女性をアレをしていて楽しいのかね?
村上春樹の小説には、フェラチオのシーンが幾度が登場していると思われますが、クンニのシーンは皆無ではないでしょうか?(勘違い?)
得てして男性の描く女性には、男(≒自分)の身勝手な性欲を無制限に受け入れてくれる理想の娼婦的な役割を負わされています。
一方、女性の描く男性像というものからは、性欲というものが剥離しがちです。でありながら、女性(≒自分)を無制限に受け入れてくれるという理想の父親的な役割を押し付けているものです。
「余白の愛」ですが、こちらの男性からも「性欲」の臭いが感じられません。
この物語の女性主人公は突発性難聴という病気にかかっており、普通の人には聞こえない耳鳴りから逃れることができません。この病気は、彼女自身は認めたがりませんが、夫と別居したことを契機にしております。
夫と別居した理由は、彼の浮気です。彼女は、恋人時代から続いている散髪を旦那にしてもらっている最中、唐突に彼の裏切りに気がつきます。その手がかりは、指です。
そして旦那と別れ、病気がまだ完治しないころに、主人公はYに出会います。
Yは速記者です。彼女は自分の言葉を、その華麗な指さばきで記録していく彼に魅了されていきます。
自分にしか聞こえない音を受け取ってしまう耳を持っている彼女にとって、正確に言葉を受け入れることのできる指を持った彼に興味を覚えます。そして、スケッチブックに無機質な文字を描いて自分の意見を伝えることしかできなくなった旦那とは違い、彼の指は彼女の言葉をしっかりと受け取る為に存在していることが、徐々に明確になっていきます。
個人的には、病気とは言え、主人公の女性をあたたかく包みこむYの完璧さが、鼻についてしまいます。親族でもない上に、Yには主人公を狙っているような素振りもない。妙に豊かなボランティア精神で主人公を手助けする姿には、どうにも女性の身勝手な願望が投影されているように思えてしまいます。
しかし、最後に彼の正体が明かされることで、その作者の「身勝手な願望が投影されている」と思われていたYの無心の行為にも、理由があったことが分かります。以下、ちょっとしたネタバレ。
で、「余白の愛」というタイトルなんですが、読んだ方は、どういう解釈をなさったでしょう?
単純に考えれば、「余白」とは、Yが速記に使用していた用紙の余白ということになります。
では、なにに対して余白であるかと言いますと、それは彼女の記憶を書き留めた言葉では埋められなかった箇所です。
「文字」が「過去」ですと、「余白」は「未来」ということになります。つまり「余白の愛」というのは、「未来への愛」、つまりは「希望」ということなんですかね?
てな感じ。
優しい物語なので、好きな人は、好きなんでしょうけど。
殿方の中には、強烈な拒否反応を起こしてしまう人もいるのでは?
村上春樹の小説には、フェラチオのシーンが幾度が登場していると思われますが、クンニのシーンは皆無ではないでしょうか?(勘違い?)
得てして男性の描く女性には、男(≒自分)の身勝手な性欲を無制限に受け入れてくれる理想の娼婦的な役割を負わされています。
一方、女性の描く男性像というものからは、性欲というものが剥離しがちです。でありながら、女性(≒自分)を無制限に受け入れてくれるという理想の父親的な役割を押し付けているものです。
「余白の愛」ですが、こちらの男性からも「性欲」の臭いが感じられません。
この物語の女性主人公は突発性難聴という病気にかかっており、普通の人には聞こえない耳鳴りから逃れることができません。この病気は、彼女自身は認めたがりませんが、夫と別居したことを契機にしております。
夫と別居した理由は、彼の浮気です。彼女は、恋人時代から続いている散髪を旦那にしてもらっている最中、唐突に彼の裏切りに気がつきます。その手がかりは、指です。
今から思うと、それは夫の指のせいだったかもしれない。(中略)指の形や雰囲気や表情に、取り返しのつかない冷たい影が宿っていた気がする。 小川洋子「余白の愛」69頁 中公文庫 |
そして旦那と別れ、病気がまだ完治しないころに、主人公はYに出会います。
Yは速記者です。彼女は自分の言葉を、その華麗な指さばきで記録していく彼に魅了されていきます。
自分にしか聞こえない音を受け取ってしまう耳を持っている彼女にとって、正確に言葉を受け入れることのできる指を持った彼に興味を覚えます。そして、スケッチブックに無機質な文字を描いて自分の意見を伝えることしかできなくなった旦那とは違い、彼の指は彼女の言葉をしっかりと受け取る為に存在していることが、徐々に明確になっていきます。
個人的には、病気とは言え、主人公の女性をあたたかく包みこむYの完璧さが、鼻についてしまいます。親族でもない上に、Yには主人公を狙っているような素振りもない。妙に豊かなボランティア精神で主人公を手助けする姿には、どうにも女性の身勝手な願望が投影されているように思えてしまいます。
しかし、最後に彼の正体が明かされることで、その作者の「身勝手な願望が投影されている」と思われていたYの無心の行為にも、理由があったことが分かります。以下、ちょっとしたネタバレ。
「君は今、君の記憶の中にいるんだ」 目を伏せたまま、彼は言った。 「キオク……」 わたしはつぶやいた。その言葉だけが、鼓膜の網の目を通り抜けられないまま、いつまでも耳の途中で淀んでいるような気がした。小さく振ってみたが、その淀みは消えなかった。 「このベッドも、名刺も、あのダイニングテーブルもベランダも、それからあなたの指も、全部記憶なの?」 「そうだよ。君は自分の記憶の中に紛れ込んでしまったのさ。本当なら記憶はいつでも、君の後ろ側に積み重なっていくものなんだ。ところがちょっとしたすきに、耳を抜け道にして、記憶が君を追い越してしまった。もしかしたら、反対に、君があとずさりしたのかもしれない。どっちなのか、それは僕にも分からないけど、でも、心配はいらない。いずれにしても、君自身と記憶の関係が、少しばかりねじれているだけだからね」 安心させるように彼は、腰をかがめ、口元に微笑みを浮かべながらわたしをのぞき込んだ。 「それじゃあわたしは、これからどうしたらいいの?」 「なにもしなくてもいいんだよ。何かしなくちゃならないのは、僕の指だけさ。君は僕の指に語りかけてくれるだけでいい。今まで通りにね」 「でも、わたし、怖いの」 「どうして」 「紙の束が、もうなくなってしまいそうだからよ。なくなってしまったあとどうなるのか、それを知るのが怖いの」 「怖いことなんてないさ」 彼はゆったりとした抑揚をつけてそう言った。 「元の場所へ帰るだけさ。ただそれだけのことだよ」 「元の場所?」 「そう。ここへ来る前にいた場所。記憶と君の位置が、きちんと守られている場所」 小川洋子「余白の愛」229~230頁 中公文庫 |
で、「余白の愛」というタイトルなんですが、読んだ方は、どういう解釈をなさったでしょう?
単純に考えれば、「余白」とは、Yが速記に使用していた用紙の余白ということになります。
では、なにに対して余白であるかと言いますと、それは彼女の記憶を書き留めた言葉では埋められなかった箇所です。
「文字」が「過去」ですと、「余白」は「未来」ということになります。つまり「余白の愛」というのは、「未来への愛」、つまりは「希望」ということなんですかね?
てな感じ。
優しい物語なので、好きな人は、好きなんでしょうけど。
殿方の中には、強烈な拒否反応を起こしてしまう人もいるのでは?
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