健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

女貞子

2013年05月31日 | 健康
女貞子(じょていし)

 中国原産で、日本でも公園樹としてよく植えられているモクセイ科の常緑小高木トウネズミモチ(Ligustrum lucidum)の果実を用いる。日本の関東南部から沖縄県、朝鮮半島、台湾などに分布するネズミモチ(L.japonicum)の果実も女貞子として用いられる。

 トウネズミモチは樹高10mに達し、ネズミモチよりも大きい。果実が紫黒色でネズミの糞に似ており、木がモチノキに似ているためネズミモチという和名があり、冬でも葉が青い様子を貞女になぞられて女貞と名づけられた。

 ネズミモチやトウネズミモチは公害や病虫害に強く、生け垣や高速道路の分離帯、都市の公園樹として利用されている。またトウネズミモチはイボタノキと同様にイボタロウカイガラムシがつき、中国では虫白蠟を採取するためにも栽培されている。戦争中に果実を焦がしてコーヒー豆の代用にしたという話もある。

 果実にはオレアノール酸、ウルソール酸、マンニトールなどが含まれる。オレアノール酸には強心・利尿作用が知られている。漢方では肝や腎を補い、腰や膝を強める作用があり、滋養薬として足腰の筋力低下、頭暈、白髪、視力低下、かすみ目などに用いる。

 倦怠感や足腰の衰え、目まい、不眠などには人参・地黄などと配合する(滋補片)。焼酎に漬けた女貞子酒も滋養強壮の薬用酒として知られている。葉の女貞葉は消炎・鎮痛の作用があり、民間療法では生の葉を火であぶって柔らかくしたものを腫れ物に貼付したり、浴湯料として皮膚疾患に用いるほか、口内炎や火傷などの外用薬としても用いる。

 近年、リンパ球の増殖を促し、放射線や抗癌剤治療による白血球減少を抑制する効果があると伝えられている。

徐長卿

2013年05月30日 | 健康
○徐長卿(じょちょうけい)

 日本各地及び東南アジアの温帯に分布するガガイモ科の多年草スズサイコ(Cynanchum paniculatum)の根及び根の付いた全草を用いる。全草にはペオノール、サイコスチン、根にはペオノール、フラボノイド配糖体、アミノ酸などが含まれ、鎮静、降圧、抗菌作用などが報告されている。

 漢方では去風湿・止痛・利水消種の効能があり、リウマチなどの関節痛、胃痛、歯痛、生理痛、気管支炎、蛇咬傷、浮腫などに内服薬として用いる。また単独で粉末にしたものを乗り物酔いに服用する。そのほか皮膚掻痒症には煎剤で患部を洗うとよい。民間では打撲、捻挫に生のスズサイコの汁を用いている。

徐虫菊

2013年05月28日 | 健康
○徐虫菊(じょうちゅうぎく)

 バルカン半島、ダルマチア地方原産のキク科の多年草ジョチュウギク(chrysanthemum cinerariaefolium)の頭状花を用いる。日本には明治初期に渡来し、北海道、岡山、広島、愛媛などで栽培され、戦前には世界第一の生産量をあげ、近年では瀬戸内海地方にわずかに栽培されているに過ぎない。現在、ケニア高地で優良種が生産され、世界一の産地となっている。

 古くから頭花を摘みとり、乾燥したものはノミ取り粉、茎や葉はいぶして蚊やりとして用いられた。殺虫成分はピレトリン(ピレスロイド)で、九分咲きから満開の頭花に最も多く含まれる。

 ピレスロイドは即効性の接触毒であり、昆虫の気門や口から吸収されて運動神経を麻痺させて殺す。ピレスロイドは昆虫のほか、魚類や両生類、爬虫類などにも毒性があるが、温血動物には無害である。またDDTやBHCなどと異なり、容易に分解して失効する。現在でも植物性殺虫剤の原料として蚊取り線香、エアゾール、農業用殺虫剤などに利用されている。

蜀漆

2013年05月27日 | 健康
○蜀漆(しょくしつ)

 東南アジアやインド、中国の南部に自生するユキノシタ科の常緑低木ジョウザンアジサイ(Dichroa febrifuga)の若い枝の葉を用いる。根は常山として有名である。

 効能は常山とほぼ同じで抗瘧の効能があり、マラリアに用いる。傷寒論、金匱要略には蜀漆散・牡蠣湯・桂枝救逆湯・牡蠣沢瀉散など蜀漆を配合した4つの処方が収載されている。蜀漆散はマラリアの発作の前に用いる。

 肝硬変などで腹水が溜っているときには牡蠣・沢瀉などと配合した牡蠣沢瀉湯を、火傷のあとの動悸や煩躁、ヒステリーや癲癇などには桂枝加竜骨牡蠣湯に蜀漆を加えた桂枝去芍薬加蜀漆竜骨牡蠣救逆湯を用いる。

 薬徴続篇に「胸腹の動には牡蠣で治し、臍下の動には竜骨で治し、胸腹臍下の動の劇しい場合には蜀漆で治す。これが張仲景の三活法である」とある。ただし、蜀漆は催吐作用は常山よりも強いので、近年はあまり用いられていない。

