健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

覆盆子

2014年10月30日 | 健康
○覆盆子(ふくぼんし)

 中国や日本の四国や九州に分布しているバラ科の落葉低木ゴショイチゴ(Rubus chingii)などの未成熟な果実(偽果)を用いる。ゴショイチゴはキイチゴ属のひとつで、一説に果実の形がふせた盆に似ていることから覆盆子という名があるという。日本には江戸末期に中国より渡来し、大分・高知・愛媛・山口県などにみられる。

 成分には有機酸、糖類、ビタミンA様物質などがみられるが、詳細は不明である。漢方では固渋薬のひとつとして肝腎を補益して尿や精液の漏れるのを防ぐ効能がある。インポテンツ、遺精、早漏、夜尿、遺尿などには枸杞子・菟絲子などと配合する(五子衍宗丸)。

茯神

2014年10月29日 | 健康
○茯神(ぶくしん)

 木材腐朽菌の一種。サルノコシカケ家のマツホド(Poria cocos)の菌核、茯苓のうち、とくにマツの根を抱いたものを茯神という。中の松の根は茯神木という。茯神の表面に朱砂の細粉をまぶしたものを朱茯神という。

 茯神には安神・利水の効能があり、茯苓とほぼ同じであるが、古くから安神作用は茯苓よりも優れているといわれている。中国での動物実験でも鎮静作用が報告されている。

 不眠、動悸、眩暈には珍珠母・柏子仁などと配合する(珍珠母丸)。茯神木はマツの腐った根で、外側に少し茯神が残っている。茯神木は平肝・安神の効能があり、健忘や失語症、顔面神経麻痺などに用いる。

福寿草根

2014年10月27日 | 健康
○福寿草根(ふくじゅそうこん)

 日本各地、朝鮮半島、中国東北部、シベリア東部に分布するキンポウゲ科の多年草フクジュソウ(Adonis amurensis)の根を用いる。フクジュソウは旧暦の元旦ごろに花が開くため、とくに元旦草とか朔日草とも呼ばれ、正月の床飾りに用いられる。花は黄金色で、開花期が長く、春一番に咲く縁起のいい花として喜ばれ、幸福と長寿を組み合わせて福寿草と呼ばれるようになった。

 全草に強心配糖体のシマリンなどが含まれる。シマリンにはジギタリス配糖体と同様の作用があり、ジギタリスの代用に強心・利尿薬として浮腫や心臓病に用いられる。

 ロシアの民間療法でも浮腫や心不全の治療にヨウフクジュソウ(A.vernalis)が用いられていた。しかし、福寿草の毒性は大変強く、中毒症状として悪心・嘔吐がみられ、不整脈、心停止をひきおこして死亡することがある。家庭で民間薬として用いられるは非常に危険である。

2014年10月20日 | 健康
○蕗(ふき)

 日本では本州、四国、九州、朝鮮半島、中国に分布するキク科の多年草フキ(Petasites japonicus)の花茎あるいは根茎を用いる。日本ではフキを「款冬」と書くこともあるが、中国語の款冬とはキク科のフキタンポポのことである。

 フキは日本特産の野草として栽培され、葉柄は「ふき」、花茎は「ふきのとう」と呼ばれて売られている。フキは「富貴」に通じ、縁起のいい植物として親しまれている。薬用としてはフキの根茎を中国では蜂斗菜、日本では款冬根といい、蕾のことの花茎を蕗の薹と称して利用する。

 フキの根にはペタシンが、フキノトウにはケルセチンやケンフェロールなどが含まれる。漢方薬としては用いないが、中国や日本では民間薬として煎じた液でうがいしたり、打撲傷や毒蛇咬傷に根を搗きつぶした汁を内服あるいは塗布する。

 日本では風邪や喘息などのときに解熱、鎮咳、去痰薬としてフキノトウを煎じたり、味噌和えにして食べたりして用いる。フキの地上部にはフキノン、フキノール酸、クロロゲン酸といったポリフェノールが含まれており、近年、フキの地上部から抽出したエキスに、ヒスタミンやロイコトリエンなどの脱顆粒抑制作用、TNF-α産生抑制作用が認められ、アレルギー性鼻炎に対する効果が注目されている。

 欧米ではセイヨウフキ(P.hybridus(バターバー))が花粉症や片頭痛などの治療に用いられている。

ぶい

2014年10月17日 | 健康
○蕪荑(ぶい)

