細は不明だがアレチアザミの全草にアルカロイドやサポニンが含まれ、止血、抗菌作用などが報告されている。小薊は大薊と同様に清熱涼血・止血の効能があり、鼻血、喀血、血尿、血便などの症状に用いる。小薊はとくに血尿に効果があり、尿路結石や膀胱炎などによる血尿に藕節蒲黄などと配合する(小薊飲子)。

 新鮮な生のものほど止血作用に優れ、搾った汁を単独で用いる。煎じる場合でも長時間煎じないほうがよい。また皮膚の腫れ物や化膿に内服あるいは外用として用いる。近年、中国では急性肝炎や腎炎、高血圧などに対しての臨床効果が報告されている。

生姜

2013年04月23日 | 健康
○生姜(しょうきょう)

 熱帯アジア原産で日本にも古くに渡来したショウガ科の多年草ショウガ(Zingiber officinale)の根茎を用いる。ショウガは食料や香辛料のジンジャーとしても広く用いられている。

 中国で生姜といえば生のヒネショウガのことである。日本でも本来、生姜といえば八百屋にあるヒネショウガのことであったが、日本薬局方では生のものは扱わずに乾燥させたものを生姜とした。このため日本では生のショウガを特に鮮姜といって区別するが、ほとんど用いられていない。また日本でいう生姜は乾燥させているため乾生姜ということもある。

 一般に乾生姜を用いる場合、処方中の生姜の重さの1/3~1/4の量にして代用する。中国と日本での呼称が異なるため注意する必要がある。ここでは本来の生姜、つまり生のヒネショウガについて説明する。

 成分には辛味成分のジンゲロールやショウガオールが含まれ、解熱・鎮痛・鎮咳・鎮吐作用などが認められている。漢方では解表・止嘔の効能があり、外感風寒証や胃寒による嘔吐などに用いる。解毒の効能もあり、半夏や天南星の刺激性や毒性を緩和する。

 そのほか健胃作用もあるため多くの補益剤に大棗・甘草とともに配合されている。ちなみに欧米では育毛のため生の汁や浸出液で頭皮をマッサージするといわれている。

紫陽花

2013年04月22日 | 健康
○紫陽花(しょうか)

 日本の各地で栽培されているユキノシタ科の落葉低木アジサイ(Hydrangea macrophylla)の根や葉、花を用いる。アジサイは日本でガクアジサイ(H.macrophylla.f.normalis)から改良された品種で、鎌倉時代に園芸化され、江戸時代には一般に広まった。それとともに中国にも伝えられ、さらに18世紀後半にはイギリスにも紹介された。シーボルトが愛人のお滝さんにちなみH.otaksaと命名したことも有名である。

 アジサイの花は土壌の酸性度と関係し、酸性度の高いときには青色、低いときには桃色が強くなる。花にはルチン、葉にはスキンミン、根にはヒドラナゲノール、フェブリフジンなどが含まれ、抗マラリア作用が報告されている。日本の民間でも花や葉を煎じて解熱薬として用いる。

 アジサイと同じユキノシタ科の薬用植物にジョウザンアジサイ(生薬名:常山)があり、マラリアの治療薬としてよく知られている。有特桂里は方輿輗の中でマラリアには常山よりアジサイの葉の方がよいと記している(紫陽散)。ちなみにアマチャ(甘茶)はアジサイの変異種である。

 北アメリカの先住民はアジサイの近縁種のハイドランジア(H.arborescens)の根を尿路結石や前立腺炎などのときの利尿薬として用いていた。近年、飲食店で料理に添えたアジサイの葉を食べて、吐き気、嘔吐、目眩などの中毒症状を起こしたが、これは生葉に含まれている青酸配当体によるものと断定された。

棕櫚

2013年04月20日 | 健康
○棕櫚(しゅろ)

 中国あるいは南九州を原産とするヤシ科の常緑高木シュロ(Trachycarpus fortunei)の葉や葉鞘を用いる。中国では葉柄が短く葉もやや小さいトウジュロ(T.wagnerianus)を用いる。日本では棕櫚葉として、中国ではおもに葉鞘の繊維を棕櫚皮として用いる。

 シュロはヤシ科であるが、耐寒性が強く、東北地方まで栽培されている。葉は幹の頂部から傘のように広がって生え、葉柄の基部の幹は葉鞘部が腐ってできた黒褐色の繊維、つまりシュロ毛に覆われている。このシュロ毛は耐水性があり、ロープや縄、蓑、敷物などに利用される。また若葉や帽子や籠なども作られる。

 中国では棕櫚皮の古いものを陳棕皮というが、廃棄されたシュロ縄などを用いる。また棕櫚皮を容器の中に入れて黒焼きにしたものを棕櫚炭、あるいは陳棕炭という。

 中国医学では棕櫚皮に収渋・止血の効能があり、鼻血、吐血、血尿、血便、性器出血などに用いる。一般に炭にすると止血作用は強まり、陳旧なものほど効果がよいとされている。煎じるよりも棕櫚炭の粉末を直接服用することが多く、また外用薬として鼻血に粉末を直接入れる方法もある。

