健康食品辞典

サプリメント・健康食品・食材・食品・飲料などに利用されている素材・成分を中心に掲載しました。

硇砂

2014年01月31日 | 健康
○硇砂(どうしゃ)

 火山の溶岩の中や温泉に存在する天然のハロゲン化合物類の鉱物、塩化アンモン石の結晶を用いる。アンモニウムはエジプトのアンモンの神殿の付近で採れた岩塩ということに由来する。古くは腐敗尿から採取したが、現在ではアンモニア水を塩酸で中和したり、アンモニアソーダ法により炭酸ナトリウムを製造する際の副産物として得られる。

 硇砂は透明ないし半透明の繊維状、粒状の白色結晶であるが、純水の塩化アンモニウム(NH4Cl)は無色透明の結晶である。硇砂には塩化アンモニア無のほかに少量のFe、SO4、Ca、Mgなどが含まれている。塩化アンモニウムは塩安ともいわれ、肥料としてよく知られている。また医薬品として利尿剤、去痰剤として用いられたこともある。

 漢方では性味は鹹・苦・辛・温・有毒で、消積・消癥・軟堅散結の効能があり、腹部の腫瘤、嘔気、痰飲などに内服薬として、腫れ物、腫瘤、疣贅などに外用薬として用いる。嘔気や嘔吐、げっぷ、胸の痞えに平胃散に生姜とともに加える(硇砂丸)。

透骨草

2014年01月30日 | 健康
○透骨草(とうこつそう)

 透骨草の基原植物としてさまざまな種類の植物が利用されているが、一般にはトウダイグサ科のダイダイグサ(Speranskia tuberculata)やツリフネソウ科のホウセンカ(Impatiens balsamina)の全草が用いられる。ただしホウセンカには全草を鳳仙、その種子を急性子という生薬名もある。

 そのほか透骨草としてシソ科のメハジキ、マメ科のツルフジなども知られている。また香港ではシソ科のカキドオシ(連銭草)が透骨草として流通している。

 漢方では去風湿・止痛の効能があり、リウマチなどによる筋肉痛や関節痛、筋肉の痙攣、脚気、腫れ物などに用いる。しかし漢方薬というより、むしろ痛み止めの民間薬としてよく知られている。外用薬として用いることも多く、化膿性の皮膚炎などで腫れて痛むところを煎液で洗ったり、外相や蛇咬傷などに生のまま貼付して用いる。また咽に刺さった骨の治療には新鮮な汁を用いる。

冬葵子

2014年01月29日 | 健康
○冬葵子(とうきし)

 ヨーロッパ原産で世界各地に分布しているアオイ科の多年草フユアオイ(Malva verticillata)の種子を用いる。しかし、現在では、冬葵子として市場に流通しているものの中にはアオイ科の一年草イチビ(Abutilon avicennae)の種子も含まれている。ちなみにイチビの中国名は茼麻または莔麻といい、種子の本来の生薬名は茼実という。

 イチビはインド原産であり、日本には古い時代に繊維植物として中国から渡来し、栽培されていた。イチビの種子、茼実の効能はフユアオイの種子とは異なっているため、冬葵子の代用となり得るかどうか定かではない。

 漢方では利水・通淋・通便・通乳の効能があり、排尿障害、膀胱炎、浮腫、乳房の腫脹などに用いる。尿量が減少して浮腫のみられるときには茯苓などと配合する(葵子茯苓散)。尿路結石などには車前子・金銭草などと配合する。産後に母乳の出が悪かったり、乳腺が腫れて痛むときにも用いる。便秘には桃仁・郁李仁などと配合する。

 なお、中薬大辞典にはよると茼実は下痢、翼状片、瘰癧(頸部リンパ腺腫)、腫れ物に用いるとある。近年、韓国ではフユアオイの葉に便通を促進する効能があるといわれ、冬葵茶(トンギュンチャチャ)が便秘やダイエットの健康茶として話題になっている。

当帰

2014年01月28日 | 健康
○当帰(とうき)

 日本では奈良県や北海道で栽培されているセリ科の多年草トウキ(A.acutiloba)の根を用いる。日本の本州中部より北の山地にはミヤマトウキ(var.iwatensis)が自生しており、日本で栽培されているのはこの栽培種のトウキ(日本当帰・東当帰)である。中国産のものはカラトウキ(A.sinensis)といわれ種類が異なっている。

 日本で栽培されている当帰には昔から吉野地方で栽培されてきた大和当帰(別名:大深当帰)と昭和になって北海道で作られた北海当帰の2種類がある。品質は大和当帰、収量は北海当帰が優れているため、現在では北海当帰が多く出回っているが、交配種も多く栽培されている。

 当帰は甘味のある甘当帰系と辛味のある辛当帰系があり、大深当帰は甘当帰系であるが、北海当帰や中国産・韓国産は辛当帰系といわれている。日本では根の全体、すなわち全当帰を用いるが、中国では根の頭部を当帰頭、主根部を当帰身、支根部を当帰尾あるいは当帰鬚として区別することもある。日本薬局方では中国産のカラトウキは除外しているが、近年、日本のトウキを中国や韓国で栽培加工した生薬も日本で流通している。