食塩

2013年05月24日 | 健康
○食塩(しょくえん)

 海水あるいは塩井などの塩分を含んだ水を乾燥して得られる塩の結晶を用いる。中国において海水からの製塩は有史以前から、特に沿岸地区で行われていた。古くからの製塩法には太陽熱を利用した天日塩製法や加熱製塩法などがある。

 春秋時代、斉の国では管仲の案により海塩の専売を行い、大規模な製塩業を興して富強になったと伝えられている。日本では万葉集に「藻塩焼く」と謳われているように、古くは海藻に海水を注ぎ、それを焼いて塩をとる方法が行われていた。また中世からは塩田法も発達し、瀬戸内海地域で盛んに行われた。

 主成分は塩化ナトリウムで、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸ナトリウムなども夾雑する。漢方では寒・鹸で、催吐・清熱・解毒の効能がある。食べたものが停滞しているときや、急性胃炎などで吐き気があっても嘔吐しないときには食塩を熱湯に溶かして服用させ、嘔吐させる(塩湯探吐方)。

商陸

2013年05月22日 | 健康
○商陸(しょうりく)

 中国を原産とし日本でも野生化しているヤマゴボウ科の大型多年草ヤマゴボウ(Phytolacca esculenta)の根を用いる。ヨウシュヤマゴボウ(P.americana)のほうがよく見られるが、この根は美商陸という。

 ヤマゴボウの葉は食用にされるが、多量に食べないほうがよい。漬け物で「やまごぼう(山牛蒡)」と称されているものは、キク科のモリアザミなどの根を漬けたもので、ヤマゴボウとはまったく別の植物である。

 根には多量の硝酸カリウムや有毒な配糖体のフィトラッカトキシン(フィトラッカサポニン)が含まれる。硝酸カリウムには利尿作用があり、古くから利尿薬として利用されてきた。しかし、有毒成分のフィトラッカトキシンのため、食べると嘔吐や下痢が出現し、さらには中枢神経麻痺から痙攣、意識障害が生じ、ひどければ呼吸障害や心臓麻痺により死亡することもある。

 漢方では逐遂・消種の効能があり、水腫、腹水、脚気、腫れ物などに用いる。逐水とは瀉下と利尿作用で腹水や胸水、浮腫などを治療することである。

 全身性浮腫を伴う喘息症状には木通・沢瀉などと配合する(疏鑿飲子)。肝硬変などによる腹水に牡蠣・沢瀉などと配合する(牡蠣沢瀉散)。ただし毒性が強いため、慎重に投与する必要がある。

 外用として新鮮な商陸に塩を加えてつきつぶしたものを頑固な腫れ物に用いる。アメリカではヨウシュヤマゴボウの根を扁桃炎や耳下腺炎、乳腺炎、水腫などの治療に用いていたといわれる。

松ら

2013年05月21日 | 健康
○松籮(しょうら)

 日本各地や東アジアに分布する樹枝状地衣類であるサルオガセ科のナガサルオガセ(Usnea longissima)やヨコワサルオガセ(U.diffracta)の全体(糸状体)を用いる。この地衣植物は亜高山の針葉樹などに寄生し、枝からレースのように垂れ下がっている。

 ナガサルオガセは主軸の直径1~2mm、長さ50cm~1mくらいで、ヨコワサルオガセは2分岐を繰り返して次第に細くなるもので、長さは10~30cm、基部の太さは1~1.5mmくらいである。

 オガセとは麻をよって糸にしたものを絡ませる道具で、樹の幹から多くの糸が垂れ下がっている様子を表している。霧の多い深山にみられるもので、「雲の花」とか「霧藻」も別名もあり、乾燥したものを袋につめた「霧藻枕」などが土産に売られている。

 成分はバルバチン酸やウスニン酸、ジフラクタ酸などが含まれ、抗菌、抗腫瘍、利尿、肝庇護作用などが認められている。漢方では止咳、化瘀・止血の効能があり、頭痛、咳嗽、喀痰、瘰癧(頸部リンパ腺腫)、性器出血、腫れ物などに用いる。

 近年、松籮の煎剤や抽出したウスニン酸ナトリウムなどによる肺結核や慢性気管支炎などの臨床報告がある。またリンパ節炎、乳腺炎などにも用いられるが、副作用として嘔気や口渇、めまい、肝機能障害のみられることがある。そのほか外用として腫れ物や潰瘍、外傷などに用いる。ちなみにジフラクタ酸に炭酸アンモニアを加えるとリトマス色素になり、リトマス紙にも利用されている。

椒目

2013年05月18日 | 健康
○椒目(しょうもく)

 中国の各地に自生し、栽培されているミカン科の落葉低木カホクザンショウ(Zanthoxrlum bungeanum)の種子を椒目という。この果実の果皮を花椒という。

 日本では一般に花椒の代わりに同属のサンショウ(Z,piperitum)の果皮を山椒として用いているが、種子はあまり利用されていない。カホクザンショウの種子は直径3~5mmくらいのほぼ球状で、表面は光沢のある黒色である。においは芳しく、味は辛い。

