健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

柴胡

2012年12月31日 | 健康
○柴胡(さいこ)

 日本では本州、四国、九州、朝鮮半島に分布しているセリ科の多年草コシマサイコ(Bupleurum falcatum)の根を用いる。ミシマサイコの名は、三島に集荷されていた伊豆地方の柴胡の品質が優れていたためにそう呼ばれるようになった。

 日本産のミシマサイコは和柴胡とも呼ばれ、柴胡の中で最も良品とされている。かつて宮崎県、鹿児島県、静岡県などで野生品が採取されていたが、近年、野生品はごくわずかで市場にはない。最近では日本でも栽培による生産が行われているが、品質は野生品には及ばない。

 中国産の柴胡の基原植物にはいくつかの種類があるが、市場品にはおもにマンシュウミシマサイコ(B.chinense)とホソバミシマサイコ(B.scorzoneraefolium)である。マンシュウミシマサイコは国産のミシマサイコとほぼ同じ植物とされ、天津から輸出されるため津柴胡ともいわれている。韓国産は栽培品であるミシマサイコである。国内の栽培品の生産量は需要の一割に満たず、現在ほとんど中国や輸入されている。ちなみに韓国産の竹柴胡はホタルサイコ系で薬用に適さず、銀柴胡はナデシコ科の別の植物である。

 柴胡の成分にはサポニンのサイコサポニンa・c・d・e・f、ステロールのスピナステロール、スティグマステロール、そのほかパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪酸やアドニトール、アンゲリシンなどが含まれる。サポニンや柴胡の煎液には解熱、抗炎症、抗アレルギー、肝障害改善、抗潰瘍、抗ストレスなどの作用があることが報告されている。

 漢方では解表・疏肝・升提・抗瘧の効能があり、遷遷化した発熱や季肋部の不快感、口苦、内臓下垂などに用いる。感染症の少陽病期で邪が半表半裏にあり、寒熱往来といわれるような悪寒と発熱を反復するときには黄芩と配合し、表証の残っているときには葛根と配合する。また胸脇苦満といわれる季肋部の膨満感や圧痛には芍薬と配合し、胃腸症状には枳実と配合する。日本では柴胡の配合された処方をとくに柴胡剤といい、慢性疾患や体質改善の治療に幅広く応用している。

犀角

2012年12月29日 | 健康
○犀角(さいかく)

 サイ科の動物、サイ類の角を犀角という。サイはアジア及びアフリカの熱帯に生息する草食動物で、鼻の上に1本あるいは2本の角質の角を持っている。アジアには鎧のような厚い皮をもつ1角のインドサイ、ジャワに分布するインドサイよりもやや小さい1角のジャワサイ、スマトラに分布する最も小型で体毛の多いスマトラサイが、アフリカにはクロサイとシロサイが生息している。

 一般に犀角は大きく烏犀角と水犀角の2つに区別される。烏犀角とはインド犀の角を基原とし本犀角とも呼ばれるが、これらの動物は絶滅に瀕しており中国でも市場にはほとんど出ていない。これに対して水犀角はアフリカのクロサイの角に基づくものである。犀角の市場品はほとんどが水犀角である。ただし現在はワシントン条約により日本への輸入は禁止されている。このため近年、中国では水牛角が代用品として注目されている。

 犀角の主要成分はケラチンであるが、ケラチンを構成しているアミノ酸にはシスチン、ヒスチジン、リジン、アルギニンなどが含まれている。そのほか他のタンパク質、ペプチド類、遊離アミノ酸、グアニジン誘導体、ステロール類などが含まれている。

 漢方では清熱・定驚・涼血・解毒の効能があり、感染症による高熱や煩躁、痙攣、意識障害、出血、斑疹、発疹などに用いる。高熱に伴う意識障害には連翹・玄参などと配合する(清営湯)。痙攣のみられるときには羚羊角などと配合する(紫雪丹)。出血するときには生地黄・牡丹皮を配合する(犀角地黄湯)。発疹するときには石膏・知母などと配合する(化斑湯)。

牛膝

2012年12月28日 | 健康
○牛膝(ごしつ)

