健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

荊芥

2012年08月31日 | 健康
○荊芥(けいがい)

 中国北部原産で中国、朝鮮半島に分布し、栽培されるシソ科の一年草ケイガイ(Schizonepeta tenuifolia)の花穂あるいは地上部を用いる。ケイガイはアリタソウとも呼ばれているが、これとは別にアカザ科のアリタソウという植物もあり、この全草は土荊芥という。

 ケイガイは日本にも古くから伝えられ、仮蘇という異名もある。全草に柔毛があり、強い香気がある。中国では花穂のついた全草を用い、特に花穂だけを荊芥穂、茎葉のみを荊芥梗という。日本薬局方では花穂のみが規定され、一般に香味の強いものが良品である。

 全草には精油を含み、精油成分のメントン、プレゴン、リモネン、ピネンなどやフラボノイドのシゾネペトサイドA・B・Cが含まれる。荊芥には鎮痛、抗炎症作用、抗結核菌作用などが報告されている。

 漢方では解表・利咽・消種・止血の効能があり、感冒、発熱、頭痛、咽痛、結膜炎、腫れ物、種々の出血など用いる。荊芥は性質が軽揚であり、辛味も激しくなく、微温でも燥性がないため、風寒、風熱のいずれの熱性疾患にも応用できる。また咽痛の要薬としても有名である。荊芥穂は香気が強く、発散・発汗の効能に優れ、眩暈、とくに産後の眩暈発作に効果がある。また黒くなるまで炒ったものを荊芥炭といい、止血の効能に優れ、鼻血や血便、不正性器出血などさまざまな出血症状に用いる。

薫陸香

2012年08月30日 | 健康
○薫陸香(くんろくこう)

 薫陸香の名は「名医別録」に収載されているが、本草綱目では乳香と薫陸香は同じものとして扱われている。現在、中国では一般に薫陸香は乳香の別名とされている。しかし、乳香はカンラン科の植物の樹脂であり、薫陸香はインドの乾燥高地に自生する同属植物のボスウェリア・セラータ(Boswellia serrata)の樹脂と考えられている。

 この樹脂はインドではサライグックル(Salai guggul)と呼ばれ、一般にインド乳香と呼ばれている。かつて古代オリエントやエジプトでは用いられた乳香がインドに伝わり、インドではこれとよく似たボスウェリア・セラータの樹脂に本物の乳香を混ぜて加工したものを用いていたが、5~6世紀にこれが中国に伝わり薫陸香し呼ばれた。

 8世紀には本物の乳香がアラビアから伝わるようになったため、乳香と薫陸香の区別が曖昧になったと考えられる。また同じウルシ科の植物で地中海沿岸に産するものの樹脂をマスチック(Mastic)といい、古代オリエントでは口中剤としてチューインガムのように噛む習慣があった。これも薫陸香や乳香と混同されていたが、現在では洋乳香という。この洋乳香はギリシャのキオス島に多く産することからキオス・マスチックといい、インドに産する薫陸香はインデイアン・マスチックという。

黒焼き

2012年08月29日 | 健康
○黒焼き

 日本の伝統的な修治法のひとつで、空気を絶った状態で生薬を加熱し、黒色の粉末にしたものをいう。黒焼きは室町時代に中国から伝えられた加工法であるが、江戸時代に独自に発展し、漢方だけでなく民間療法として多く用いられた。

 一般に生薬を素焼きの土器に入れて粘土で密閉し、窯の中に入れて蒸し焼きにする。単に炭化させるのではなく、薫製化したものであり、焼いて性を存すというように有効成分を残している。植物や昆虫は3~4時間、動物は4~5時間くらい加熱し、温度は400℃ぐらいが適当といわれている。

 普通は灰黒色で光沢があり、窒素やリンなどの有機化合物が含まれる。しばしば「~霜」と呼んでいるが、「~霜」は必ずしも黒焼きを意味するものではない。日本の民間薬としてよく知られているものにモグラの黒焼き(土竜霜)、シカの角の黒焼き(鹿角霜)、マムシの黒焼き、フナの黒焼き、ナスの蔕の黒焼き、髪の毛の黒焼き(血余霜)、サルの頭の黒焼き(猿頭霜)にどがある。

 伯耆の国(現在の島根県)の民間薬として有名な伯州散は津蟹、反鼻、鹿角の黒焼きを配合したもので、化膿性疾患の排膿促進や肉芽形成の効能がある。一方、中国では空気を遮断せずに黒焼きにすることを妙炭といい、しばしは収斂止血の効能を増強する目的で行われる。例えば荊芥(荊芥炭)、山梔子(山梔炭)、乾姜(炮姜)、蒲黄、大薊、小薊、地楡、血余炭、陳棕炭などがある。

黒文字

2012年08月27日 | 健康
黒文字(くろもじ)

 北海道の渡島半島、本州、四国、九州のほか、中国大陸などに分布するクスノキ科の落葉低木クロモジ(Lindera umbellata)の枝葉や根皮を用いる。クロモジの名は樹皮にある黒い斑点を文字にみたてたものである。

