健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

柏子仁

2014年04月30日 | 健康
○柏子仁(はくしにん)

 中国または朝鮮半島を原産とするヒノキ科の常緑小高木コノテガシワ(Thuja orientalis)の種子を用いる。若枝を含む葉は側柏葉という。

 コノテガシワは江戸時代に日本に伝えられ、庭園樹や庭木として広く栽培されている。神農本草経では柏実の名で収載され、古くより仙人が好んだ滋養薬としてよく知られている。

 種子は松の実によく似ており、脂肪油に富んでいる。漢方では養心安神・潤腸の効能があり、動悸、不眠、盗汗、便秘などに用いる。動悸や不眠などの神経症状には酸棗仁・遠志・五味子などと配合する(天王補心丸)。高齢者や産後の便秘には桃仁・杏仁などと配合する(五仁丸)。

白魚

2014年04月28日 | 健康
○白魚(はくぎょ)

 温帯に広く分布するシミ科の昆虫セイヨウシミ(Lepisma saccharina)の全虫を用いる。古い家屋や家屋内の暗いところ、古い書物や衣服の中に生息し、和紙や衣類ののりなどを食べる害虫である。

 日本のシミはおもに体長8mmくらいのヤマトシミであるが、中国のセイヨウシミは体長1cmくらいである。全体が銀白色で形が魚に似ているため白魚とか衣魚・紙魚という名がある。一年中採取でき、熱湯に入れて殺した後に乾燥する。

 排尿障害や淋病、小児のひきつけ、皮膚化膿症に用いる。金匱要略の中に排尿障害のときに白魚と滑石・血余と合わせて散剤として服用するとある(滑石白魚散)。

麦芽

2014年04月24日 | 健康
○麦芽(ばくが)

 中近東あるいは中国が原産とされている。イネ科のオオムギ(Hordeum vulgare)の発芽したを用いる。ただし、原産地については明らかではない。オオムギはヨーロッパでは有史以前から主食の一つで、世界各地で栽培され、日本にも3~4世に伝えられた。

 オオムギはグルテンを含まないためパンはできず、現在ヨーロッパでは食用ではなく、飼料やビール、ウイスキーの醸造用として栽培されている。日本でも押麦にして米と混炊して食用にすることもある。オオムギの果実(種子)を生薬では大麦という。オオムギを水に浸し、発芽して3~5mmになった後、取り出して日干しにしたものが麦芽である。

 麦芽にはデンプンや麦芽糖、タンパク質のほか、アミラーゼ、プロテアーゼ、マルターゼ、ビタミンB群、さらにアルカロイドのホルデニン、毛根には毒素のカンジシンが含まれている。カンジシンには筋弛緩作用があり、そのため家畜が中毒することがある。麦芽はデンプンの消化剤、ジアスターゼの原料として用いられている。

 漢方では消食・健胃・退乳の効能があり、消化不良や食欲不振、腹部膨満感、嘔吐、下痢、乳房の腫れなどに用いる。これらの効能は麦芽に含まれる消化酵素やビタミンB群などと関係していると思われる。

 消化不良や食欲不振には山査子や神麹などと配合する(焦三仙)。また滋養作用もあり、とくに小児の胃腸障害に適している(保和丸)。乳児では吐乳するときには麦芽だけを煎じて服用させる。眩暈症の治療に用いる半夏白朮天麻湯には胃腸を整える目的で麦芽が配合されている。何らかの理由で授乳を中断させ、乳房が張って痛むのを治療するときには、生麦芽を弱火で焦がした炒麦芽を、やや多量に煎じたり、粉にして服用する(麦芽湯)。

白果

2014年04月23日 | 健康
○白果(びゃっか)

 中国原産で、平安時代以降に渡来して日本全土に植栽されているイチョウ科の落葉高木イチョウ(Ginkgo biloba)の種子(胚乳)を用いる。中国ではイチョウのことを成長が遅く孫の代にならないと実がならないことから公孫樹、種子が白くて銀のようであるとして銀杏、葉の形が鴨の水かきに似ているために鴨脚の中国音、ヤーチョオに由来する。

 ギンナンの名も銀杏の中国北部の発音であるギンアンに由来する。イチョウは雌雄異株の裸子植物で、秋に雌株だけに実(植物学的には種子)がなる。実の多肉質な外種皮は熟すと独特の異臭がある。

 果肉にはアナカルデイア酸、ギンコール酸、ピロボールが含まれ、皮膚に付着するとかぶれを生じる。その中に硬い殻のギンナンがある。薬用には成熟した果実を土に埋めたり、水に漬けたりして外種子を腐敗させた後、洗浄し、日干しする。ギンナンはタンパク質やデンプンに富み、食用とされるが、多食すると中毒を起こし、小児では死亡することもある。

 ギンナンには4’-メトキシピリドキシンという物質が含まれているが、これはビタミンB6と構造が似ているため、ビタミンB6の働きを競合的に阻害し、その結果、脳内の神経伝達物質、γ-アミノ酪酸(GABA)の生成を抑制して痙攣、嘔吐、眩暈、呼吸困難といった中毒症状を表すと考えられている。

