させていただく
昨日の朝日新聞『多事争論』に,同紙記者河合真美江さんの『「させていただきます」丁寧すぎ?敬意と守りと』という題のエッセイが載っていた。
「させていただく」は日常的によく使われる修飾語である。文化審議会の答申「敬語の指針」(2007年)には,「基本的には相手の許可を受けておこない,そのことで恩恵を受けるといった時に使われる。そうでない時はあまり適切とは言えない」と述べられているという。
「『させていただく』大研究」の著者で,法政大学教授の推名美智さんは。,「相手との程よい距離をとる,丁寧な自分を表す便利な言葉」と言っているという。また,言語学者の飯間浩明さんは,「させていただく」は敬語体形の不備を補っていると指摘しているという。つまり,「見る」には「拝見する」,「行く」には「おうかがいする」があるが,「着る」や「書く」のような多くの動詞にはそれに相当する言い方はなく,「させていただく」をつければ謙遜語にすることができる。
河合さんは,更に飯間さんの言葉を引用する。「させていただく」には,相手は何かをしてくれなくても,「おかげさまで」の思い,尊敬の気持ちがこもっている。
一つ一つ,なるほどと感服「させていただいた」。
ところで,外国語にはこのような言い回しがあるだろうかと,ChatGPTに「そのようにさせていただきます」を,英語とスペイン語に訳してもらった。訳文は次の通り。
英語での表現:「I will do it that way」または「I will make it happen that way」
スペイン語での表現:「Lo haré de esa manera」または「Lo llevaré a cabo de esa manera」
いずれも,「そうします」という自分の意思が表に出て,謙譲や尊敬のニュアンスは感じられない。やはり,敬語は日本文化独特のものだろう。
しかし,敬語も使いすぎるといやらしくなる。政治家が使う敬語に白々しさを感じるのは,わたしだけではないだろう。
夏 の 雲
自宅ベランダから撮影
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