健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

弟切草

2012年03月30日 | 健康
○弟切草(おとぎりそう)

 日本各地、朝鮮半島、中国などに分布するオトギリソウ科(Hypericum erectum)の全草を用いる。この近縁植物でやや大きめのトモエソウ(H.ascyron)は紅旱蓮あるいは大連翹という。オトギリソウは日本の民間薬として有名であるが、中国でもおもに民間療法として用いられている。オトギリソウは弟切草と書き、平安時代の伝説に、これを鷹の秘伝の傷薬としていた鷹飼いが、この秘密を他人に漏らした弟を切り殺したという話が残っている。

 全草にタンニンを多く含むほか、アントラキノン類のヒペリシンやフラボノイドのケルセチンなども含まれる。ヒペリシンは紫外線を強く吸収する黒紫色色素であり、これを含む植物は有毒牧草で、ウシやウマなどの家畜が多量に食べて日光に当たると皮膚炎を起こして脱毛する。

 日本の民間療法では主に外用薬として、生の葉や茎の汁を切傷や腫れ物の塗布薬に、煎液を打ち身や捻挫の湿布薬に使用する。ただ生の汁で皮膚炎を起こすこともある。また、内服では煎じて生理不順や扁桃炎、咳嗽に用いるほか、酒に浸したものをリウマチや神経痛、中風などに用いる。中国でも止血・消腫・通乳、調経の薬として鼻血や月経不順、乳汁不足、腫れ物、外傷出血、捻挫などに用いている。欧米では同属植物のセントジョーンズワート(西洋オトギリソウ)をうつ病に有効なハーブとして利用されている。

黄連

2012年03月28日 | 健康
○黄連(おうれん)

 日本の本州以南に自生するキンポウゲ科の常緑多年草オウレン(Coptis japonica)の根茎を用いる。オウレンには葉の形の違いによりキクバオウレン、セリバオウレン、コセリバオウレンなどがあるが、いずれも薬用とする。中国では四川・湖北・ 西省などで栽培されている黄連(C.chinensis)をはじめ三角葉黄連(C.deltoidea)、峨眉野連(C.omeiensis)、雲南黄連(C.teeta)が基原植物とされている。

 根は球を連ねたように短く節くれ、折ると断面が濃黄色のため黄連の名がある。江戸時代に日本の野生種の黄連が中国などに輸出されたとの記録があり、良質と知られていた。幕末のころより丹波黄連などの栽培が始まったといわれるが、現在、兵庫県ではほとんど栽培されておらず、福井県(越前黄連)、鳥取県(因州黄連)などでわずかに栽培されているだけである。中国産では四川省に産する黄連が有名で、とくに川連といわれている。なお、代用にされる胡黄連はゴマノハグサ科の植物の根茎である。

 黄連にはアルカロイドのベルベリン、パルマチン、コプチシンのほか、酸性物質のフェルラ酸などが含まれる。ベルベリンは苦味が強く、抗菌作用や整腸作用が知られている。このベルベリンは黄柏の主成分でもある。黄連エキスには鎮静、抗潰瘍、抗炎症、抗菌作用などが認められている。

 漢方では黄連の性質は大苦・大寒で瀉火・燥湿・解毒の効能があり、チフスなどの流行性熱性疾患、細菌性腸炎、肺結核、嘔吐、鼻血、下血、咽頭炎、口内炎、湿疹などに用いる。古くから「心火を瀉し、胃腸の湿熱を清し、湿と熱の欝結を治療する要薬」といわれている。

黄薬子

2012年03月27日 | 健康
○黄薬子(おうやくし)

 本州の関東地方以西、朝鮮半島、中国、東南アジアなどに分布するヤマノイモ科のつる性多年草ニガカシュウ(別名:カシュウイモ Dioscorea bulbifera)の塊根を用いる。ニガカシュウにはヒゲ根を多く付けた大きな偏球形の塊根がある。この塊根は食用にもなるが、苦味が強いため灰汁でよく煮て水にさらし、十分にアクを抜く必要がある。苦味の少ない栽培品種にカシュウイモがある。

 ニガカシュウの塊根にはジオスゲニン、ジオスブルピンなどのステロイドサポニンが含まれ、エキスを用いた動物実験では心抑制作用、子宮興奮作用、抗甲状腺作用、抗菌・抗真菌作用などが報告されている。また黄薬子酒の胃癌、食道癌に対する抗腫瘍作用も注目されている。

 漢方では清熱涼血・清熱解毒・止血・散結の効能があり、鼻血、吐血、喀血などの出血、咽頭腫痛、皮膚化膿症、甲状腺腫などに用いる。また出血や腫れ物に、つき潰したものや粉末にしたものを患部に塗布する方法もある。なお中国ではキンポウゲ科のセンニンソウの植物名を黄薬子というので注意を要す。

王不留行

2012年03月26日 | 健康
○王不留行(おうふるぎょう)