 漢方では収渋薬のひとつで止咳・平喘・化痰・縮尿の効能があり、咳嗽、喘息、帯下、頻尿、遺尿などに用いる。たとえば肺熱の咳嗽や呼吸困難、とくに痰の多い喘息に麻黄・杏仁・桑白皮などと配合する(定喘湯)。

 日本には夜尿症の治療に年齢の数だけギンナンの焼いたものを食べさせるという療法がある。またイチョウの葉をしおりに使うとシミがわかないとか、落葉を根元に敷いて肥料にすると駆虫効果があるとして利用されている。近年、イチョウの葉に血流改善作用が認められ、認知症などへの効果が注目されている。

佩蘭

2014年04月22日 | 健康
○佩蘭(はいらん)

 日本の関東地方以西、朝鮮半島、中国に分布するキク科の多年草フジバカマ(Eupatorium fortunei)の茎葉を用いる。中国原産であるが、古くから日本に帰化している植物で、秋の七草の一つである。

 かつて中国で蘭といえばフジバカマのことを指し、蘭草とか香水蘭と呼ばれ、香草のひとつとして風呂に入れたり、香料として身につけていた。現在、中国市場では佩蘭としていつくかの基原植物が混じっており、とくにシソ科のシロネ(Lycopus lucidus)の全草である沢蘭と混同されることが多い。逆に沢蘭としてフジバカマを用いている地区もある。

 生のフジバカマには香りはないが、乾燥させると成分のクマリン配糖体が分解されてオルトクマリン酸となり、桜餅のような香りがする。また水性エキスには血糖降下作用や利尿作用がある。漢方では芳香化湿・健胃・解暑の効能があり、とくに夏の胃腸風邪(暑湿)の常用薬である。

 中国医学では佩蘭は芳香化湿薬のひとつであり、脾胃を覚醒させ、胃腸に溜まった湿濁の気を除く作用があると説明している。また佩蘭は湿濁によって生じる「脾癉の要薬」といわれ、口が甘い、口が粘る、口臭がある、みぞおちが張る、食欲不振、消化不良、吐き気、嘔吐、軟便、倦怠感などの症状に用いる。民間薬として糖尿病や浮腫に用いられている。そのほか皮膚の痒みに対して浴湯料として用いる。

貝母

2014年04月21日 | 健康
○貝母(ばいも)

 中国原産で日本でも切り花や鉢植えに栽培されているユリ科の多年草アミガサユリ(Fritillaria verticillata)の鱗茎を用いる。貝母という名は2つの厚い鱗片が、母貝が小貝を抱いたように合わさっていることに由来する。日本の古名のハハクリ(母栗)の語源も形が栗のようで、子を抱く母の姿に似ていることによる。また花の内側に紫色の網目模様があるためアミガサユリ(編笠百合)の名がある。

 日本産の貝母は奈良県で栽培され、大和貝母と呼ばれている。中国では貝母は川貝母と浙貝母に区別され、浙貝母は日本産と同じアミガサユリの鱗茎であるが、川貝母はその他の同属植物、巻葉貝母、烏花貝母、稜砂貝母などの鱗茎である。ただし日本の輸入されているほとんどは浙貝母である。

 浙貝省象山県を原産とするため浙貝母といい、また象貝母ともいわれる。川貝歯は四川省を主産地とする。いずれの貝母も化痰・止咳の効能があり、咳嗽、喀痰、咽頭痛などに用いる。川貝母のほうが薬性は穏やかで、潤す性質があるため、慢性化した気管支炎や痰の少ないときに用いる。浙貝母は清熱作用にすぐれ、急性の気管支炎やなどで炎症が激しく粘稠痰の出るときに適している。なお土貝母というのはウリ科の植物の塊茎で薬材の形は似ているが貝母とは全く別の生薬である。

梅肉膏

2014年04月17日 | 健康
○梅肉膏(ばいにくこう)

 梅肉膏はバラ科のウメ(Prunus meme)の未成熟果実を加工したもので、日本独自の民間薬である。ウメは梅干しや梅酒として日本人に親しまれているが、これらは薬用としても利用される。

 梅干しは食中毒の予防や食欲増進に、梅酒は夏の暑気あたりや夏まけに効果がある。また民間療法に梅干しを熱灰に埋めて黒焼きにした梅の黒焼きがある。風邪の熱や咳には黒焼きを熱湯に入れて飲んだり、歯が痛むときには患部に黒焼きをすり込んで治療する。頭痛に梅干しの果肉をこめかみに貼ることもよく行われていた。

 江戸時代から伝わる民間薬、梅肉膏は昭和初期に筑田多吉の著した「家庭における実際看護の秘訣」(通称:赤本)によって日本中に広く知られるようになった。最近では梅肉エキスとして有名である。

