健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

ベラドンナ

2014年12月25日 | 健康
○ベラドンナ

 西アジアを原産とし、ヒマラヤの山岳からイラン、ヨーロッパ中南部に分布するナス科の大型多年草ベラドンナ(Atropa belladonna)の葉をベラドンナ葉、根をベラドンナ根という。

 ベラドンナとは「美しき(ベラ)婦人(ドンナ)」という意味で、中世ヨーロッパの婦人が瞳を大きく見せるために点眼薬として用いたことに由来する。学名をアトロパ・ベラドンナというが、アトロパとはギリシャ神話の運命の糸を断ち切る女神、アトロポスにちなむ。

 ヨーロッパでは古くからマンドラゴラと並んで「悪魔の草」と呼ばれる猛毒の植物で、しばしば毒薬に使用された。毒含量は開花期に特に多い。

 成分にはトロパンアルカロイドのヒヨスチアミン、アトロピン、ベラドニン、スコポラミンなどが含まれ、副交感神経遮断作用がある。このため平滑筋や気管支の弛緩、散瞳、分泌抑制などがみられる。ベラドンナの根や葉の粗末をベラドンナエキスといい、アトロピンの製造原料とする。

 古くから鎮痛、鎮痙、止汗、散瞳、催眠薬として用いられている。なおシーボルトは日本のハシリドコロ(Scopolia japonica(生薬名:ロート根))を誤ってベラドンナと鑑定したと伝えられている。

ペヨーテ

2014年12月22日 | 健康
○ペヨーテ

 メキシコ北部からアメリカのテキサス州南部にかけて分布するサボテン科のウバタマ(Lophophora williamsii)の茎頂部を用いる。サボテンとしては小型で、直径5~10cm、高さ3~6cmの偏平な青緑色をした球形で、トゲはなく乳房状のイボがある。

 高原の砂漠地帯に2~3cmほど頭を出し、そのほとんどは地中に埋もれている。もともとメキシコ原住民の間で宗教儀式に用いられたものであるが、18世紀にアメリカインディアンの間にも広がった。

 このサボテンの地上部を輪切りにして天日で乾燥すると円盤状になるが、これをメスカルボタンという。これを口にすると多幸になり、極彩色の幻覚をみることが知られている。この幻覚成分はアルカロイドのメスリカンであり、LSDと同様の幻覚作用がある。また顔面紅潮、嘔吐、痙攣、発汗、瞳孔散大、腱反射消失などもみられる。

 不眠症や神経衰弱の治療に用いられたこともあるが、もっぱら実験精神病の研究に用いられる。日本ではペヨーテは麻薬として指定され、使用が規制されている。

紅更紗

2014年12月19日 | 健康
○紅更紗(べにさらさ)

 本州北部から北海道に分布するマメ科の多年草エゾノレンリソウ(Lathyrus palustris var.pilosus)の全草を用いる。レンリソウ(連理草)とは小葉が対生する様子を表した名で、スイートピーと同属植物である。

 エゾレンリソウは別名ベニサラサ(紅更紗)あるいはヒメレンリソウ(姫連理草)という。全草にケンフェロールなどフラボノイドの配糖体が含まれる。

 民間では利尿薬として腎臓病に用いられたり、婦人の血の道症にに用いられる。また糖尿病に対して血糖を下げる効果があると報じられている。

別甲

2014年12月18日 | 健康
○別甲(べっこう)

 スッポン科のスッポン(Amyda japonica)およびシナスッポン(A.sinensis)の背および腹の甲羅を用いる。一般に背の甲羅が使用される。背甲を煮詰めたニカワを別甲膠という。

 スッポンは淡水に生息し、背甲は淡い灰緑色の楕円形で亀甲がなくて中央が突起し、口は長く吻状に突き出ている。ちなみにベッコウ細工に用いるのはウミガメ科のタイマイ(玳瑁)の甲羅であるため、スッポンのことを土別甲ともいう。

 また中国ではスッポンを甲魚とか水魚、元魚と呼んで料理に用い、裙辺(エンペラ)といわれる甲羅の周囲が最もおいしいといわれている。水魚枸杞湯など枸杞子や黄耆、当帰、山薬などとスープにしたものは薬膳としても知られている。日本でもスッポン料理は強精食として知られ、肉はすっぽん鍋、卵巣は吸い物のたね、スープは瓶詰、缶詰などに用いられている。また滋養強壮のため生血や生肝などを飲む風習もある。

 漢方では補陰・軟堅・止痙の効能があり、結核など陰虚の発熱、マラリアなどによる肝脾腫や腹部腫瘤、小児のひきつけなどに用いる。別甲は亀板と同様に補陰・止痙の効能があり、虚熱による盗汗、熱病による痙攣ややひきつけにしばしば併用する。ただし、別甲のほうが虚熱を清する作用が強いとされている。