 王不留行は、ヨーロッパ、アジアに広く分布するナデシコ科の一年草、ドウカンソウ(Vaccaria pyramidata)の種子を用いる。日本には江戸時代に渡来し、おもに観賞用に栽培されている。中国の広東省産はクワ科のオオイタビ(Ficus pumila)の果実であり、日本に輸入されている王不留行はおもにこれといわれている。

 ドウカンソウの種子にはバクセゴシド、バッカロシドなどのサポニンが含まれる。一般に生のままでは煎じ難いため、鍋で炊いてはじかせてから薬用とする。漢方では通乳・通経・止痛などの作用があり、乳汁不足や乳腺炎、月経閉止、難産、腫れ物、外傷などに用いる。特に中国では乳汁分泌の不足に応用されている。

 金匱要略では外傷の後が腫れて痛むときに用いている。また腫れ物には外用薬としても応用できる。ただし内服では妊婦に禁忌である。

桜皮

2012年03月24日 | 健康
○桜皮(おうひ)

 日本各地、朝鮮半島などの温帯に分布しているバラ科の落葉高木ヤマザクラ(Prunus jamasakura)やソメイヨシノなど桜類の樹皮を用いる。桜皮というのは和名であり、中国にはない。サクラ類は日本に多く、数十種が知られているが、一般に植えられているのはソメイヨシノである。

 サクラは北半球の温帯に広く分布し、美しい花の咲く種類は東アジアを中心に自生している。ヨーロッパのサクラ類はおもに西アジアを原産とするセイヨウミザクラ(P.avium)で、サクランボなど食用に栽培されている。ヤマザクラやソメイヨシノの果実は苦くて食用にならない。薬用には主にヤマザクラの樹皮を用いるが、主幹が20cm以上の太くない木を利用する。桜皮の外観は赤褐色ないし灰褐色で光沢があり、特有の匂いとかすかな渋みがある。

 樹皮にはフラボノイドのサクラニン、サクラネチン、グルコゲンカニン、ナリンゲニンなどが含まれ、葉にはクマリン配糖体が含まれる。クマリン配糖体が分解されると芳香物質が生じるが、これが桜餅の独特の香りである。江戸時代の民間療法として桜皮は様々に応用され、魚の中毒、蕁麻疹、腫れ物などの皮膚病の治療、また解熱、止咳、収斂薬として知られていた。日本の漢方家も解毒・排濃の効能があるとし、華岡青洲は桜皮を配合した十味敗毒湯をよく用いた。

 十味敗毒湯は荊防敗毒湯の内容を加減したもので化膿傾向のある湿疹などに対する処方である。現在でも桜皮のエキス製剤は鎮咳虚痰薬として臨床に用いられている。北米でも先住民が古くからワイルドチェリー(Wild Cherry)の樹皮を下痢や呼吸器疾患の治療に用いていたが、その後、咳止めドロップなどの原料に利用されている。

黄柏

2012年03月23日 | 健康
○黄柏(おうばく)

 日本全土、朝鮮半島、中国北部、アムール地方に分布するミカン科の落葉高木キハダ(Phellodendron amurense)の樹皮を用いる。中国産にはシナキハダ(P.chinense)の樹皮も市場に出ている。日本では樹皮科の剥がしやすい梅雨明け頃に採取され、周皮を除いて乾燥する。

 キハダという名は樹皮を剥ぐと内側が黄色いことを表している。この内皮は古くから黄色染料として用いられていた。この染料には防虫作用もあるため、中国ではかつて公式文書は黄柏で染めた黄紙が用いられていたと記録されている。実際、黄柏で染色された写経用紙が今日まで正倉院にも残されている。

 樹皮にはアルカロイドのベルベリン、パルマチン、マグノフロリンや苦味トリテルペノイドのオーバクノン、リモニンなどが含まれる。ベルベリンや黄柏エキスには抗菌、抗炎症、中枢抑制、降圧、健胃・止瀉作用などが知られている。

 古来より日本各地で黄柏を主成分とする民間薬が多くあり、奈良の陀羅尼助信州のお百草、山陰の練熊などが胃腸薬として有名である。なお陀羅尼助の名は、苦いため経を読む時の眠気防止に利用されたことによるといわれている。

 漢方では清熱燥湿・解毒・清虚熱の効能があり、下痢、糖尿病、黄疸、膀胱炎、痔、帯下、肺結核、湿疹、腫れ物などに用いる。特に下焦の湿熱の症状に対して効果があり、下痢や排尿以上、性器疾患、下肢の神経症などに用いる。民間では黄柏を酢でねって湿疹や打撲傷などの外用薬として用いる。また煎液を目薬や口内炎、扁桃炎の含嗽薬として用いる。

黄土

2012年03月22日 | 健康
○黄土

 中国の西北部から華北にかけて広がる第四紀層に沈積した土を黄土という。アジア内陸のモンゴル、タクラマカンなどの砂漠から偏西風によって渡来した微細な砂粒の風成堆積物で、黄河流域に谷壁をなして露出している。日本には産しないが、関東ロームが比較的近いといわれる。