 根には精油成分としてリグスチライド、サフロール、ブチリデンフタライド、そのほかクマリン誘導体のベルガプテン、ファルカリノール、脂肪酸などが含まれている。薬理作用として鎮痛・消炎作用や中枢系や循環器に対する効果が報告されている。漢方で重視されている作用は明らかではない。

 漢方では補血・活血・調経・潤腸の効能があり、月経不順、虚弱体質(血虚)、腹痛、腹腔内腫瘤、打撲傷、しびれ、皮膚化膿症、便秘などに用いる。

 トウキは婦人科領域の主薬であり、また「血中の気薬」ともいわれ、中国医学では当帰頭は補血、当帰身は養血、当帰尾は破血、全当帰には活血の効能があるといわれているが、日本では区別することは少ない。また中国では当帰の味を甘・辛としているが、日本産の大深当帰には辛味がほとんどない。

 近年、米国のハーバリストは当帰のことを”Dong Quai”とか、”Chinese angelica”と呼んで、月経不順や月経前症候群、更年期障害などの治療に用いている。一方、西洋では西洋アンゼリカ(A.archangelica)が、婦人病などの治療に用いられている。

唐辛子

2014年01月27日 | 健康
○唐辛子(とうがらし)

 南米原産で世界各地で栽培されているナス科の多年草トウガラシ(Capsicum annuum)やシマトウガラシ(C.frutescens)の成熟果実を用いる。唐芥子というが、日本には桃山時代のころにポルトガルから伝来し、中国にはそれより遅く明朝末期に導入されたといわれている。

 明代に著された「本草綱目」にはその名はなく、蕃椒という中国名は南蛮から伝わったことを表したものである。辛味の強い香辛料としてレッドペパー(Red pepper)と呼ばれ、カレー粉や七味唐辛子などに配合されている。とくに朝鮮料理の代表的な香辛料で、コチュと呼ばれている。

 果実には辛味成分のカプサイシンなどが含まれ、皮膚刺激作用や健胃作用が認められている。またカプサイシンは、交感神経を刺激し、発汗作用や熱産生作用があり、脂肪燃焼を促進させることから、ダイエット素材としても注目されている。

 近年、同様の効能を有するカプシエイトを含むトウガラシの品種改良も行われている。また、カロテノイドとして赤色色素成分のカプサンチンのほか、クリプトキサンチン、β-カロテン、ルテインなどが含まれている。中国医学では辛熱の温裏薬と分類され、健胃薬として食欲不振、消化不良に用いている。

 ただし、トウガラシは漢方薬ではなく、オランダ医学の流れをひいた薬草である。家庭薬は外用薬や温湿布として神経痛、筋肉痛や凍瘡などに対して用いられている。また発毛刺激剤としても古くから利用されている。

 民間療法ではトウガラシを腹でも頭でも痛む部位に貼り付ける。そのほか蚊を忌避させる作用があり、常食していると蚊に刺されないといわれる。ただし、皮膚刺激作用によりただれなどの皮膚炎を起こしやすく、また多量の摂取は胃腸の炎症や痔を悪化させる。

冬瓜子

2014年01月25日 | 健康
○冬瓜子(とうがし)

 熱帯アジア原産とされるウリ科のつる性の一年草トウガン(Benincasa hispida)の成熟種子を用いる。また果実を冬瓜、果皮は冬瓜皮といい薬用にする。

 トウガンは古くに中国から渡来し、10世紀ころには日本でも栽培が行われていた。今日では一般に8~9月に収穫されるが、古くは霜の下りるころに収穫され、また貯蔵性に優れており、冬の食べ物としてよく利用されていた。このため冬瓜の名がある。果肉の味は淡白で、独特の風味があり、スープや煮物、漬物などに利用される。

 種子にはサポニン、脂肪、タンパクのほか、アデニン、トリゴネリンなどが含まれる。漢方では清熱化痰・排膿の効能があり、肺炎による咳嗽や肺化膿症、虫垂炎などの化膿性疾患に用いる。

 肺癰(肺化膿症)などで咳嗽、喀痰、胸痛などの症状のあるときには芦根・薏苡仁などと配合する(葦茎湯)。腸癰(虫垂炎)などで右下腹部に痛みのあるときには大黄・牡丹皮などと配合する(大黄牡丹皮湯・腸癰湯)。また冬瓜や冬瓜皮には利水・消腫の効能があり、浮腫や排尿障害などに茯苓・沢瀉・猪苓などと配合する。

2014年01月24日 | 健康
○銅(どう)

 は古くから中国や日本では(小金)・(白金)と並んで三品といわれ、今でも銅のことをアカガネ(赤金)とも呼んでいる。銅は日本に比較的多く産出する金属で、銅鉄鋼としては黄銅鋼が最も重要である。鉱物学的にいえば天然に単体で産する銅を自然銅というが、生薬の自然銅は黄鉄鉱のひとつである。