 材には芳香があり、噛むと甘い香りがあり、皮つきのまま削って楊枝として賞用される。このため爪楊枝のことをクロモジということがある。また雪の上を歩く輪かんじきの材料としても知られている。

 枝葉には精油成分のシネオール、ゲラニオール、リナロールなどが含まれ、虚痰作用が知られている。枝葉を水蒸気蒸留して得られるクロモジ油は石鹸香料香水としても利用される。

 漢方では用いないが、中国ではおもに根皮を、日本(山陰地方)では枝葉を民間薬として用いる。島根県の出雲地方ではマキのように束ねて、八百屋でも売られている。一般に煎じて脚気や浮腫、胃腸炎の治療に、粉末を止血薬に、また浴湯料としていんきん、たむしなどの皮膚病にも用いる。ひょう疽には樟脳・甘草とともに煎じた液で痛む指を温めるとよい。

苦楝皮

2012年08月25日 | 健康
○苦楝皮(くれんぴ)

 西南アジア原産と考えられ、日本では伊豆半島以南、四国、九州に野生状態で生育しているセンダン科の落葉高木センダン(Melia azedarach)の樹皮を用いる。

 分類に諸説があるがセンダンを一般に楝樹といい、タイワンセンダンを苦楝、トウセンダン(M.toosendam)を川楝という。いずれも苦楝皮の基原植物として用いられる。一方、タイワンセンダンの果実である苦楝子は、川楝子として流通している。ちなみに双葉よりかんばしいといわれるセンダンはビャクダン(白檀)のことで全く別の樹木である。

 一般にセンダンの幹皮や樹皮を苦楝皮というが、根皮をとくに苦楝根皮ともいう。中国ではおもに根皮を用い、日本ではおもに幹皮を用いる。樹皮の成分にはトウセンダニン(メルソシン)、センダニン、メリアノン、マルゴシン、アスカロール、バニリン酸、クマリン誘導体などが含まれ、駆虫作用化や抗真菌作用が報告されている。近年、センダン葉の抽出エキスに、直接、インフルエンザウイルスを不活性化する効力が認められ、空間消毒用の噴霧器が開発されている。センダンエキスは有毒とされるが、多量に用いると顔面紅潮や眠気が出る程度で、副作用はあまり強くない。

 漢方では清熱燥湿・駆虫の効能があり、おもい回虫や条虫の駆虫に用いる。寄生虫症の治療には単独で、あるいは石榴根皮と配合して用いる(石榴根湯)。また蕁麻疹や湿疹、刺虫症などの外用薬として用いる。またセンダンの花を楝花といい、むしろの下に敷いて蚤やの予防に用いたり、焼いて出る煙を蚊の駆除に用いた。

クラーレ

2012年08月22日 | 健康
○クラーレ

 南アメリカ大陸の熱帯低地、アマゾン川やオリノコ川流域などで原住民が矢毒として用いていた黒褐色の植物性毒物のことをいう。各地域で毒物の貯蔵容器が異なるため、その容器によりアマゾン川流域の竹筒クラーレ(tubo-curare)、オリノコ川流域の壺クラーレ(pot-curare)、ギアナ、コロンビア地方の瓢箪クラーレ(gourd-curare)に区別される。

 これらの基原植物はひとつではなく、マチン科の植物Strychnos castelnaei、ツヅラフジ科の植物Chondrodendron tomentosumなどが知られている。竹筒クラーレはツヅラフジ科の植物、壺クラーレはツヅラフジ科やマチン科の植物、瓢箪クラーレはマチン科の植物を用いている。これらの樹皮や材をよく煮詰めた煮汁がクラーレで、これを狩猟の際の矢の先に塗る。この毒を射込まれた動物は痛むことなく筋肉が弛緩して動かなくなり、呼吸麻痺で死亡する。しかもこの動物をすぐに食べても、有毒物質は消化管から吸収されないため中毒を起こさない。

 これらのクラーレから多数のアルカロイドが分離されているが、ツヅラフジ科の植物から得られたツボクラリンが有名である。ツボクラリンは運動神経の伝達物質であるアセチルコリンと拮抗し、アセチルコリンの作用を失活させる。ツボクラリン塩化物(アメリゾール)は手術時の筋弛緩薬として用いられている。

瞿麦

2012年08月21日 | 健康
瞿麦(くばく)

 本州北部、北海道根アジア・ヨーロッパの温帯に分布するナデシコ科の多年草カワラナデシコ(Dianthus superbus)及び中国原産のセキチク(D.chinensis)の全草を用いる。

 ナデシコは本州中部以南のカワラナデシコと中部以北のエゾカワラナデシコなどの変種に区別されるが、種のレベルは同じであり、同様に用いられる。またセキチクをカワラナデシコ(唐撫子)というのに対して、カワラナデシコはヤマトナデシコ(大和撫子)ともいう。

 生薬としては開花時の地上部の全草を瞿麦として用いる。また9月頃に果実ごと全草を採取し、乾燥させた後に手で揉んで集めた種子は瞿麦子という。一般に中国では全草が、日本では種子が好んで用いられている。