 K、Na、Ca、SiO2などの塩を含む灰黄色の土である。ただし、日本漢方では一般に伏竜肝のことを黄土と称して用いている。黄土の性味は甘・平・無毒で、和胃・解毒の効能があり、嘔吐、下痢、腫れ物、打撲傷に用いる。金匱要略の黄土湯などに用いる灶心黄土は、この黄土で作ったかまどの土、つまり伏竜肝を用いる。

罌粟殻

2012年03月21日 | 健康
○罌粟殻(おうぞくこく)

 西アジアを原産とするケシ科の越年草ケシ(Papaver somniferum)の果殻を用いる。いわゆるケシ坊主の乳液を採取したあとの果実であり、割って種子を除いたものである。乳液を乾燥させたものは阿片といい、種子は罌粟という。

 中国には5、6世紀ごろにインドから伝えられ、唐代の「新修本草」(659年)には底野迦(アヘン製剤)に関する記述がみられる。日本には室町時代にとらいしたといわれるが、芥子と書いてカラシとケシの両方の読み方があるなどのため詳細は不明である。また津軽地方で栽培されたためツガルとも呼ばれていた。江戸時代には津軽地方に阿片の配合された「一粒金丹」という胃腸薬や強壮強精薬として用いる秘薬があった。今日、津軽のケシは絶えて子孫がない。

 現在ではナイル河畔、ヨーロッパ頭部、カザフ及びキルギス、イラン、アフガニスタン、インド北部、東南アジアなどで栽培されている。東南アジアのラオス、タイ、ミャンマーの三国に接する山岳部はゴールデントライアングルといわれ、かつて非合法な栽培地として有名であった。

 成分にはモルヒネ、コデイン、パパベリン、ナルコチンなど20種以上のアルカロイドが含まれ、鎮痛・催眠・鎮咳などの作用がある。漢方では止痛・止咳・止瀉の効能があるが、最初、罌粟殻は北宋の時には止瀉薬として用いられ、止痛薬として用いられるのは元の時代からである。ただし日本では麻薬及び向精神薬取締法によって使用が制限されている。なお、ケシ粒といわれる小さな種子のケシノミはポピーシードとも呼ばれ、しばしばアンパンやクッキーなどに粒のまま用いられている。

鴨跖草

2012年03月20日 | 健康
○鴨跖草(おうせきそう)

 日本全土、朝鮮半島、中国、シベリア地方に分布するツユクサ科の一年草ツユクサ(Commelina communis)の全草を用いる。ツユクサは古くはツキクサと呼ばれ、青い花の色素を布に浸けて染める着草の意味であった。花で和紙を染めたものが青花紙であり、この紙から浸出した青色液は友禅染めの下絵を描くのに利用されている。また中国や日本では若芽を食用として利用する。

 薬用には、一般に夏の開花期に全草を採取した日干しにする。全草にはフラボノイドのアオバニン、アオバノールが含まれ、花にはアントシアニン系色素のフラボコンメリニン、デルフィニジンなどが含まれる。中国や日本で民間薬として知られ、利水消腫・清熱・解毒の効能があり、浮腫、脚気、尿量減少、感冒、咽頭炎、耳下腺炎、肝炎、陽炎、帯下、丹毒、腫れ物などに用いる。

 近年、中国ではリウマチにより関節が赤く腫れて痛むときに蒼朮・石膏・知母などと配合した加減蒼朮石膏知母湯がよく用いられている。また日本の民間療法に花の絞り汁を腫れ物や口内炎、痔などに外用する方法がある。

黄精

2012年03月19日 | 健康
○黄精(おうせい)

 本州から九州、朝鮮半島に分布しているユリ科の多年草ナルコユリ(Polygonatum falcatum)の根茎を用いる。中国産の黄精はカギクルマバナナユコユリ(P.sibiricum)およびその近縁植物の根茎である。花の咲く様子を鳴子に見立ててナルコユリという。同属植物のアマドコロとよく似ているが、アマドコロの根茎は玉竹である。

 ナルコユリはアマドコロより暖地性で、花が一ヶ所から3個以上つけることが多い。しかしこのアマドコロ属は非常に種類が多く、区別しがたいものも少なくない。このため薬材では太いものを黄精、また一般に黄精よりも玉竹のほうが甘い。

 ナルコユリの根茎には粘液質のファカタンやポリゴナキノンなどが含まれ、降圧作用や強心作用、降血糖作用などが報告されている。ただ、生で用いると咽を刺激するため、蒸した熟黄精を使用する。漢方では補気・潤肺・強壮の効能があり、胃腸虚弱や慢性の肺疾患、糖尿病、病後などによる食欲不振、咳嗽、栄養障害などに用いる。

 日本の民間では江戸時代に滋養・強精薬としてブームとなり、砂糖漬けにした黄精が売られていた。現在でも東北地方には黄精のエキスを入れた黄精飴が売られている。黄精に砂糖を加え、焼酎につけたものを黄精酒といい、精力減退や病後回復の滋養・強壮薬として知られている。小林一茶も黄清酒を愛飲したと書き記している。