健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

営実

2012年02月29日 | 健康
○営実

 日本の各地、朝鮮半島に分布するバラ科のつる性落葉低木ノイバラ(Rosa multiflora)の果実を用いる。中国ではノイバラの花を薔薇花、根を薔薇根と称して薬用にする。そのほか近縁種のテリハノイバラ(R.wichuraiana)やフジイバラ(R.fujusanensis)などの果実も用いる。これら果実は偽果であるが、薬用には赤く成熟する一歩手前の、少し青味がかったものを採取し、それを乾燥して用いる。

 営実にはフラボノイドのムルチフロリンA・B、ムルチノサイドA・B、紅色素のリコピンなどが含まれる。漢方では通便・利水消腫・活血・解毒の効能があり、浮腫や脚気、瘡毒、月経痛などに用いる。

 実証の腹水に大黄・甘草と配合する(営実湯)。営実は神農本草経の上品に収載されているが、中国では余り用いられず、むしろ日本の民間薬としてよく知られている。日本の民間では古くより便秘や浮腫の瀉下・峻下薬として知られ、今日でも家庭薬の下剤にはしばしば配合されている。ただし使用量が多くなると激しい下痢となるので注意を要する。また腫れ物や痤瘡には煎液で洗ったり、冷湿布として用いる。

 欧米では近縁種のドッグローズ(R.canina)などの偽果をローズヒップと呼んで花弁とともに、ビタミンCの豊富なハーブティーとして愛飲している。

雲母

2012年02月28日 | 健康
○雲母

 おもに花崗岩ペグマタイトに産する珪酸塩鉱物の白雲母を用いる、かつてヨーロッパでウラル山地の白雲母をモスクワ(マスコ)経由で輸入し、窓ガラスに用いたためマスコバイト(Muscovite)という。中国では雲は岩石の精気が立ち上って凝集したと考えられたことから雲母と呼ばれ、日本ではガラス様の光沢があることから「きらら」および奇良といわれる。千枚はがしの異名があるように非常に剥がれやすく、薄片は透明で弾力性と絶縁性とがある。

 雲母はカリウム、アルミニウム、ケイ素、酸素、水素、フッ素などからできており、電気関係や断熱材として重要である。漢方では平喘・止帯・止血・斂瘡の効能があり、喘息や婦人の帯下、出血などには内服し、切り傷や悪瘡には外用する。婦人の帯下が止まらないときには蒲黄と配合する(蒲雲散)。

ウワウルシ

2012年02月27日 | 健康
○ウワウルシ

 ヨーロッパ、アジア、北米などの北半球の寒冷地に分布するツツジ科の常緑低木ウワウルシ(Arctostaphylos uva-ursi)の葉を用いる。ウワウルシの名は熊のブドウという意味であり、英語ではベアベリー、日本でもクマコケモモと呼ばれている。ヨーロッパでは17世紀ごろより実が薬用とされ、18世紀中ごろから葉が治療に盛んに用いるようになった。

 葉には主成分のフゥノール配糖体アルブチンのほか、メチルアルブチン、ハイドロキノン、タンニン、ケルセチンなどが含まれる。アルブチンは尿中で分解されてハイドロキシノンを生じ、ハイドロキシノンには殺菌作用のほか、腎細胞を刺激するため利尿作用もある。ケルセチンにも利尿作用が認められている。

 葉の煎液は尿路消毒薬、利尿薬として膀胱炎や腎炎などの尿路感染症、尿路結石などに用いる。また膣洗浄液としても利用されている。このウワウルシ葉の粗粉末を精製水を用いて熱水抽出したものがウワウルシ流エキスである。家庭薬として膀胱炎などに用いる利尿剤にはウワウルシの配合されたものも少なくない。

 近年、アルブチンにメラニン色素の生成を抑制する効果があることから、ウワウルシエキスが美白のハーブとして化粧品などに配合されている。

烏斂莓

2012年02月25日 | 健康
○烏斂莓(うれんぼ・うれんも)

 日本各地、台湾、中国、インドなどに分布するブドウ科のつる性多年草ヤブガラシ(Cayratia japonica)の根及び根茎を用いる。ヤブガラシとは、繁殖力が旺盛で「藪を枯らす」という意味であり、俗にいうビンボウカズラ(貧乏葛)ともいわれる雑草である。新芽を塩ゆでにして水によくさらし、和え物にして食べる。