 日本の本州以南、中国に分布するヒユ科の多年草ヒナタイノコズチ(Achyranthes fauriei)の根を用いる。ヒナタイノコズチはイノコズチ(A.japonica)の近縁種で、路ばたや野原に普通にみられ、その根はイノコズチより大きい。

 かつて日本でも野生のもの(ヤブ牛膝)が採取されたり、茨城県で栽培されていた(作り牛膝)こともあるが、今日では流通していない。中国産の牛膝はイノコズチの同属植物モンパノイノコズチ(A.bidentata)の根であり懐牛膝または淮牛膝という。またイノコズチモドキ属の川牛膝(Cyathula officinalis)の根は川牛膝と呼ばれ、この川牛膝も最近では日本に多く輸入されている。

 イノコズチの名はイノシシの膝という説もあり、牛膝と同様に茎のある節の形から名づけられたものである。果実は動物や衣服にくっつくため、ドロボウグサとかヤブジラミなどの方言もある。根の成分には昆虫変態ホルモンのイノコステロンやエクジステロン、サポニンのオレアノール酸配糖体、各種アミノ酸、βシトステロール、スティグマステロールなどが含まれ、子宮収縮作用や腸管抑制作用、降圧作用、止痛作用などが報告されている。

 漢方では活血・通経・止痛・強筋骨の効能があり、婦人科疾患や関節痛、打撲、神経痛、足腰の筋肉の萎弱や疼痛などに用いる。ちなみに牛膝には下行する性質があり、月経血の排出促進や利尿、通便し、上半身の充血を軽減する。さらに他の生薬の効能を下半身に導く引経薬ともいわれている。このため月経困難症や排尿障害、歯肉炎の治療薬としても知られている。また堕胎に用いられたこともあり、妊婦や性器出血、下痢などには用いないほうがよいとされている。一般に懐牛膝は滋養・強壮作用が強く、川牛膝は活血・止痛の作用が強いといわれている。

コンフリー

2012年12月27日 | 健康
○コンフリー

 ヨーロッパ原産でヨーロッパからシベリア、中央アジアにかけて自生しているムラサキ科の多年草ヒレハリソウ(Symphytum officinale)の根や葉を用いる。

 日本には観賞用として明治時代に輸入された。若い葉を食用にするが、コーサカス地方の長寿村で常食されていたことから日本でもコンフリーの青汁療法がブームとなったことがある。

 全草にはアルカロイドのコンソリジンやタンニン、アラントイン、各種ビタミンなどが含まれ、貧血予防や新陳代謝促進の効果があるといわれている。ただし、動物実験で発癌性があるという報告もある。

 ヨーロッパでは根をシムフィツム根と呼び、おもに胃潰瘍や下痢、気管支炎、出血の治療に用いる。骨折や挫傷の外用薬としてもよく知られている。また根や葉のエキスにはパップ剤や湿布剤として下肢静脈瘤などに用いる。乾燥した葉はお茶の代用にも利用できる。ちなみにヨーロッパでは主に飼料用作物として利用されている。

 2004年6月、厚生労働省はコンフリーについて、根茎に含まれるピロリジディン・アルカロイドによると思われる肝臓障害(肝静脈閉塞性疾患)を招いた事例が海外で報告されているため、販売自粛を要請した。

昆布

2012年12月26日 | 健康
昆布

 コンブ科のマコンブ(Laminaria japonica Areschoug)やクロメ(Ecklonia kurome Okamura)、ワカメ(Undaria pinnatifida Suringar)の葉状体を用いる。北海道の沿岸でマコンブが生産されるが、日本では古くからヒロメとかエビスメと呼ばれて食用にされている。出汁や煮物などの食用以外にもアルギン酸製造の原料にもされている。

 クロメは本州南部から九州沿岸に分布し、本来は暗褐色だが、乾燥すると黒色に変化するためその名がある。クロメは食用のほか、ヨードの原料としても利用される。中国の植物名で昆布といえばクロメのことであり、マコンブは海帯という。ワカメは日本の北海道の西岸から九州まで、および朝鮮半島の沿岸に分布し、古来、日本の最も身近な海藻として利用されている。

 マコンブには炭水化物として多糖類のアルギン酸、フコイジン、ラミナリンなどが含まれ、また旨味のグルタミン酸やアラニン、ヨードやカルシウムなどの無機物なども多く含まれる。ヨードは甲状腺に不可欠な成分で、ヨード不足による単純性甲状腺腫に効果がある。また降圧作用や鎮咳作用なども報告されている。