 銅(Cu)は動物にとって必須元素であるが、ほとんどの食物に微量ながら含まれているため、一般に銅の欠乏症はみられない。金属銅は無害であるが、水に溶けた銅イオンは有毒である。足尾銅山鉱毒事件は鉱山から流出した銅イオンが稲や小麦の生育に障害を与えた公害問題であった。しかし銅イオンの人に対する毒性は低く、体内の蓄積や重篤な組織障害はみられない。

 一方、銅は造血に関与し、骨折に対して良好な影響がある。ただし、硫酸銅、酢酸銅などは内服すれば迷走神経を刺激して反射性の嘔吐を引き起こす。また銅塩の稀溶液は局所的な収斂作用があり、とくに眼科に応用される。

 銅を含む漢方生薬として硫酸銅の胆礬、炭酸銅や酢酸銅の銅緑、炭酸化合物の扁青、塩化化合物の緑塩などがある。扁青は深銅鉱を砕いたもので、2CuCO3・Cu(OH)2を成分とし、緑塩はCu2(OH)3Clを成分とする緑色の結晶体で、細かく研って点眼薬として角膜混濁や充血、流涙、眼脂などに用いる。

天羅水

2014年01月23日 | 健康
○天羅水(てんらすい)

 ウリ科のヘチマ(Luffa cylindrica)の茎中の汁を用いる。ヘチマの果実は糸瓜といい、果実の繊維を糸瓜絡という。盛夏から夏の終わりごろ、ヘチマの茎の地上50cmのところで切り、雨水が入らないように根のほうの切り口を瓶の中に入れておくと一昼夜でヘチマ水がとれる。普通、一株から2L以上のヘチマ水がとれる。このままでは腐敗しやすいため、煮沸してから濾過し、リスリンやアルコール、さらに安息香酸ソーダを混和する。

 ヘチマ水はかつて美人水ともいわれ、江戸時代には幕府の奥女中のために献上されたことが記されている。民間では化粧水に用いるときはヘチマ水にホウ砂を少し加え、よく振って溶かして用いる。入浴後にヘチマ水を顔や手足につけると、肌の潤いが保たれる。またヒビやしもやけ、湿疹などに外用薬として用いる。

 足によく擦り込んでおくと、足の冷えがよくなるともいわれている。このほか咳が出て痰が切れないときは内服せずに、含嗽料として用いる。「痰一斗、ヘチマの水も間に合わず」は正岡子規の辞世の句として知られている。

天雄

2014年01月22日 | 健康
○天雄(てんゆう)

 キンポウゲ科の多年草トリカブト類の細い根を天雄という。一般にトリカブト類の根は附子という名でよく知られているが、根は茎に続く塊根(母根)の周囲に数個の新しい塊根(子根)が連成している。

 本来、この母根を烏頭といい、子根を附子という。しかし、子根を有しない細長い根のこともあり、この根は子を産まない天性の雄ということから、とくに天雄と呼ばれている。一説によると早春に茎を伸ばし始めたころの新しい母根のことともいわれている。

 漢方では去風湿・温裏・補陽の効能があり、烏頭や附子とほぼ同様である。強い毒性があるため、一般に強火であぶったり、乾姜などで調整加工して用いる。現在、日本では流通していない金匱要略に収載されている天雄散はインポテンツや滑精、腰や膝が冷えて痛むときに用いられている。

天門冬

2014年01月21日 | 健康
○天門冬(てんもんどう)

 日本の関東地方以南、台湾、中国などの暖かい海岸の砂地に自生するユリ科のつる性多年草クサスギカズラ(Asparagus cochinchinensis)の塊根を用いる。スギの葉に似た葉状枝のあることからクサスギカズラといわれ、同属植物にはアスパラガスがある。短い根茎に紡錘形に肥大した塊根が多数付いている。

 根には粘液質やアスパラギン、βシトステロール、サポニンなどが含まれ、抗菌作用やインターフェロン誘起作用が報告されている。漢方では滋陰清熱・化痰の効能があり、咳嗽、吐血、口渇、咽頭の腫痛などに用いる。作用は麦門冬とほぼ同じで、おもに陰虚による咳嗽や微熱、炎症に用い、しばしば二冬と称して両者を併用する。とくに肺陰虚による高齢者などの慢性の咳嗽や粘稠痰の症状に適している。

 慢性気管支炎や気管支拡張症などで痰が粘稠で切れにくく、咳が続くときには黄芩・桔梗などと配合する(清肺湯)。高齢者の肺結核などで慢性的な咳嗽や粘稠痰のあるときには地黄・麦門冬などと配合する(滋陰降火湯)。口腔や歯肉、咽頭に潰瘍や炎症があって腫れて痛むものに枇杷葉・地黄などと配合する(甘露飲)。

 民間では滋養・強壮や咳止めの効果があるとして薬酒に用いている(天門冬酒)。天門冬の蜂蜜漬けも強壮・咳止めに利用されている。近年、中国において天門冬の抗癌作用が研究されており、白血病や乳腺癌などに対する効果が検討されている。