 椒目の味は苦・辛で性は寒であるのに対し、果皮(花椒)の味は辛、性は熱であり、両者の性味は異なっている。漢方では利水・平喘の効能があり、浮腫や腹水、喘息などに用いる。心不全などによる浮腫や腹水に防已・葶藶子・大黄と配合する(已椒藶黄丸)。

升麻

2013年05月17日 | 健康
○升麻(しょうま)

 北海道から九州、中国、朝鮮半島、シベリアにかけて分布するキンポウゲ科の多年草サラシナショウマ(Cimicifuga simplex)の根茎を用いる。そのほかフブキショウマ(C.dahurica)やオオミツバショウマ(C.heracleifolia)の根茎を用いる。

 若葉をゆで、水にさらして食べることができるためサラシナ(晒し菜)の名がある。中国市場ではサラシナショウマの根茎を西升麻、フブキショウマを北升麻、オオミツバショウマのを関升麻というが、日本市場に流通しているのはほとんどが北升麻である。根茎の外皮が黒いため黒升麻とも呼ばれている。赤升麻というのはユキノシタ科の多年草であるトリアシショウマ類の根茎のことで、かつて升麻の代用にされたといわれる。

 升麻の成分としてトリテルペノイドのシミゲノール類やその他配糖体、クロモン誘導体のシミフギン、ケロール、アミオール、フェノールカルボン酸のカフェ酸、ステロイドのシトステロールなどが報告されており、解熱、鎮痛、抗浮腫作用や肛門部炎症を抑制する作用などが認められている。

 漢方では解表・透疹・清熱・升提の効能があり、麻疹などの発疹を促進し、咽頭や口腔内の炎症を清し、内臓などの下垂を改善する。中国医学では升麻に上行、昇散する性質があり、清陽の気を上昇させ、頭痛や体表の邪を解し、下痢や下垂などを改善すると説明している。

 民間療法でも咽頭の腫脹や口内炎、歯肉炎などに煎液で含嗽したり、湿疹やあせもに煎液を塗布したり、浴湯料として利用している。ちなみに北米インデイアンはアメリカショウマ(C.racemosa:ブラックコホッシュ)を月経困難や更年期障害などに用いていた。

菖蒲根

2013年05月16日 | 健康
○菖蒲根(しょうぶこん)

 日本で一般に菖蒲といわれているものには、アヤメ科のハナショウブ(Iris ensata)とサトイモ科のショウブとがある。菖蒲園などで有名なのはハナショウブ(花菖蒲)のことがあるが、薬用にする菖蒲はサトイモ科のショウブ属の植物(ショウブ)でまったく別である。

 かつてサトイモ科のショウブは葉のすじが文目模様になっていることからアヤメ(文目)と呼ばれた。ところが葉がよく似ている花の美しい植物をハナアヤメと呼ぶようになり、いつしかアヤメといえばこの方のことを指すようになった。このため本来のアヤメを中国語名でショウブと呼ぶようになったが、今度はアヤメ科の園芸品種を誤ってハナショウブと名付けたため、今日でもショウブといえばハナショウブの方が有名になっている。

 ところでサトイモ科のショウブにも2種類あり、ショウブ(Acorus calamus)とセキショウ(A.gramineus)とに区別されている。日本で菖蒲根といえばショウブの根茎を用いるが、これを中国では水菖蒲という。一方、中国で単に菖蒲といえば、セキショウの根茎のことで、石菖蒲ともいう。

 セキショウは本州以西に分布し、おもに谷用の岩場などに群生し、花は3~5月に咲く、ショウブは北海道から九州まで広く分布し、池沼の水辺に自生して花は5~7月に咲く。いずれの花も黄緑色の肉穂花序であまり目立たない。

 ショウブの根茎はセキショウよりも大きくて収穫しやすいため、日本では一般にショウブのほうを薬として用いてきた。ショウブには強い香りがあり、葉が剣状のため、古くから魔除けとしても利用され、くたショウブが尚武に通じることから尊ばれてきた。端午の節句にショウブを軒に挿して戸口にヨモギを吊るす風習やショウブの葉を風呂に入れる菖蒲湯の慣習がある。

 日本の民間療法で肺炎、発熱、ひきつけ、創傷などの治療に根を煎じたものやおろしたものを利用していた。打ち身には根をおろして患部にすり込んだり、歯痛には薄荷やうどん粉を混ぜてはる治療法もある。また菖蒲湯は神経痛やリウマチに効果があるともいわれている。

 漢方では水菖蒲と石菖蒲に区別されるが、開竅・去痰・化湿・解毒の効能はほぼ同じで、癲癇や熱病による意識障害、健忘症、耳聾、、神経症、胃痛、関節痛、打撲傷などに用いる。ただし石菖蒲のほうが香りが強く、意識障害に対する通竅作用もすぐれているのでよく使用される。また新鮮なもの(鮮菖蒲)の方が意識障害に対する効果が強い。