 根にはアラバンを含む粘液質や多量の硝酸カリウム、タンニンが含まれる。漢方では清熱・解毒・利尿の効能があり、化膿性疾患や扁桃炎、膀胱炎、関節炎、打撲傷などに用いる。民間療法としては生の根茎を突き砕いて出てきた粘液を腫れ物や化膿、虫刺されなどの患部に塗布する。ただし、かなり刺激があるのでかぶれないように注意が必要である。

裏白樫

2012年02月23日 | 健康
○裏白樫

 日本の東北地方以南の地域から台湾にかけて分布するブナ科の常緑高木ウラジロガシ(Quercus salicina)の小枝や葉を用いる。ウラジロガシのはその名の通り葉の裏は白い蝋質でおおわれ、その白粉は熱によって溶ける。木材は農耕器具や薪炭用として、また庭園の樹木として利用されている。ウラジロガシは近年になって知られた日本の民間薬の一つで、おもに徳島県や和歌山県に産する。

 小枝や葉にはフラボノイドのケルセチン、ケンフェロール、トリテルペノイドのフリーデリン、タラクセロールなどのほか、カテコール、ピロガロールなどが含まれ、エキスの動物実験では膀胱内結石の生成抑制や溶解作用が認められている。徳島県地方では早くから胆石、腎結石、尿路結石などの民間治療薬として用いられていた。

 本来、胆石症に効果があるということから研究されたが、現在では尿路結石にも応用されている。尿路結石にはカキドオシ(連銭草)と配合して服用する。ウラジロガシエキスは尿路結石の治療薬として医療用に用いられている。

兎余粮

2012年02月22日 | 健康
○兎余粮(うよりょう)

 兎余粮は不純な褐鉄鉱あるいは沼鉄鉱のひとつであり、さまざまな形の塊や土状をしている。本来、余粮とは鉄質の殻の中に粘土質の核を有する鉱物のことであり、薬用には中の粘土を用いたとされる。その中の粘土が淡黄~灰色のものを兎余粮といい、鉄分を多く含んだ濃赤色のものを太一余粮と称していたと考えられている。ときに中の空洞のできてることもあり、振ると音がするため一般に鈴石とか鳴石、子持ち石などと呼ばれている。

 この中の粘土の多くは加水ハロサイト(Al2o3・2Sio2・2H2O)である。本草綱目の中には「池沢に産出するものが兎余粮であり、山谷に産出するものが太一余粮であり、その中の黄濁した水が石中黄水であり、それが粉のように凝結したものが余粮であり、石のように乾燥して凝結したものが石中黄である」と記載されている。

 古くから基原に関して諸説があって一定せず、現在の市場では兎余粮と太一余粮とを区別しない。また中国医学のテキストでは兎余粮の基原を褐鉄鉱とし、主成分はFe2O3で砂石有機物、リン酸塩などを含むとある。通常、無味・無臭で、水飛によって細末にしてから用いる。

 漢方では止瀉、止血の効能があり、慢性的な下痢や子宮出血、帯下、痔などに用いる。傷寒論では赤石脂と配合した赤石脂兎余粮湯を下痢の治療に用いている。

烏薬

2012年02月21日 | 健康
○烏薬(うやく)

 中国原産のクスノキ科の落葉低木テンダイウヤク(Lindera strychuifolia)の根を用いる。日本の近畿や九州にも野生化している。秦の始皇帝の命により、不老長寿の薬をもとめに来た徐福が、この木を日本に伝えたという伝説が和歌山県新宮市に残っている。浙江省天台産の品質が優れているため天台烏薬または台烏薬ともいわれる。一方、ツヅラフジ科のイソヤマアオキ(Cocculus laurifolius)の根を衡州烏薬と呼ぶが、現在ではあまり使用されない。

 烏薬には精油成分としてボルネオール、リンデラン、リンデレン、リンデリロールなどが含まれ、芳香性の健胃作用がある。漢方では理気・止痛・温裏の効能があり、消化不良、腹痛、嘔吐、頻尿などに用いる。烏薬は「上下の諸気を通理する」といわれ、冷えやストレスなど気滞や気逆による腹痛に広く用いられる。とくに下腹部の張った痛みに効果がある。烏薬は木香・香附子と同じく理気止痛薬のひとつで、木香は胃腸の気滞に、香附子は肝の気滞に、烏薬は下腹部や膀胱(下焦)の気滞に効果がある。

烏梅

2012年02月20日 | 健康
○烏梅(うばい)