 梅肉膏は、生の青梅をすりおろし、布巾でしぼった汁を天日で濃縮、あるいは過熱してゆっくりと煮つめたものである。弱火で煮つめると泡が立つが、混ぜているとドロッとなり、黒っぽい水飴のような酸味が強いものできる。これが梅肉膏である。

 梅肉膏は下痢や食中毒の改善効果やピロリ菌に対する抗菌作用などが認められ、また感冒や咳嗽、咽頭炎などにも用いられる。外傷や皮膚真菌症などに外用する方法もある。

 近年、梅を加熱する過程で、クエン酸と糖質(HMF)がエステル結合した化合物、ムメフラールが生成されることが明らかとなった。このムメフラールには血小板凝集能抑制効果や赤血球変形能改善効果が認められ、血流状態を改善することが注目されている。

貝歯

2014年04月16日 | 健康
○貝歯(ばいし)

 貝歯には白貝歯と紫貝歯とがあり、一般には紫貝歯がよく知られている。いずれもタカラガイ科の貝であるが、白貝はタカラガイ科のキイロダカラ(Monetaria moneta)やハナビラダカラ(M.amulus)などの貝殻、紫貝歯はハナマルユキ(Erosaria caputserpentis)やヤクシマダカラ(Mauritia arabica)などの貝殻を用いる。

 一般に白貝歯は小型種で全体が黄白色、紫貝歯は大型種で黄褐色や紫色の斑紋がみられる。いずれも南方の海洋に分布し、海南島や台湾、福建省などに産する。

 成分はほとんど炭酸カルシウムで、少量の有機酸、マグネシウム、鉄、ケイ酸塩、硫酸塩、塩化物を含む。漢方では紫貝歯の味は鹸、性は平で、清熱・平肝・明目・安神の効能があり、眩暈、頭痛、結膜炎、不安、不眠などに用いる。白貝歯の味は鹸、性は涼で、清熱・利尿の効能があり、浮腫や膀胱炎などに用いる。

敗醤

2014年04月15日 | 健康
○敗醤(はいしょう)

 日本各地や朝鮮半島、中国名とに分布するオミナエシ科の多年草オトコエシ(Patrinia villosa)やオミナエシ(P.scabiosaefolia)を正条品としている。根のついた全草を敗醤あるいは敗醤草、根だけを敗醤根という。

 神農本草経の中品に収載されている敗醤もオトコエシのこととされている。しかし、現在の中国市場に出ている基原植物はおもにアブラナ科のグンバイナズナ(Thlaspi arvense)やキク科のアキノノゲシ(Lactuca indica)などの全草といわれ、はなはだ混乱している。日本産の敗醤根はオミナエシの根である。

 敗醤の名は乾燥させた根茎が醤油の腐った臭いのすることに由来する。オトコエシ(男郎花)やオミナエシ(女郎花)の名の由来は定かではないが、オトコエシの方が茎が太くて毛で覆われ男性的である。またオミナエシの花は黄色く、オトコエシの花は白い。

 オトコエシの果枝にはシニグリン、根には苦味配糖体のロガニンが含まれ、オミナエシの根にはオレアノール酸などが含まれている。漢方では清熱解毒・排膿の効能があり、虫垂炎、下痢、帯下、腫れ物などに用いる。おもに虫垂炎に用いるため「腸癰の要薬」ともいわれる。

 急性虫垂炎や虫垂炎周囲には薏苡仁・附子などと配合する(薏苡附子敗醤散)。また皮膚の化膿などには金銀花・連翹などと配合して煎服したり、生のものを患部に添付する。

梅寄生

2014年04月11日 | 健康
○梅寄生(ばいきせい)

 日本各地および北半球に広く分布し、おもにブナ、カシなど広葉樹の生木や枯木に寄生するマンネンタケ科の担子菌類コフキサルノコシカケ(Ganoderma applanata)などの子実体を用いる。樹幹から直接に傘だけの子実体をつけ、表面に薄くココアの粉のように胞子が付いているため、「粉吹き猿の腰掛け」という名がある。

 梅寄生は梅の幹に寄生するサルノコシカケという意味で珍重されているが、現在では寄生樹に関係なく梅寄生という名で市販されている。以前はサルノコシカケ科に含まれていたが、現在はマンネンタケ科に分類されている。コフキサルノコシカケは茶色のコルク質で非常に硬く、食用には適さない。

 1975年頃、サルノコシカケ科のカラワタケからPSKという制癌剤が開発され、、梅寄生も注目されるようになった。コフキサルノコシカケの子実体にはエルゴステロール、ジヒドロエルゴステロール、ユビキノンなどが含まれ、煎液やそれに含まれる多糖類混合物に抗腫瘍活性が認められている。

 サルノコシカケは日本の民間薬であり、かつては解熱薬、心臓病や半身不随の治療薬として用いられていたが、近年では専ら抗癌作用が期待されている。一般に1日量約20gを煎じて服用する。かつて日本の生薬市場ではコフキサルノコシカケのうち、断面が赤いものを梅寄生、白いものを桑寄生と呼んで区別していたこともある。