 日本の民間では棕櫚葉の軽く焙じたものを茶剤として、高血圧や脳卒中に用いる。脳卒中による顔面麻痺や半身不随には棕櫚葉を紅花・白僵蚕などと配合する(強神湯)。また果実の棕櫚実は腎臓病や浮腫の治療に用いられる。

2013年04月19日 | 健康
○朮(じゅつ)

 キク科に属する多年草オケラ(Atractylodes japonica)およびその同属植物の根茎を朮という、オケラは、秋にはアザミに似た白い花が咲き、花の周囲は魚の骨のような総苞で覆われている。

 大晦日の夜に京都の八坂神社で行われているオケラ祭りは、オケラを燻べてつけた神灯の火を縄につけて家に持ち帰り、それでつくった雑煮を食べて無病息災を祈念する行事である。また俳句の季語に「蒼朮焼く」とあるように、衣類や書籍がカビないようにオケラを焼きいぶす風習もあった。

 現在、生薬の朮には白朮と蒼朮の2種類があり、日本のオケラ(和白朮)や中国産のオオバナオケラ(A.macrocephala)は白朮に、ホソバオケラ(A.lancea)やシナオケラ(A.chinensis)は蒼朮として区別されている。ただし中国ではオケラを蒼朮のひとつとして扱っている。

 ただし中国ではオケラを白朮として用いず、地方によってはオケラを蒼朮のひとつとして扱っている。もともと日本にはオケラ(白朮)の一種しか自生していなかったが、江戸時代に中国から渡来したホソバオケラ(蒼朮)が栽培されるようになった。かつて日本ではオケラの根茎の周皮を削ったものを白朮とし、そのまま蒼朮としていたこともあった。中国でも6世紀まで、朮はあまり区別されておらず、処方で蒼朮に区別するようになったのは明代になってからである。

 神農本草経に収載されている朮は産地から蒼朮が推定されているが、傷寒論の朮に関しては中国では白朮としているが、吉益東洞は蒼朮にすべきであると主張している。本草綱目では朮とは別に蒼朮をあげ、朮を白朮のこととしている。

 成分的な分析による鑑別として日本薬局方ではアトラクチロンを主成分としてアトラクチロジンを含まないものを白朮、アトラクチロジンを多く含んでほとんどアトラクチロンを含まないものを蒼朮と規定している。

 漢方ではいずれも病的な水分を改善するという燥湿の効能があるが、とくに白朮は胃腸間の水分、蒼朮は体表部の水分を除くのに優れている。また白朮には健脾、補気、元気をつけるのに対し、蒼朮には去風湿の効能があり、関節の浮腫や湿疹などに効果がある。一般に白朮は蒼朮よりも薬性が緩和である。

朱砂

2013年04月18日 | 健康
○朱砂(しゅしゃ)

 天然の硫化水銀、辰砂(Cinnabar)の鉱石を用いる。湖南省の辰州に良品を産することから辰砂といい、色が赤いことから朱砂、丹砂など呼ばれる。品質の最もよいものを光明砂という。

 中国では湖南・四川・貴州省などで産出する。大きさや形はまちまちで塊状、薄片状、顆粒状があり、暗紅色ないし鮮紅色で光沢があり、重く、無味無臭である。上等の印肉の朱は朱砂が使われている。

 朱砂の主成分は硫化水銀(HgS)であり、天然品は少量の土や有機物を來雑する。朱砂を過熱し、遊離した水銀の蒸気を冷却すると水銀が得られる(HgS+O2→Hg+SO2)。また逆に水銀と硫黄を用いた合成朱砂もあり、これを霊砂といい、重慶や昆明などで作られている。天然品は非常に高価なので、合成品も使用されている。

 硫化水銀は水に不溶性のためほとんど毒性がないとされるが、そうすると薬理的に作用しないことになる。漢方では重鎮安神薬のひとつで、安伸・定驚の効能があり、痙攣発作や熱性痙攣、めまい、不安、不眠、動機などの精神状態に用いる。一般に丸剤、散剤で用いるが、湯剤としては使用しない。

 不眠や神経症などで不眠、動悸、多夢、煩躁、口渇などの症状のみられるときには黄連・生地黄などと配合する(朱砂安伸丸)。大便が乾燥して秘結するときには芦薈と配合する(更衣丸)。梅毒による皮膚症状や筋肉痛などに亀板・石決明と配合する(紫金丹)。口内炎や歯肉炎、咽頭頭炎などに竜脳・硼砂などと配合した口中に含む(氷硼散)。化膿した傷口には炉甘石・滑石などと配合して外用する(生肌散)。ただし水銀中毒に注意し、長期、多量の服用は避けたほうがよい。

縮砂

2013年04月17日 | 健康
○縮砂(しゅくしゃ)