 漢方では軟堅・利水消腫の効能があり、癭瘤(甲状腺腫)や瘰癧(頸部リンパ腺腫)、浮腫、睾丸腫痛などに用いる。甲状腺の腫大には海藻・貝母などと配合する(海藻玉壺湯)。浮腫や脚気には他の利水薬とともに用いる。ただし脾胃の虚寒証で下痢気味のときには用いない。

 現在、昆布のヌメリから抽出したアルギン酸ナトリウムは、コレステロールの吸収を抑え、また整腸作用があるとして特定保健用食品の関与成分に認定されている(コレカット)。またコンブの一種、ガゴメコンブ(Kjellmaniella crassifolia)のヌメリ成分、多糖体のフコイダンに抗ウイルス・抗菌、免疫賦活、血液凝固抑制、肝機能改善などの健康効果、さらにアポトーシス誘導作用、NK細胞活性化作用といった抗癌作用が認められ注目されている。

コンズランゴ

2012年12月25日 | 健康
○コンズランゴ

 南米のペルー、コロンビア、エクアドルのアンデス山脈の自生するガガイモ科のつる性低木コンズランゴ(Marsdenia cundurango)の幹皮を用いる。現在では東部アフリカなどで栽培されている。元来、南米の原住民が昔から用いていた薬木で、ヨーロッパに胃癌の治療薬として用いられるようになった。

 成分にはプレグナン配糖体のコンズラゴグリコシド、シクリトールのコンズリトールなどが含まれる。苦味質のコンズランギンは冷水には溶けて澄明であるが温めると水溶液が濁り、約40℃でゼリー状になって固まるという特異な溶解性がみられる。

 コンズランゴは芳香性苦味健胃薬として消化不良や食欲不振などに用いられる。とくに胃粘膜の病変に有効であるといわれている。一般には煎剤やコンズランゴ酒として用いられるが、市販されれいる胃腸薬にはコンズランゴ流エキスがしばしば配合されている。

コロンボ

2012年12月24日 | 健康
○コロンボ

 アフリカ東岸のモザンビーク地方やマダガスカル島の森林地帯に自生するツヅラフジ科のつる性本木コロンボ(Jateorhiza columba)の塊茎を用いる。現在、アフリカやインドなどで栽培されている。アフリカではコロンボの根を赤痢の薬として用いていたといわれる。

 薬材のコロンボは塊茎を輪切りにして乾燥したもので、厚さ0.5~2cm、径3~8cmの円盤状をしている。切断面は淡黄色をした粉性で、側面には灰褐色の周皮をつけている。

 成分にはベルベリン系アルカロイドのパルマチン、ヤテオリジン、コルンバミンや苦味質のコルンビンなどが含まれ、胃酸分泌を促進する作用が知られている。特有の臭いと苦味があり、苦味健胃薬として粉末で服用する。日本でも家庭薬として市販されている胃腸薬にしばしば配合されている。

胡芦巴

2012年12月22日 | 健康
胡芦巴(ころは)

 南西アジア原産のマメ科の一年草コロハ(Trigonella foenum-graecum)の種子を用いる。胡芦巴(huluba)はアラビア語の本品名(hullba)に由来する。香料としてはフェヌグリーク(Fenugreek)と呼ばれ地中海地域やインドなどで栽培されている。

 草丈50cmぐらいで、全株に特有の香気があり、夏に6~9cmの細長い鎌状に曲がった豆果をつける。その中に大きさ2~3mmの矩形をした褐色の種子が10~20個含まれている。

 フェヌグリークはエチオピアやエジプト、中近東ではポピュラーな香料であり、インドでは種子や葉をカレー粉やチャツネの原料として用いる。焦げた砂糖とメープルのようなほろ苦味があり、合成メープルシロップの主成分でもある。薬としては古代エジプトの時代から用いられ、口腔疾患や口唇のひび割れ、胃病などに利用され、その配合された軟膏は臭いため「ギリシャの糞」と呼ばれていた。