 一方、亀板には補血・止血や補腎・強筋骨の効能がある。別甲膠は別甲とほぼ同様の効能であるが、滋養作用は別甲膠のほうが別甲より強いといわれる。

屁糞蔓

2014年12月17日 | 健康
○屁糞蔓(へくそかずら)

 日本各地、朝鮮半島、中国、台湾、フィリピンなどに分布するアカネ科のつる性多年草ヘクソカズラ(Paederia scandens)の果実や全草、根を用いる。茎や葉には独特の悪臭があり、そのため屁糞蔓とか鶏屎藤といった気の毒な名前がある。しかし、白くて中が紅紫色の小さな可憐な花が咲くためにサオトメバナ(早乙女花)とかヤイトバナ(灸花)という別名もある。

 全草にはイリドイド化合物のペデロシド、スカンドシド、アスペルロシドなどが含まれる。日本、中国の民間療法として知られているが、中国では全草および根、日本では果実を用いる。

 中国では煎じて下痢、腹痛、関節痛、腫れ物、打撲傷などに用いる。日本では生の果実をつぶしてその汁をしもやけ、ひび、あかぎれなどに外用する。また毒虫に刺されたときに葉の汁をすりこむと痛みやかゆみが止まる。インドネシアでは駆風薬としても知られている。

文蛤

2014年12月10日 | 健康
○文蛤(ぶんごう)

 二枚貝のマルスダレガイ科ハマグリ(Meretrix meretrix)などの貝殻を用いる。ハマグリは日本、朝鮮半島、中国南部の近海に多く産し、肉は食用にされる。また近縁のオキシジミ(Cyclina sinensis)の貝殻とともに海蛤殻としても用いられている。

 蛤は殻長8cm、高さ6cmぐらいで、殻の色は灰色の地に褐色、紫色などの斑紋がある。主成分は炭酸カルシウム(CaCO3)で、キチンなども含む。

 漢方では清熱・止渇・軟堅の効能があり、口渇、煩熱、咳嗽、瘰癧(頸部リンパ腺腫)、痔などに用いる。傷寒論、金匱要略には口渇の激しいときに文蛤一味を散にした文蛤散、嘔吐の後の口渇に麻黄・杏仁などを配合した文蛤湯が記されている。

プルーン

2014年12月09日 | 健康
○プルーン

 コーカサスからイランの北部を原産とするバラ科の落葉果樹セイヨウスモモ(Prunus domestica)の乾燥果実をいう。

 スモモにはおもに中国や日本を原産とする日本スモモ(P.salicina)と欧米で栽培されている西洋スモモとがある。西洋スモモは古代からヨーロッパで食用にされ、日本にも明治の初期に渡来したが、風土に適せず栽培は稀である。

 スモモのことを英語でプラム(Plum)というが、プラムの干したものをプルーン(Prune)、さらに乾燥に適したプラムのこともプルーンという。このプルーンは19世紀にアメリカに伝わり、現在ではカリフォルニアで盛んに栽培されている。

 果実は長球形で果皮は黄色~紫紅色、果肉は硬くて黄色~緑色をしている。スモモの酸味はリンゴ酸やクエン酸によるもので、ペクチンを多く含むためジャムやゼリーの原料にもされている。

 プルーンは特に鉄分を多く含み、貧血の改善や疲労回復、食欲増進などの効果が期待できる。また食物繊維も多く、緩下整腸作用もみられる。そのほか糖尿病や肌につやがない人にも適している。

ふひょう

2014年12月04日 | 健康
浮萍(ふひょう)

 日本の各地をはじめ世界中の温帯、熱帯に広く分布し、沼や池、水田などの水面に浮かず水草、ウキクサ科のウキクサ(Spirodela polyrrhiza)やコウキクサ(Lemma minor)の全草を用いる。

 成分には酢酸カリウムや塩化カリウム、ヨウ素、臭素などが含まれ、強心作用や解熱作用が知られている。漢方では解表・透疹・利水消腫・止痒の効能がある。

 「発汗は麻黄に勝り、行水は通草より捿い」とさえも言われている。たたし麻黄の性が辛温で風寒表証に用いるのに対し、浮萍の性は辛寒であるため風熱表証に適している。また麻疹や風疹、蕁麻疹などに用いる。

 皮膚の掻痒症には当帰・荊芥などと配合する(浮萍湯)。また浮萍の利尿作用は肺気を通利して水分を膀胱へ送ると説明され、急性腎炎や発熱時の浮腫には蘇葉・桑白皮などと配合する(疏風利水湯)。