すんけい ぶろぐ

雑感や書評など

矢口史靖「スウィングガールズ」

2005-04-09 11:03:26 | 映画評
永遠の青春


個人的に、いつ読んでも青春を思い出させるものと言いますと「究極超人あ~る」です。
汗ダラダラの熱血スポコン漫画よりも、あの気だるい日常をネタで埋めている光画部員たちに共感できる方は、僕以外にも多いのではないでしょうか?

考えてみますと、「究極超人あ~る」の登場人物って成長しないんだよな。
「漫画だから当たり前だろ!」
という意見もありそうだけど、一応、あの作品の中では時間は経過しています。登場人物たちは進級するし、卒業して、進学や就職をする。でも学校を出ても、いつまで経っても光画部に関わり続ける。主要人物だけではなく、多くの人間(校長までも)が、ちょっとした行事があるとOBとして集まってくる。

登場人物自身が時間の経過を無視して過去にかかわり続け、青春を守り続けている。そもそも主人公(?)のあ~るからして、アンドロイドで時の磨耗から超越している存在となっている。

しかし現実世界では、高校時代の楽しい仲間を全部引きずって生きていけるわけもなく、多くの友人はどこかに消え去り、さらに自分自身もかつての友から忘れ去られてしまう。光画部のOBのように母校に足を運ぶこともなくなり、そして、必ず年を取る。
「究極超人あ~る」の世界ってのも、あの気だるさな雰囲気は共感できるものであっても、熱血スポコン漫画においてインフレ成長で全国優勝してしまうのと同じで、ほとんどあり得ないもんなんですな。


さて、「スウィングガールズ」を見ました。

言うまでもないことですが、監督の矢口史靖の前作は、大ヒットした「ウォーターボーイズ」です。
今作でも、竹中直人が前作と同じく問題のある指導員として登場しております。相変わらずの存在感です。

しかし、「前作と同じく」ということを指摘しますと、ストーリー自体が前作と同じです。


どちらかと言うと不純な動機で、クラブ活動を始める。
 ↓
最初は興味がなかったのに、次第に楽しくなってくる。
 ↓
途中で挫折してしまい、仲間が離反していく。
 ↓
風変わりな指導者と出会い、徐々にクラブ活動が軌道に乗る。
 ↓
離れていった仲間が、戻ってくる。
 ↓
大きな舞台が用意されるが、アクシデントで参加が危ぶまれる。
 ↓
最後には、多くの観衆の前で大成功。

大きく違うところは、性別でしょうか?
前作が「ボーイ」だらけの陽だとすると、今作は「ガール」だらけの陰といったところ。

しかし、この性別が違うというだけで、個人的には充分楽しめました。
前回の主人公である妻夫木聡が心配性気味の陰気な性格と比べると、今回の上野樹里は脳天気で陽気な性格となっています。で、整ったお顔を美少女然とさせないで、敢えてコミカルに崩し、田舎娘をちょっと極端に演じている姿だけでも、けっこう見物でした。


が、やはり題材を変えてはいるものの、ストーリーの大筋に変化を持たせていないので、新鮮味は希薄。
もっともアカルイ青春ものですから、「努力、挫折、成功」という永遠のキーワードを盛り込まざる得ない。それならいっそ、無理をしないで前作の構造を利用したという感じ。

ですので、安心して見れる作品でした。


スウィングガールズ スタンダード・エディション

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