核兵器脅威のシミュレーション
昨晩NHKから放映された『クローズアップ現代:もしも今核兵器が使われたら 初のシミュレーションが示す脅威』をビデオに収録して観た。
長崎大学核兵器廃絶研究センター(こういう研究機関があるのは知らなかった)が中心になって,30人を超える様々な分野の専門家による,北東アジアにおいて起こり得る核戦争の脅威についてシミュレーションを行った結果である。
設定した5つのシナリオの内の2つについて,シミュレーションの結果が示された。
ケース1:北朝鮮は国内における危機への国民の不満をそらすために,米韓を交渉につけるためと称して,韓国の基地に10キロトンの戦術核爆弾による攻撃を行い,それに対しアメリカは潜水艦から8キロトンの戦術核爆弾を2発発射し,北朝鮮の2カ所の軍事基地で爆発させる。外交交渉で,戦争はここで休止すると仮定する。
大量の放射性物質が放出され,日本にも偏西風に乗って到達する。最終的な死者は,がんの発生によるものも含めて,4万人以上になる可能性がある。
ケース2:台湾に独立を目指す政権が誕生したのに対し,中国は内部の突き上げで台湾に軍事攻撃を仕掛ける。これに対しアメリカが大規模な軍隊を送り,通常戦では勝ち目のない中国が佐世保,嘉手納,グアムの軍事基地に核兵器による攻撃を行い,アメリカは中国本土のミサイル基地に核兵器で反撃する。合計24発の核爆弾が使われ,核攻撃を受けた地域だけで死者は260万人,がんなどによる長期的な死者は9万6千人から83万人に上ると推定される。
番組では,核爆発による火災嵐の発生による死者の増加が過小評価されていることへの警告がなされ,高度数万キロメートルの上空での核爆発による電磁パルス攻撃が紹介されていた。電磁パルスの発生によって,大規模なIT機器の機能が停止し,サーバーが破壊される。
このシミュレーションの結果を見て,わたし自身はどうも釈然としない。核兵器使用の結果の悲惨な事態については,すでに広島と長崎において十分に示されている。死者が4万人だからいい,260万人なら駄目という問題ではない。
この結果をもって,核兵器の恐ろしさを示す材料とすることはもちろん有効であるし,そのようにして核兵器廃絶の運動をしている若者もいる。
しかし,わたしにとって釈然としないのは,起こり得るシナリオを提起しながら,どうしたらそのようなことが避けられるのかが,示されていないことである。番組の中で示唆されたシステムの誤作動による核兵器の暴走の問題も含めて,研究グループは,核兵器の不使用・廃棄に向けてどうしたらそれが可能になるかを追求するという。是非それを達成して示してほしい。
STOP WAR!