 中国東北部、朝鮮半島、シベリア半島に分布するニレ科の落葉小高木チョウセンニレ(Ulmus macrocarpa)の果実を加工したものを用いる。

 果実は偏平で種子の周囲に広い翼がある。これを採取して日干しにし、揉んで翼を除き、種子を取り出し、水に浸して発酵させる。これに楡白皮の粉末や紅土、菊花を加えて温湯に混合して糊状になったものを平板の上で伸展し、6cm四方に切って乾燥したものが蕪荑である。

 表面は黄褐色の軽くて脆いもので、特有の匂いと酸味がある。やもに山西・河北省で生産されている。成分は不詳であるが、駆虫作用や抗真菌作用がある。神農本草経の中品に収載され「三虫を去り、食を化す」とある。

 漢方では駆虫・消積の効能があり、とくに小児の疳積と回虫による腹痛に用いる。一般に搗いて粉末にしたものや、炒ったものを散薬として服用する。また回虫症に使君子・雷丸などと配合する(化虫丸)。

檳榔子

2014年10月15日 | 健康
○檳榔子(びんろうじ)

 マレー半島烏原産でインドネシア、フィリピン、中国南部などに植栽されるヤシ科の常緑高木ビンロウ(Areca catechu)の種類を檳榔子といい、その果皮を大腹皮という。

 種子は長さ3cmぐらいのおむすび型をしており、表面に網目の模様がある。東南アジアの諸国ではビンロウの未熟な果実の胚乳を縦に割り、石灰をまぶし、ときに阿仙薬や甘草などと混ぜてキンマの葉で包んだものをチューインガムのように噛む風習がある。これを噛むと口の中が真っ赤になるが、麻酔的な作用があり、爽快な気分になる。

 果実にはアレコリン、アレカイジン、クバコリン、クバシンなどのアルカロイド、ラウリン酸、ミリスチン酸などの脂肪酸、タンニンなどが含まる。アレコリンにはピロカルピンよりも強い副交感神経刺激作用、中枢抑制作用がある。このため唾液の分泌を促進し、瞳孔を縮小させ、腸蠕動を更新させる。多量に用いると流涎や嘔吐、多尿がみられ、ひどければ昏睡や痙攣が現れる。このときにはアトロピンの注射が有効である。

 また煎液にはミミズやヒルに対する殺虫効果が条虫に対する駆虫効果のあることが知られている。漢方では駆虫・消積・理気の効能があり、消化不良や腹痛、寄生虫症、便秘、脚気などに用いる。

枇杷葉

2014年10月03日 | 健康
○枇杷葉(びわよう)

 中国の揚子江地方を原産とするバラ科の常緑高木ビワ(Eriobotrya japonica)の葉を用いる。葉の裏の絨毛はブラシなどで取り除いて用いる。またビワの葉から蒸留して得られた液を枇杷葉霜という。

 ビワの名は葉の形が楽器の琵琶に似ていることに由来するといわれ、日本にも9世紀前後に渡来したと推定されている。日本に自生していた品種もあったが、果実は小さく食用としての利用価値は低かったという説もある。江戸中期には農村でも果樹として栽培されるようになり、さらに幕末になった大果のビワが清国から長崎に伝えられた後、日本各地に普及した。

 葉には精油が含まれ、その主な成分はネロリドールとファルネソールである。またアミグダリン、ウルソール酸、オレアノール酸、クエン酸、ビタミンB・Cなども含まれる。薬理作用として抗炎症作用や抗菌作用が知られている。

 漢方では止咳・止嘔の効能があり、咳や痰、鼻血、嘔吐等に用いる。また日本漢方では食中毒や下痢にも用いる。気管支炎などで咳嗽や膿痰、咽頭乾燥のみられるときには沙参・桑白皮・山梔子などと配合する(琵琶清肺飲)。鼻炎や鼻茸などで鼻づまりのみられるときには辛夷・山梔子などと配合する(辛夷清肺湯)。

 口内炎や歯槽膿漏などには麦門冬・茵蔯蒿などと配合する(甘露飲)。食あたりや夏の下痢には藿香・縮砂などと配合する(和中飲)。この和中飲の加減方である枇杷葉湯は江戸時代から明治にかけて暑気払いの妙薬として有名であり、該当で売り歩く声は夏の風物詩のひとつとなっていた。

 また民間ではあせもや湿疹を治療する浴湯料としてもよく知られている。このほか大正時代には静岡県内の禅寺から始められた「枇杷の葉(温圧)療法」という民間療法がある。これはあぶったビワの葉の表面を患部や全身に圧し当てたり、ビワの葉を置いた上から加熱するという方法で、難病や癌にも効果があるといわれている。