昆虫の脱皮の過程は,実に荘厳である。
昆虫の体表は固い外皮に覆われ,これが外骨格として体を支えている。したがって,昆虫は成長したり変態したりするときは,古い外皮を脱ぎ捨てなければならない。これが脱皮である。
脱皮の間は身動きできないので,外敵に襲われても逃げることができない。昆虫は成長や変態のために,自らを危険にさらすのである。
昆虫は気管呼吸を行い,ガス交換は組織内に分布している気管小枝を通し行う。気管は外皮が落ち込んだものであるので,脱皮に際しては脱ぎ捨てる必要がある。直径1ミクロン程度の気管小枝の更新は,驚くほど繊細な作業である。
なぜこんな過程を経て,成長や変態をするように,昆虫は進化してきたのか。定説はないらしい。
ちなみに,昆虫の体長が10倍になると,体重は1000倍になるが,気管の表面積は100倍にしかならない。これではガス交換が十分にできないので,気管表面積も1000倍になる必要がある。体内のすき間が増えて,体はガサガサになってくる。昆虫の大きさに限界があるのは,このためであるといわれている。
1961年に,双子の歌手”ザ・ピーナッツ”とともに銀幕に登場した蛾の怪獣モスラは,体長135メートル。残念ながら,生物としては生存不能である。
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