1973年に刊行された吉村昭の記録史。
1923年(大正12年)9月1日に関東を襲った地震の記録。
気づいてみたら昨年が100年目だったんだね。
地震100年説などあり100年に1回大地震が起きると言われていたが、
元旦の石川県の地震は怖かった。
関東大震災は震度6~7だったと言われており、
東京、神奈川を中心に記録では10万人を超える人が亡くなっている。
お昼時の11時58分に起きた事もあり火災が広がり、
人々が家財道具を持って逃げた事も災いし、
燃え移った火により死者が増えた。
地震、火を消せ!! である。
私の祖父母は当時東京にいたそうだが、
玄関や窓が開かなくなり逃げるのに苦労したと言う事から、
戸を開けて逃げ道を確保するようにと言っていた。
地震で被災した人々が空き地や公園などに逃げ、
ほっとしたのもつかの間、火災によって逃げ場を失い、
死んでいく様も想像以上の描かれ方だった。
民度が高いと言われている日本人でも火事場泥棒のような略奪者がいたり、
物資の不足に状して暴利を貪る輩もいたり、
(原作のまま書くが)朝鮮人が襲ってくると言うデマが流れ、
罪もない朝鮮人を虐殺したり、朝鮮人ではない日本人を殺してしまったり、
社会主義者を殺害したり・・・。
地震で混乱する中で起きた事件をも克明に記録している。
また地震学の第一人者でノーベル賞候補であった東京大学の大森房吉教授と
今村明恒助教授の意見の対立にも焦点をあてている。
このように単に記録史と言う一方向だけではなく、
いろいろな面から関東大震災を見て、手抜かりのない物となっている。
一番残念だったのは、日本がロシアからの援助を断った事だった。
被災した日本に各国が支援の手を差し伸べた。ところが・・・
社会主義者に対して否定的だった日本は断ったのだった。
受け入れれば国民の反感を買い混乱を招くからという理由である。
100年前だから、そういう時代だったのだろうけど、
親切心を素直に受け入れられなかった事は悲しい。
吉村昭がボクシングを題材にした小説を書いている事を知ったおかげで、
このような記録史を読む事にもなったのだが、
最初に読んだ「破獄」次の「漂流」に比べて悲惨なので、
読むスピードが上がらなかった・・・。
でもまた知らない事が知れたので良かったと思う。