 ナデシコの全草には少量なアルカロイド、セキチクにはサポニンなどが含まれ、瞿麦には利尿作用や心臓抑制作用、腸蠕動の興奮作用などが報告されている。漢方では全草に清熱・利尿・破血・通経の効能があり、主に尿路疾患に応用され、血尿を伴う膀胱炎や尿路結石に適している。

 膀胱炎には木通・滑石・車前子などと配合する(八正散)。尿路結石には車前子・石韋・滑石などと配合する(石葦散)。金匱要略では排尿障害には栝楼根・茯苓などと配合して用いている(栝楼瞿麦丸)。一方、瞿麦子には利尿作用のほか通経作用があり、民間薬として浮腫や月経不順に用いられている。ただし瞿麦子を多量に用いると流産の恐れがあり、かつて妊娠中絶薬として利用されたこともある。

熊柳

2012年08月20日 | 健康
○熊柳(くまやなぎ)

 日本全土の山野に自生するクロウメモドキ科のつる性落葉低木クマヤナギ(Berchemia racemosa)の葉や茎を用いる。福島県の山間部では、古くからこのつるを乾かして利尿剤として用いていた。有効成分は不詳である。

 日本固有の生薬であり、民間療法として膀胱炎や尿路結石、胆石、腰痛などに利用されている。胆石や尿路結石には連銭草裏白樫などと配合する(消石茶)。

 幹を30cmくらいに切って真ん中を炙ると、両端から油が出る。この油を口内炎に塗って治療する方法もある。ちなみに太平洋戦争中、医薬品が不足したため、クマヤナギの茎葉を乾燥したものを煎じた苦味健胃薬として用いたといわれている。

隈笹

2012年08月18日 | 健康
隈笹(くまざさ)

 日本に分布するイネ科のチシマザサ(Sasa kurilensis)などのササの葉を用いる。属名にSasa属という学名がつけられているように、ササは日本の温帯林に特徴的な植物である。ササはタケ類の小型化したもので、寒冷な地域に適応したものとされている。

 クマ笹という名は葉の緑が白く隈どられていることに由来する。若葉の時には全体に緑色であるが、秋から冬にかけて緑が枯れて白い隈ができる。しかし、大型のササの葉を俗に「熊笹」と呼ぶこともあり、また実際に熊がササを好んで食べることもよく知られている。

 クマ笹エキスには、チシマザサ、クマイザサ(S.senanensis)などが利用されている。ササの葉は笹だんごやちまきなど食べ物を包むのに利用されている。ササの葉に包むと食べ物が長持ちするといわれるが、これはササに含まれる安息香酸の殺菌・防腐作用と関係があるといわれる。

 葉にはクロロフィル(葉緑素)やリグニン、多糖体(バンフォリン)、鉄、カルシウム、ビタミンC・K・B1・B2などが含まれ、胃潰瘍や胃炎、歯槽膿漏、口内炎、口臭、体臭などに対する薬理作用が知られている。近年、成分のバンフォリンに免疫賦活作用や制癌作用があるとも報じられている。

 民間では健胃薬や疲労回復、糖尿病高血圧の予防などに用いられている。また外用薬として切り傷、口内炎、湿疹などに、薬湯にして汗疹によいといわれている。一般にササの葉をミキサーにかけた青汁や、何度か煮詰めるように煎じたクマ笹エキスが服用される。製剤化されたものではサンクロンや松葉などと配合した松寿仙などがある。

狗脊

2012年08月17日 | 健康
○狗脊(くせき)

 奄美諸島以南、台湾、中国南部、東南アジアなどに分布するシダ植物タカワラビ科のタカワラビ(Cibotium barometz)の根茎を用いる。秋から冬にかけ、地上部が枯れたときにこの根を採取する。長く這った根茎の形が犬の脊骨に似ているため狗脊といわれ、根茎と葉柄の基部の周囲が黄色の毛に覆われているため金毛犬脊ともいわれる。

 中国四川省で多く産出されるが、福建省産のほうが品質がよい。また陜西省ではオシダ科の植物の根茎が狗脊あるいは黒狗脊と呼ばれたり、湖南・江西・広西省ではシシガシラ科のオオカグマ(Woodwardia japonica)の根茎が狗脊として用いられている。

 タカワラビの根茎にはデンプンが約30%のほか、アスピジノールなどが含まれる。漢方では肝腎を補い、筋骨を強め、風湿を去る効能があり、足腰の衰弱、失禁、頻尿、遣精、帯下などに用いる。高齢者などで不眠、健忘、精神疲労、眩暈、脱力感のみられるときには人参・地黄・夜交藤などと配合する(滋補片)。腰や背がこわばって痛み、仰向けになれず、足や膝の弱ったときには桑寄生・杜仲・牛膝などと配合する。リウマチなどによる関節痛や腰痛などには秦艽・続断・牛膝などと配合する。

 根茎の周囲の柔毛は金狗脊黄毛と呼ばれ、あぶって粉末にしたものを止血・生肌薬として外傷性の出血などに外用する。