AERA今週号に,『「ポスト五輪」を再構築する』と題する,池上彰・佐藤優両氏の対談が掲載されている。ここで最初に取り上げられているのが,開会式前日の小林賢太郎ショーディレクター解任の問題である。
小林氏がナチスドイツによるホロコーストをお笑いの題材として揶揄したことが発覚し,ドイツ人であるバッハ会長,在米ユダヤ人に支持基盤を持つバイデン大統領夫人,イスラエル選手団などの開会式欠場につながりかねなかったのだが,官邸が素早く解任を決断し,外務省も協力して事態を収拾したことが,対談者によって指摘されている。
そして,ホロコーストは歴史的というよりは現在的な問題であり,戦時中に外務省の方針を無視してビザを発行し,6000人とも1万人ともいわれるユダヤ難民の命を救った,時のリトアニア領事,杉原千畝氏を先輩に持つ日本人として,この問題を自覚的に認識することが必要だと述べている。
TOKYO2020を総括するうえで,大事な視点である。
なお,わたしは最近,オランダ在住のユダヤ人医師で,ナチスドイツによってアウシュビッツに収容されていたエディ・デ・ウィンドの体験記,『アウシュビッツで君を想う』(塩崎香織訳,早川書房) を読んだ。V・E・フランクルの『夜と霧』に劣らぬ名著である。
リトアニア,カウナスにある杉原千畝記念館(元領事館)
同上執務室
杉原領事が発行したビザのコピー(写真はいずれも,2012年リトアニアにて撮影)