 中国中部を原産とし古くから日本に渡来したバラ科の落葉小高木ウメ(Prunus mume)の未成熟果実を用いる。薬材は未熟な果実、つまり青梅を薫蒸して乾燥したものである。外面が黒いため烏梅といい、和名では「ふすべうめ」という。日本には樹木よりも先に薬として烏梅(うめい)が渡来したため、木そのものをウメと呼ぶようになったといわれる。ウメの花蕾は白梅花といい、種子は梅核仁という。

 梅の核には青酸配糖体のアミグダリンが含まれているが、未熟な果実の核はやわらかくて砕けやすいため、核を出たアミグダリンは酵素分解により青酸を生じる。このため青ウメは生で食べると中毒を起こして腹が痛むことがある。ただし、この青酸は熟するにつれて蒸散する。

 ウメの果肉の酸味としてクエン酸やコハク酸、リンゴ酸、酒石酸などの有機酸が含まれるが、未熟な果実にはリンゴ酸が多く含まれ、成熟するとクエン酸のほうが多くなる。クエン酸は胃液の分泌を高め、ペプシンを活性化してタンパク質の消化を促進する。また烏梅の煎液には抗菌・抗真菌作用がある。中国や台湾では暑気ばらいの飲料として、烏梅に山査子や甘草、砂糖などを加えた酸梅湯がよく知られている。

 漢方では止渇・止嘔・止瀉・安蛔の効能があり、口渇や悪心・慢性の下痢、回虫症による腹痛、咳嗽、燥熱などに用いる。例えば老人の消化不良などのために下痢や食欲不振のみられるときには蒼朮・麝香などと配合する。(人参養胃湯)。日本の民間療法としては頭痛にコメカミにウメボシの果肉を貼り付ける治療がよく知られている。また青ウメを加工した日本独自の梅肉膏がある。

烏蛇

2012年02月18日 | 健康
○烏蛇(うだ)

 ヘビの一種ウショウダ(Zaocys dhumnades)の内臓を除去した全体を用いる。烏梢蛇の脱皮した皮は蛇退皮という。ウショウダは全長2m以上で、体は青味を帯びた灰褐色、背中央に黄褐色の二列の縞と、その外側に細い黒の縦線の模様がある。

 中国各地に分布するが、主に揚子江以南の平地や丘陵地帯の草むらに生息し、カエルやトカゲ、魚などを捕食する。無毒であり、捕獲した後、腹部を裂いて内蔵を去り、円盤状に丸めて柴草で薫じて乾燥する。煎じたり、酒に浸して服用するほか、あぶって乾かしてから粉末にし、散剤や丸剤として用いる。

 漢方では去風湿・通経絡の効能があり、リウマチなどによる関節の痛みや手足のしびれ、麻痺、皮膚疾患などに用いる。脳卒中後遺症やリウマチなどによる関節痛に用いる大活絡丹や風湿舒筋丸に配合されている。

烏頭

2012年02月17日 | 健康
○烏頭(うず)

 キンポウゲ科トリカブト属の母根を烏頭という。一般にトリカブトには茎に続く塊根(母根)の周囲に数個の新しい塊根(子根)が錬生している。この母根を烏頭といい、子根を附子という。塊根の形が烏の頭に似ていることから烏頭、母根に付着した根ということから附子という名がある。ただし、近年、中国においてその区別は曖昧であり、一般には減毒処理したものを附子、減毒処理されていないもの烏頭としている。また、子根を有しない細長い根は天雄と称し、子根の小さいものを側子、さらに小さくて籠の目から漏れるほどのものを漏藍子という。

 トリカブト属は種類が多く、中国では宋の時代からカラトリカブト(A.carmichaeli)が四川省で栽培されている。このため中国では栽培品種である川烏頭と野生種の草烏頭とが区別されている。このカラトリカブトはハナトリカブトとも呼ばれ、日本でも薬用や切花用に栽培されている。一方、日本では佐渡島などに産する野生種を草烏頭と呼んでいる。

 一般に烏頭は附子よりもアコニチンの含有量が多く、鎮痛作用は附子よりも強いが、温熱・強心作用は附子よりも弱いといわれる。烏頭は毒性が強いため専門家でない限り、使用すべきではない。

 漢方では去風湿・温裏・止痛の効能があり、傷寒論、金匱要略でし関節痛や神経痛に麻黄・オウギと配合した烏頭湯、腹痛に桂枝湯に烏頭・蜂蜜を加えた烏頭桂枝湯などが収載されている。