 インドや中近東では催乳作用があると伝えられ、授乳期の女性が食べる風習がある。種子にはマンノガラクタンなどの粘質が含まれるほか、トリゴネリンやコリンなども含まれる。また、種皮にはステロイド型サポニンのフェヌグリークサポニンが含まれ、これが体内で女性ホルモンであるプロゲステロンに変換されるということが指摘されている。また、フェヌグリークの胚乳には血糖降下作用があることも報告されている。

 漢方では腎陽を温め、寒湿を去る効能があり、インポテンツや遣精、冷えによって生じる下腹部痛や下肢痛、月経痛などに用いる。腎虚によって生じる痰の絡む卒中や喘息、気の上衝、腹痛などの症状に附子・補骨脂などと配合する(黒錫丹)。市販薬では滋養強壮薬に配合されている(ナンパオ)。近年、母乳の出をよくしたり、豊胸や更年期障害の予防などへの効果も期待されている。

五霊脂

2012年12月20日 | 健康
○五霊脂(ごれいし)

 中国の各地に生息するムササビ科のムササビの一種、中国名で橙足鼯鼠(Trogopterus xanthipes)および飛鼠(Pteromys volans)などの乾燥した糞便を用いる。

 かつて五霊脂はオオコウモリの糞と考えられていたこともある。鼯鼠は体長50cmくらい、飛鼠は体長15cmくらいのムササビで、前後の足の間には飛膜があり、樹木の間を滑空する。夜行性で木の実や若い枝葉などを食べる。飛鼠は木の穴に巣を作るが、鼯鼠は崖の上の洞穴や岩の割れ目に巣を作り、洞穴の周囲には灰黒色の糞便がみられる。現在、おもに中国の河北・山西・陝西省で産出する。

 五霊脂は形状によって霊脂と霊脂米に区別され、霊脂塊は粒状の糞が凝縮した不規則な塊状のもので、霊脂米は細長い卵円形のものである。表面の色は褐色で軽くて砕けやすく、断面は黄褐色で繊維状である。味は塩辛く苦味があり、臭いはほとんどない。

 成分にビタミンA類の物質が含まれている。漢方では活血化瘀・止痛の効能があり、生理痛や産後の腹痛など主に瘀血による疼痛に用いる。生で用いると活血作用、炒って用いると止血作用が強まるとされている。炒りながら酢や酒を加え、乾燥したものがよく用いられる。

 産後の腹痛や生理痛、狭心症などに蒲黄と配合する(失笑散)。腹部に腫塊があり、疼痛や出血のみられるときには当帰・赤芍などと配合する(少腹逐瘀湯)。また解毒薬として蛇やムカデ、サソリなどに咬まれたときに外用する。

五味子

2012年12月19日 | 健康
○五味子(ごみし)

 日本では本州の中部以北、北海道、朝鮮半島、中国大陸などに分布するマツブサ科のつる性落葉低木チョウセンゴミシ(Schisandra chinensis)の果実を用いる。

 秋に深紅色をしたブドウ状の果実がなる。チョウセンゴミシという名は渡来植物のようであるが、日本にも自生しており、かつては市販されていたこともある。五味子の名の由来は皮と肉は甘く酸く、核は辛く苦い。全体に鹸味があるためといわれる。

 この五味子を北五味子というのに対し、日本ではマツブサ科のサネカズラ(Kadsura japonica)の果実を南五味子という。中国ではチョウセンゴミシの近縁植物、華中五味子(S.sphenanthera)の果実を南五味子と称して五味子の代用にする。日本に中国、朝鮮から輸入されているものは全て北五味子で、日本産の南五味子も現在では流通していない。

 果実にはクエン酸、リンゴ酸などの有機酸、シザンドリン、ゴミシン、プレゴミシンなどのリグナン類、シトラール、カミグリンなどのセキステルペン類などが含まれる。シザンドリンやゴミシンAには鎮痛、鎮痙、鎮静、鎮咳、抗潰瘍作用があり、近年、ゴミシンAの肝機能改善作用が注目され、急性肝炎の治療薬として研究されている。

 漢方では止咳・止渇・止瀉・止汗・固精の効能があり、固渋薬として慢性の咳嗽や喘息、口渇、下痢、多汗、疲労、遣精などの治療に用いる。なお民間では滋養強壮に焼酎に漬けた五味子酒が用いられている。