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オベの語りを聞き流す快感

2020年07月23日 | 読書
 私の住んでいる地域で、様々な物事を知っていて積極的に口を出す者を「オベ」と言ったりする。これは「覚えている」の訛り「オベデル」から来ているだろう。その呼称を周囲はどんな印象で使っているかは、普段のその人の接し方にもよるだろう。雑学、薀蓄、またトリビアと称されること、「オベ」にも得意がある。

 『トンデモ一行知識の世界』(唐沢俊一 ちくま文庫)


 まえがき冒頭の「ジャイアント馬場の足は本当は十五文しかなかった」を皮切りに、まあどうでもいい知識が満載されている一冊。個別の面白さは確かにあったが、頭に浮かんだのは、本当に「何の役にも立たない知識」というものはあるだろうか、という疑問である。それらを集めればこうして本になるではないか。


 無用な知識という表現も、その知識を取り上げた時点で何かの「」にはなっているわけで、どこかパラドックスめいている。いわゆる知識人とは異なるが「博識の趣味人」たちには「粋人」という呼び名もあったと記されている。著者の解釈は「世の中の精粋は雑なものの内に存する」という、これもまた逆説だ。


 この本は著者自身が得た知識はもちろんだが、開いている「一行知識ホームページ」サイトにあった投稿も多く採用されている。同好者は結構多いらしい。解説の植木氏は、「役に立たないからこそ知識はオモシロイ」という姿勢と、それを貫く困難さを評価している。価値がないことを続ける価値はいずこにありや。


 「役に立つ知識」は「目的のための知識」となりそれ自体の楽しさに欠けるというのは、ある意味浅い知識観かもしれない。しかし、時々こうしたドウデモイイ知識に触れて面白みを感ずると、脳自体が喜んでくれる性質を持っているのではないかと想像できる。リラックス効果としてかなり役立つとおススメできる。

 この本で知った一行知識(真偽は怪しいが)勝手にベスト3

 1 人間国宝の定員は七十人。
 2 人間は、平均14個のアザをからだのどこかに持っている。
 3 パソコンについているマウスの移動距離の単位を「ミッキー」という。


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