 インドシナ半島や中国の雲南省に分布するショウガ科の多年草シュクシャミツ(Amomum xanthioides)やヨウシュンシャ(A.villosum)の種子塊を用いる。日本薬局方ではシュクシャミツが規定されているが、中国ではおもにヨウシュンシャを用いている。

 種子塊は直径1~2cmくらいの団子状で、3室に分かれており、角室は10~20個の種子が集まってできている。種子は多角形の粒状で、砕くと独特の芳香があり、味は辛い。生薬には白くなっている縮砂もあるが、これは石灰を用いて乾燥させたものである。日本ではショウガ科のハナミョウガの種子を伊豆縮砂といい、かつては縮砂の代用とした。

 種子にはカンファー、ボルネオールなどが含まれ、芳香性健胃薬として知られる。近年、ボルネオールの配糖体であるアモムサイドに鎮静作用のあることが報告されている。

 漢方では理気・化瘀・寛胸・安胎の効能があり、食欲不振、下痢、胎動不安などに用いる。とくにストレス(気滞)による膨満感や腹痛、痞えなどに効果がある。また妊娠のときの悪阻には縮砂を噛んで服用する。

熟地黄

2013年04月16日 | 健康
○熟地黄(じゅくじおう)

 中国原産のゴマノハグサ科の多年草ジオウ(Rehmannia glutinosa)の根を加工したものを用いる。熟地黄には蒸気で蒸す蒸熟地黄と紹興酒などの醸造酒を加えて蒸す酒熟地黄とがある。

 ジオウの根を酒に漬け、それを蒸し器で蒸し、日干しして半乾きしたものを再び酒に漬けるといった行程を全体が黒くなるまで何度か繰り返して行い、九回繰り返して製造したものは九蒸九といわれ、最上品とされている。

 熟地黄は内外ともに漆黒で、光沢があり、柔らかく、断面はしっとりとして、非常に甘味がある。地黄は、修治により生地黄、乾地黄、熟地黄に大別されるが、日本薬局方では両者をジオウとして規定しているため、一般に地黄といえば乾地黄のことをいう。

 生地黄と熟地黄の成分の違いとして、熟地黄への修治の過程でカタルポールなどのイリドイド配糖体が消失し、フェネチルアルコール配糖体のアセトサイドやプロサイドが生成され、オリゴ糖のスタキオースが分解して果糖などの単糖類が増加するといわれている。薬性も生地黄の甘苦・大寒から、熟地黄の甘・微温へと変化し、清熱作用から滋養作用へと効能も変化している。

 漢方では補陰・補血の効能があり、膝や腰の萎弱、性機能低下、泌尿器疾患、月経不順、耳や目の衰えなどに用いる。ただし、熟地黄は吸収されにくいため、胃腸が虚弱な場合には腹が張ったり、便が緩んだりすることがある。ちなみに傷寒論、金匱要略では生地黄と乾地黄のみが用いられており、熟地黄は宋代の本草図経(1058)において初めて登場する。

十薬

2013年04月15日 | 健康
○十薬(じゅうやく)

 日本の各地をはじめ東アジアに広く分布するドクダミ科の多年草ドクダミ(Houttuynia cordata)の全草を用いる。平地ややや湿ったところに普通にみられ、独特の臭気がある。

 この臭いのため中国では魚腥草という。和名は毒が入っていそうなので「毒溜み」、あるいは解毒作用から「毒矯み」といわれている。十薬の語源については十種の効能があるためというのは俗説で、漢名に由来する蕺薬を十薬あるいは重薬に当てたものである。

 一般に花が咲いている5~6月に根を含む全草を採取する。独特の臭気はデカノイルアセトアルデヒドやラウリルアルデヒドによるが、乾燥すると悪臭は消える。そのほか葉や花にはフラボノイドのクエルシトリンやイソクエルシトリンなども含まれる。

 デカノイルアセトアルデヒドに抗菌・抗真菌作用があるが、乾燥すると酸化されてメチルノニルケトンに変化してその作用が失効する。このため乾燥させたドクダミの煎液にあまり解毒作用は期待できないが、利尿、緩下作用や抗動脈硬化作用などが知られている。

 漢方では清熱・解毒・利水・消腫の効能があり、肺炎や気管支炎、腸炎、膀胱炎、腫れ物、痔、脱肛などに用いる。日本漢方では梅毒や腫れ物、湿疹、痔患に金銀花・荊芥などと配合した五物解毒湯が有名である。しかし乾燥させると解毒作用が失効するためか、専ら生のまま外用薬として利用される。

 たとえば新鮮な生の葉を火にあぶって柔らかくしたものを腫れ物の患部に当てて膿を吸い出すのに用いる。蓄膿症にはドクダミの葉を揉んで汁を出したものを鼻に挿入する。また葉の汁を湿疹や痤瘡、水虫、かぶれなどに外用する。痔や脱肛には坐浴用として、あせもには浴湯料として乾燥した葉を用いる。今日ではどくだみ茶として便秘や高血圧、皮膚病などの体質改善に利用されている。